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愛知私学4強

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

愛知私学4強(あいちしがくよんきょう)とは、愛知県における高校野球の強豪校4校を指す言葉[3][4]愛知私学四強とも表記される[5]。いずれも名古屋市内にある中京大中京高校東邦高校愛工大名電高校享栄高校の4高校を指す[6][7][8]。愛知県内では、単に私学4強と呼ばれることが多い[9][1][2][10][11][12][13][14]

概要

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地元の有力紙である『中日新聞』では遅くとも、1989年(平成元年)7月時点から用いられていた用語である[1]。これら4校は愛知県の高校野球界では伝統校であり、全国的にも名を知られている[15]。またこの4校からはそれぞれ多数のプロ野球選手も輩出している(後述)。享栄を除く3校はいずれも甲子園で優勝経験があり、唯一優勝経験のない享栄も、愛知大会では常に上位に名を連ねる古豪である[16]。愛知県の甲子園勝利数310勝のうち、私学4強の勝利数は256勝を占める(2024年夏の甲子園終了時点)。

愛知県の高校野球では2016年(平成28年)時点で半世紀近くにわたり、この4校が圧倒的に強く、県内の他の高校にとっては甲子園出場への高い壁としてこの4校が立ちふさがるというという構図が続いていた[7]。しかし2017年春(第89回)では至学館高校2019年夏(第101回)では誉高校小牧市)と、4強に数えられる高校以外の新興勢力がそれぞれ甲子園に進出していることから、愛知県高等学校野球連盟(県高野連)理事長・神田清は2020年(令和2年)時点で、4強以外の高校もレベルが向上し、それが強豪高校の刺激となって全体の底上げにつながっている、と評している[8]。また手束仁も、私学4強を始めとした私立高校が強い中でも熱心な指導者を擁する公立高校勢が奮闘し、互いに切磋琢磨し合っていることで県内の高校野球が盛り上がり、全体の底上げに繋がっていると評している[17]

かつては中京商業(現:中京大中京)、東邦商業(現:東邦)、享栄商業(現:享栄)に、県立愛知商業高校(甲子園通算18回出場、優勝 春1回、甲子園通算17勝)を加えた古豪4校が「愛知4商」[18]、もしくは「愛知の4商」と呼ばれていた[19]。この言葉は昭和に入ってから使われるようになった言葉であるが[19]、戦後になると愛知商業に代わって名古屋電気工業高校(現:愛工大名電)が台頭していき[20]、「私学4強」と呼ばれるようになっていった[19]。また、かつては「私学4強」に愛知高校[注 1][23][6]、もしくは春日丘高校[注 2]を加え[25]私学五強と呼ぶ場合もあった[23][6][25]。手束によれば、1980年代は「4強」に愛知高校を加えて「市内私学5強」と呼称していた[19]

愛知私学4強 甲子園成績・主なOB

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学校名 選抜高等学校野球大会(春)成績 全国高等学校野球選手権大会(夏)成績 主なOB
ちゆうきよう/中京大中京高校 出場32回、58勝27敗、勝率.682、【優勝4回、準優勝4回】(選抜大会 最多勝利数) 出場29回、79勝22敗、勝率.782、【優勝7回】(選手権大会 最多優勝・最多勝利数) 吉田正男
杉浦清
村上重夫
江藤省三
木俣達彦
伊藤敦規
野中徹博
紀藤真琴
後藤孝志
木村龍治
稲葉篤紀
前田章宏
嶋基宏
井藤真吾
堂林翔太(現役)
磯村嘉孝(現役)
伊藤隼太
伊藤康祐(現役)
鵜飼航丞(現役)
伊藤稜 (現役)
髙橋宏斗(現役)
中山礼都(現役)
畔柳亨丞(現役)
とうほう/東邦高校 出場31回、58勝26敗1分、勝率.690、【優勝5回、準優勝2回】(選抜大会 最多優勝・最多勝利数) 出場17回、19勝17敗、勝率.528、【準優勝1回】 阪口慶三
山倉和博
坂本佳一
山田勝彦
山田喜久夫
朝倉健太
木下達生
水野祐希
岩田慎司
石川貢
丸山泰資
松井聖(現役)
石田健人マルク
関根大気(現役)
藤嶋健人(現役)
石川昂弥(現役)
あいこうたい/愛工大名電高校 出場10回、16勝9敗、勝率.640、【優勝1回、準優勝1回】 出場15回、8勝15敗、勝率.348、【最高成績ベスト4】 金田正一
倉野光生
工藤公康
山崎武司
イチロー
石堂克利
丸山貴史
堂上剛裕
堂上直倫
十亀剣
谷口雄也
濱田達郎
東克樹(現役)
田村俊介(現役)
きようえい/享栄高校 出場11回、12勝11敗1分、勝率.522、【最高成績ベスト4】 出場8回、6勝8敗、勝率.429、【最高成績ベスト8】 金田正一
藤王康晴
近藤真一
神野純一
高木浩之
上坂太一郎
大島洋平(現役)
八木亮祐
近藤弘基
上田洸太朗(現役)
竹山日向(現役)

