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センダン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
栴檀から転送)
センダン
センダンの花(2002年6月2日撮影)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類II Eurosids II
: ムクロジ目 Sapindales
: センダン科 Meliaceae
: センダン属 Melia
: センダン M. azedarach
学名
狭義: Melia azedarach L. var. subtripinnata Miq. (1867)[1]

標準: Melia azedarach L. (1753)[2]

シノニム
和名
センダン(栴檀)、オウチ(楝)、アミノキ
英名
chinaberry
変種品種
  • センダン(狭義)M. a. L. var. subtripinnata Miq.[5]
  • トウセンダン M. a. var. toosendan
  • シロバナセンダン M. a. f. albiflora

センダン(栴檀[6]学名: Melia azedarach)は、センダン科センダン属分類される落葉高木の1。暖地の海岸近くに生える。別名としてアフチ[6]オオチ[7]オウチ[8]アミノキなどがある。薬用植物の一つとしても知られ、果実はしもやけ、樹皮は虫下し、葉は虫除けにするなど、薬用に重宝された[6]リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つでもある[9]

また、香木の栴檀はインドネシア原産のビャクダンビャクダン科)のことを指し[10]、センダンのほうは特別な香りを持たない[11][12]

分布・生育地

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順応性の高い種であり、原産地のヒマラヤ山麓[注 1]のほか、中国台湾朝鮮半島南部および日本などの乾燥した熱帯から温帯[注 2]に分布する[14][13][15]。日本では、本州伊豆半島以西)、伊豆諸島四国九州沖縄に分布する[6][14]

温暖な地域の、海岸近く[7]森林辺縁に多く自生する。庭木や公園、寺院、街路樹にも植えられていて[10][7][12]、しばしば植えられたものが野生化もしている[8]

特徴

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落葉高木[6]、樹高は5 - 20メートル (m) ほどで[7]、成長が早い。は太い方で、四方に広がって伸び[7]、傘状あるいは、エノキに雰囲気が似た丸い樹形の大木になる[16][8]。成木の幹は目通り径で約25センチメートル (cm) ほどになる[12]。若い樹皮は暗緑色で楕円形の白っぽい皮目が多くよく目立つが、太いは黒褐色で樹皮は縦に裂け、顕著な凹凸ができる[7][8]の日の午後は梢にクマゼミが多数止まり、樹液を吸う様子が見られる。

は、2回奇数羽状複葉互生[6][12]、一枚の葉全体の長さは50 cm以上ある。小葉は3 - 6 cmの長さがあり[7]葉身は先が尖った卵状楕円形で革質で薄い[17]葉縁に浅い鋸歯があり、さらに大きく切れ込むことがある[18]

花期は初夏(5 - 6月頃)で[6]、本年枝の葉腋から花序を出して、淡紫色の5弁のを多数、円錐状につける[7]。花序の長さは10 - 20 cm[7]。花弁は長さ8 - 9ミリメートル (mm) で、表が白色、裏が薄紫色で、10個ある雄しべは濃紫色をしている[6]。花は美しさが感じられ[17]アゲハチョウ類がよく訪れる。なお、南方熊楠が死の直前に「紫の花が見える」と言ったのはセンダンのことだったと言われている。

果期は秋(10月ごろ)[6]果実は長径17 mmほどの楕円形の核果で、晩秋(10 - 12月頃)に黄褐色に熟す[7][6]が深まり落葉しても、しばらくはに果実がぶら下がって残るため目立つ[7][6][8]。果実は果肉が少なくが1 cm前後と大きく、上から見ると星形をしている[12]。果実はヒヨドリカラスなどの鳥が食べに訪れ、種が運ばれて空き地や道端に野生化することもある[12]。しかしサポニンを多く含むため、が食べると食中毒を起こし、摂取量が多いと死亡する。

冬芽は落葉後の葉腋に互生し、半球状で細かい毛で覆われている[8]。葉痕は倒松形やT字形で、維管束痕は3個あり、白くて大きいのでよく目立つ[8]。冬芽がついた枝先には、星状毛が残ることもある[8]