※2024年夏の甲子園終了時点

エピソード

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  • 第15回選抜では中京商業(現・中京大中京)対 東邦商業(現・東邦)の愛知勢同士の決勝戦が行われ、結果は1-0で中京商業が優勝した。
  • 中京大中京は、全国高校野球選手権(夏)で、史上唯一3連覇を達成している。春夏連覇、夏春連覇も達成している。
  • 中京大中京は、夏の甲子園の決勝に7回進出し、7回全て優勝している。決勝戦で一度も負けたことがない。
  • 2010年から2014年まで「やろまいか 愛知私学4強交流戦」が行われていた。
  • 東邦が春に滅法強く夏は準優勝が最高成績であるため、「春の東邦、夏の中京」と地元ではいわれている。ただし、中京大中京は東邦に次ぐ春優勝4回(準優勝4回)と、春最多勝利数を誇っているため、春夏ともに強いといえる。
  • 甲子園の記念大会で、愛知県から2校が選ばれる際には、私学4強全て西愛知地区(尾張・名古屋地区)に区分けされるため、私学4強が2校同時に出場することはできない。
  • 2021年の愛知大会では、愛工大名電が大会史上初の私学4強(中京大中京、東邦、享栄)をすべて下して、夏の甲子園出場を決めた[26]

脚注

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注釈

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  1. ^ 朝日新聞名古屋版では2002年(平成14年)時点で、4強に数えられる4校と愛知の5校を「往年の」私学5強と報じている[21][22]
  2. ^ 春日丘高校は1989年当時、「私学四強に次ぐ強豪」と言われていた[24]