葉や木材には弱い芳香がある。背が高い上に、新芽・開花・実生・落葉と季節ごとの見かけの変化も大きく、森林内でも目立ちやすい。

利用

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公園樹で落下した果実を採食するツグミ

樹木は、街路樹庭木公園樹に植えられている[19]。枝は横に大きく被さるように出ることから、街路樹としての機能性に優れている[17]。材は建築・器具用材、家具[20]にもなり、下駄の材や[11]、仏像彫刻に使われたこともある[12]。ミンディ材と書かれているのはこのセンダンのこと。ケヤキの模擬材として使われることもある。また核(種子)は数珠の珠にする[10][17]

材を林業として利用する場合は、を植えて15 - 20年で木材に製材できる。このため日本熊本県天草市では、中山間地域にある耕作放棄地の活用策として植林されている[20]

薬効

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果実は 生薬苦楝子(くれんし)もしくは川楝子(せんれんし)と称して、ひびあかぎれしもやけに外用し、整腸薬、鎮痛剤として煎じて内服した[17][6]。樹皮は生薬苦楝皮(くれんぴ)と称して、駆虫剤(虫下し)として煎液内服した[6][21]。樹皮には苦味成分があり、漁に使う魚毒にも使われた[8]。葉は強い除虫効果を持つため、かつては農家において除虫に用いられていた。

沖縄県に自生するセンダンの抽出成分が、インフルエンザウイルスを不活化させることが報告された[22]根路銘国昭山本雅は同成分ががん細胞のオートファジー(自食作用)を促進させ、死滅させることを発見した。70種類のがんでセンダンの抗がん作用を確認した[23]。センダンの抗がん作用は、マウス実験、犬への投与で実証され、アメリカのガン研究学術雑誌「American Journal of Cancer Research」が生物資源研究所(名護市)などの論文を掲載した[24]

自治体指定の木

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日本の以下の自治体の指定の木である。括弧表記はかつて存在していた自治体。

  • 上野村) - 沖縄県、現在は合併して宮古島市

文化

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センダンの花言葉には、「意見の相違」がある[6]。「栴檀は双葉より芳(かんば)し」ということわざが存在するが[注 3]、これはセンダンではなくビャクダン(白檀)を指す[25][11][18]

『百年目』

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落語の演目『百年目』にセンダンが登場する。センダンとその下に生えていた南縁草なんえんそうの関係についての故事を紹介するくだりがある。

古典文学

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日本最古の和歌集である『万葉集』に収録されている恋愛歌のなかにもセンダンが登場している[6]平安時代の歌人・清少納言が『枕草子』のなかで、センダンの花を「楝(あふち)の花いとをかし[注 4]」と書いて称えている[6]。楝(アフチ)とは、センダンの古名である[6]日本の伝統色にセンダンの花を由来とする薄い青紫色の楝色があり襲の色目にも用いられている[26]

平安時代後期の『平家物語』では、壇ノ浦の戦いで捕えられて斬られた平宗盛平清宗の父子が京都三条河原で生首をかけられた木として登場。もともと京都左獄と右獄の門外にはオウチ(センダン)の木が植えられ、ここに首を架けられていたという[27]。このころから江戸時代頃まで、獄門になった罪人の首を架ける木として忌み嫌われた[6][11]

一方でインドや中国などでは邪気を払う力があると信じられ、獄門台として使用されたのはその霊力を利用して処刑された人のたたりを免れるためであったという説もあり、必ずしも縁起の悪いイメージだけを持たれていたわけではなく、前述のように美しい花を歌に詠まれる時代もあった[28]