出典

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  1. ^ a b c 中日新聞』1989年7月31日朝刊市民総合版13頁「【愛知県】球児の詩/ 魅せた横綱相撲 山田投手、満点ピッチング 大黒柱、一日で復調 気負わず頂点目指します」(中日新聞社) - 『中日新聞・東京新聞記事データベース』で「私学4強」もしくは「私学四強」の検索ワードで検索したところ、「私学四強」として当該4校の名前を挙げた記事の中で最古の記事(2023年12月19日時点)。
  2. ^ a b 『中日新聞』1992年7月7日朝刊市民総合版17頁「【愛知県】白球“夏の陣”178校 全国高校野球愛知大会(1) 名電に絡む愛知、三河・A 投打、東邦抜きん出る・B」(中日新聞社)
  3. ^ 『中日新聞』2006年3月20日朝刊運動二面26頁「春のキーマン 選抜高校野球(4) 愛知啓成森越祐人 遊撃手 故障一転『120%頑張る』」(中日新聞社 橋本和男)
  4. ^ 愛知の覇権を争ってきた私学4強の盛衰史 近年低迷が続いていた享栄にも復活の兆し”. スポーツナビ. 2021年7月31日閲覧。
  5. ^ 『中日新聞』2014年11月23日朝刊県内総合面21頁「あす高校野球 私学4強交流戦 今年最後の熱戦」(中日新聞社)
  6. ^ a b c 『中日新聞』1998年7月8日朝刊県内総合版17頁「【愛知県】球児それぞれの夏 第80回高校野球東西愛知大会(上) 私学4強 “有名校”にこだわらぬ」(中日新聞社) - 4強とされる高校に愛知高校を加えて「私学五強」としている新聞記事。
  7. ^ a b 東京新聞』2016年10月15日夕刊スポーツ面4頁「スポーツ一期一会 手束仁 愛知・西尾東高校 公立校の意地と伝統」(中日新聞東京本社 スポーツジャーナリスト)
  8. ^ a b 『中日新聞』2020年11月17日朝刊第二社会面24頁「ドラフト指名 なぜ大豊作 愛知の高校出身6人 新興校躍進、底上げ ドラジュニアで情報交換」(中日新聞社)
  9. ^ 中日新聞』1989年7月17日朝刊市民総合版15頁「【愛知県】球児の詩/ 挑戦だ中京、覚悟ッ 「強いチーム」へ実績着々 初出場の大成」(中日新聞社) - 『中日新聞・東京新聞記事データベース』で「私学4強」の検索ワードで検索したところ、ヒットした最古の記事(2023年12月19日時点)。
  10. ^ 『中日新聞』1992年7月25日朝刊県内総合版17頁「【愛知県】高校野球愛知大会 第9日 ベスト32 出そろう 「私学4強」も順当に」(中日新聞社)
  11. ^ 『中日新聞』1999年8月1日朝刊県内総合版19頁「【愛知県】高校野球愛知大会 第12日 私学4強復活の気配 大会回顧」(中日新聞社 高校野球取材班)
  12. ^ 『中日新聞』2000年7月12日朝刊県内総合版17頁「【愛知県】頂点めざして 夏の高校野球注目校(上) 名古屋地区 投打が充実中京大中京 享栄、『春夏』出場へ闘志」(中日新聞社 高校野球取材班)
  13. ^ 朝日新聞』1992年6月20日東京朝刊別刷特集3頁「展望、東日本の地方大会〈2〉 第74回全国高校野球選手権大会」「東邦・中京・愛工大名電・享栄」(栗原健太郎)(朝日新聞東京本社
  14. ^ 仲川明里「私学4強、大府などの伝統校活躍 愛知大会を振り返る」『朝日新聞デジタル朝日新聞東京本社、2021年8月2日。オリジナルの2024年2月15日時点におけるアーカイブ。2024年2月15日閲覧。
  15. ^ 高校野球・愛知の私学4強 少年球児の裾野が生み出す”. 日本経済新聞 (2020年3月1日). 2022年2月9日閲覧。
  16. ^ 西尾典文連載:高校野球2021、夏の地方大会「激戦区」を占う 愛知の覇権を争ってきた私学4強の盛衰史 近年低迷が続いていた享栄にも復活の兆し」『スポーツナビLINEヤフー、2021年7月6日。オリジナルの2024年2月15日時点におけるアーカイブ。2024年2月15日閲覧。
  17. ^ 手束仁野球王国・愛知の“頑張る公立校”が面白い! 私学隆盛の中での奮闘、「新基準バットは追い風だ」と甲子園へ虎視眈々」『高校野球ドットコム』株式会社WoodStock、2024年2月1日。オリジナルの2024年2月15日時点におけるアーカイブ。2024年2月15日閲覧。
  18. ^ 古庄暢「中京商、夏の全国3連覇 愛知「4商」時代、野球王国築く」『朝日新聞デジタル』朝日新聞名古屋本社、2018年3月24日。オリジナルの2024年2月15日時点におけるアーカイブ。2022年2月9日閲覧。
  19. ^ a b c d 手束仁「私学4強がそれぞれの力を示すも、微妙に勢力構図も変化し混戦の様相【愛知・2018年度版】」『高校野球ドットコム』株式会社WoodStock、2018年5月11日。オリジナルの2024年2月15日時点におけるアーカイブ。2024年2月15日閲覧。
  20. ^ 手束仁「CHAPTER-6 都道府県別・最新勢力図 > 愛知 全国一の優勝回数誇る中京大中京など私学4強が健在で新勢力も徐々に台頭」『高校野球を200%楽しむ観戦読本』実業之日本社、2013年5月9日。ISBN 978-4408454429NCID BB12863468https://www.google.co.jp/books/edition/%E9%AB%98%E6%A0%A1%E9%87%8E%E7%90%83%E3%82%92200_%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%82%80%E8%A6%B3%E6%88%A6%E8%AA%AD%E6%9C%AC/S3z6DAAAQBAJ?hl=ja&gbpv=1&dq=%224%E5%95%86%22+%22%E6%84%9B%E7%9F%A5%22+%22%E7%A7%81%E5%AD%A64%E5%BC%B7%22&pg=PA23&printsec=frontcover 
  21. ^ 『朝日新聞』2002年7月25日名古屋朝刊愛知県版第一地方面28頁「いざ8強 第84回全国高校野球愛知大会 /愛知」(朝日新聞名古屋本社
  22. ^ 『朝日新聞』2002年7月30日名古屋朝刊愛知県版第一地方面21頁「熱戦を振り返る 第84回全国高校野球愛知大会 /愛知」(朝日新聞名古屋本社)
  23. ^ a b 『中日新聞』1998年1月2朝刊運動一面29頁「愛知は東西分割 今夏の高校野球」(中日新聞社) - 4強とされる高校に愛知高校を加えて「私学五強」としている新聞記事。
  24. ^ 『中日新聞』1989年7月29日朝刊県内総合版15頁「【愛知県】球児の詩/ 打倒私学に燃え、猛練習に耐え 激闘3時間10分あと一歩、大府 頑張った二年生2投手」(中日新聞社)
  25. ^ a b 『中日新聞』1990年7月7日朝刊社会面31頁「野球部員の不祥事隠す 春日丘高 恐喝未遂で退学に 4月の事件 3月付に“修正” 県高野連に報告せず」(中日新聞社) - 4強とされる高校に春日丘高校を加えて「私学五強」としている新聞記事。
  26. ^ 仲川明里「愛工大名電、「私学4強」3校を破りV 愛知大会史上初」『朝日新聞デジタル』朝日新聞東京本社、2021年8月1日。オリジナルの2024年2月15日時点におけるアーカイブ。2024年2月15日閲覧。

関連項目

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