脚注

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注釈

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  1. ^ 標高1,800メートル以下(インドのヒマーチャル・プラデーシュ州 では2,700メートル以下、パキスタンでは700メートルから1,000メートル)に分布[13]
  2. ^ 気候指標は、夏季平均最高気温39度、冬期平均最低気温マイナス5度の範囲と推定される[13]
  3. ^ ビャクダンは香木で強い香りがあり、芽生えたときから香っていることから、大成する者は、幼いときから人並み外れてすぐれていることのたとえ[12]
  4. ^ 「いとをかし」は、『枕草子』によく出てくる感嘆を表した現代語にはない語彙で、美しさや風情を感じるものに対して、「とても美しい」「大変趣がある」などの意味をもつ。

出典

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  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Melia azedarach L. var. subtripinnata Miq. センダン(狭義)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月18日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Melia azedarach L. センダン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月18日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Melia azedarach L. var. japonica (G.Don) Makino センダン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月18日閲覧。
  4. ^ ITIS n.d.
  5. ^ 米倉・梶田 2018.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 田中 2011, p. 65.
  7. ^ a b c d e f g h i j k 学習研究社 2000, p. 37.
  8. ^ a b c d e f g h i 鈴木・高橋・安延 2014, p. 115.
  9. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 384. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358403 
  10. ^ a b c 永岡書店 1997, p. 182.
  11. ^ a b c d 辻井 2006, p. 107.
  12. ^ a b c d e f g h 林将之 2008, p. 129.
  13. ^ a b c CABI 2019, Environmental Requirements.
  14. ^ a b 林弥栄 2011, p. 385.
  15. ^ 日本農業新聞 2013.
  16. ^ 林将之 2011, p. 103.
  17. ^ a b c d e 辻井 2006, p. 109.
  18. ^ a b 林将之 2008, p. 128.
  19. ^ 成美堂出版 2011, p. 166.
  20. ^ a b 日本農業新聞 2019.
  21. ^ 熊本大学薬学部 2004.
  22. ^ 根路銘・向 2011.
  23. ^ 琉球新報2016年11月11日付け
  24. ^ 琉球新報2020年4月19日掲載
  25. ^ 現代言語研究会 1996, p. 212.
  26. ^ 『色名がわかる辞典』「楝色」、講談社、2011年。コトバンク版 2024年3月4日閲覧。
  27. ^ 足立 1995, p. 291.
  28. ^ レファレンス協同データベース 管理番号・神戸図–1509

参考文献

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書籍
  • 足田輝一編『植物ことわざ事典』東京堂出版、1995年7月。ISBN 4-490-10394-8 
  • 現代言語研究会編『すぐに役立つ故事ことわざ辞典』(改訂版)あすとろ出版、1996年1月25日。ISBN 4-7555-0808-8 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日。ISBN 4-522-21557-6 
  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社〈増補改訂ベストフィールド図鑑〉、2000年4月7日。ISBN 978-4-05-403844-8 
  • 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日。ISBN 4-12-101834-6 
  • 林将之『葉っぱで調べる身近な樹木図鑑』主婦の友社、2008年2月29日。ISBN 978-4-07-258098-1 
  • 林将之『葉っぱで気になる木がわかる ― Q&Aで見わける350種 樹木鑑定』廣済堂あかつき、2011年6月1日、103頁。ISBN 978-4-331-51543-3 
  • 菱山忠三郎監修 成美堂出版編『樹皮・葉でわかる樹木図鑑』成美堂出版、2011年6月。ISBN 978-4415310183 
  • 田中潔『知っておきたい100の木 ― 日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日。ISBN 978-4-07-278497-6 
  • 林弥栄『日本の樹木』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438 
  • 鈴木庸夫、高橋冬、安延尚文『樹皮と冬芽 ― 四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日。ISBN 978-4-416-61438-9 
論文
  • 根路銘国昭、向真一郎「インフルエンザの科学的予防法 ― センダン液でウイルスを殺す」『日本アンチエイジング歯科学会誌』第4号、日本アンチエイジング歯科学会、2011年12月、68-72頁、NAID 40019259583 
新聞
オンライン・データベース
その他ウェブページ

関連項目

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外部リンク

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