市川久夫
市川 久夫(いちかわ ひさお、1914年[1]11月7日[2] - 2002年3月25日)は、日本の劇映画・テレビドラマのプロデューサー。生涯で映画約100作品、テレビドラマ約600話の制作に携わった。
来歴
[編集]東京都本所区(現:墨田区)生まれ。東京外語大学卒業[3]。逓信省の職員を経て、1939年に新興キネマ(後に大映へ戦時統合)に入社し[2]、宣伝部を経て同社系列の記録映画会社である東京文化映画製作所にて「病院船」の制作を担当。その後、企画担当作品「風雪の春」の撮影中に応召により、ソ満国境へ赴くが、1945年11月の帰国と共に大映に復帰、企画部長として[4]、「赤線地帯」、「静かなる決闘」等の企画・製作にあたり、大映の黄金期を担う。また、脚本家養成所を大映東京撮影所内に設営し、人材育成にも努めた。1957年、大映の専務であった曽我正史らと共に大映から独立し、日映の設立に関わり、「怒りの孤島」など2作品を制作。1958年に千葉泰樹監督や、脚本家の猪俣勝人の推薦により東宝移り、「非情都市」をはじめ、宝塚映画などの作品を企画・製作すると共に、三船プロダクションの設立への協力を行う。後に同社テレビ部に移動し、刑事物、時代劇などの制作を行う。同社退職後、フリーでのプロデュースを行い、「鬼平犯科帳」、「剣客商売」、「編笠十兵衛」を世に送り出した。2000年代初頭まで映像制作に参画した。
全国信用金庫協会の発行によるフリーマガジン「楽しいわが家」に回顧録を連載し、一部に筆を加えて「人間走馬燈」を刊行。また、大映東京撮影所が所在した東京都調布市に1948年より居住した縁で、映画・テレビの製作の傍ら “映画のまち調布”の映画史の編纂も行った。1992年、エランドール賞を受賞。2002年、心不全のため調布市の自宅で死去、87歳[5]。
主なフィルモグラフィー
[編集]映画
[編集]企画作品
[編集]- 八乙女の歌(1942年/監督:小石栄一、古野栄作/新興キネマ) ※初企画担当作品
- 豪傑系図(1942年/監督:岡田敬/大映)
- 風雪の春 (1943年/監督:落合吉人/大映)
- 鉄拳の街 (1947年/監督:佐伯幸三/大映)
- いつの日か花咲かん (1947年/監督:牛原虚彦/大映)
- 花咲く家族( 1947年/監督:千葉泰樹/大映) ※1947年度キネマ旬報ベストテン9位
- 轟先生 (1947年/監督:島耕二/大映)
- 運命の暦 (1948年/監督:島耕二/大映)
- 美しき豹 (1948年/監督:千葉泰樹/大映)
- 静かなる決闘 (1949年/監督:黒澤明/大映) ※1949年度キネマ旬報ベストテン7位
- あにいもうと (1953年/監督:成瀬巳喜男/大映) ※1953年度キネマ旬報ベストテン第5位
- 赤線地帯 (1956年/監督:溝口健二/大映)
- 怒りの孤島 (1958年/監督:久松静児/日映)
- 悪徳 (1958年/監督・主演:佐分利信/日映)
- 鬼平犯科帳 劇場版 (1995年/監督:小野田嘉幹/松竹、フジテレビジョン)
製作作品
[編集]- 大学の人気者 (1958年/監督:松林宗恵/東宝)
- 風流温泉日記 (1958年/監督:松林宗恵/東宝・宝塚映画)
- こだまは呼んでいる (1959年/監督:本多猪四郎/東宝)
- 大学の28人衆 (1959年/監督:青柳信雄/東宝)
- 非情都市 (1960年/監督:鈴木英夫/東宝)
- がんばれ! 盤嶽 (1960年/監督:松林宗恵/東宝・宝塚映画)
- 六本木の夜 愛して愛して (1963年/監督:岩内克己/東宝)
- 僕はボデイガード (1964年/監督:久松静児/東宝・宝塚映画)
- 女体 (1964年/監督:恩地日出夫/東宝)
テレビ
[編集]プロデュース
[編集]- 東京バイパス指令 (1968年〜1970年/東宝、国際放映、AX)
- 鬼平犯科帳 (1969年〜1970年/東宝、NET) ※主演:八代目松本幸四郎
- 新鬼平犯科帳 (1971年〜1972年/東宝、NET) ※主演:八代目松本幸四郎
- 剣客商売 (1973年/俳優座、東宝、CX) ※主演:加藤剛、山形勲
- 鬼平犯科帳 (1975年/東宝、NET) ※主演:丹波哲郎
- 江戸の旋風 (1975年〜1976年/東宝、CX/ ※制作協力:円谷プロダクション)
- 江戸の旋風II (1976年〜1978年/東宝、CX/ ※制作協力:円谷プロダクション)
- 江戸の旋風Ⅲ (1978年〜1979年/東宝、CX/ ※制作協力:円谷プロダクション)
- 江戸の渦潮 (1978年/東宝、CX/ ※制作協力:円谷プロダクション)
- 鬼平犯科帳 (1980年〜1982年/東宝、中村プロダクション、ANB) ※主演:萬屋錦之介
企画
[編集]- 旗本退屈男 (1970年〜1971年/東宝、CX)
- 剣客商売 辻斬り (1982年/東宝、映像京都、CX/ ※制作協力:俳優座映画放送) ※主演:加藤剛、中村又五郎
- 鬼平犯科帳 (第1期) (1989年-1990年/松竹、CX ※製作協力:京都映画) ※主演:二代目中村吉右衛門
- 鬼平犯科帳(第2期) (1990年-1991年/松竹、CX ※製作協力:京都映画)
- 鬼平犯科帳(第3期) (1991年-1992年/松竹、CX ※製作協力:京都映画)
- 鬼平犯科帳(第4期) (1992年-1993年/松竹、CX ※製作協力:京都映画 )
- 鬼平犯科帳(第5期) (1994年/松竹、CX ※製作協力:京都映画)
- 鬼平犯科帳(第6期) (1995年/松竹、CX ※製作協力:松竹京都映画)
- 鬼平犯科帳(第7期) (1997年/松竹、CX ※製作協力:松竹京都映画)
- 鬼平犯科帳(第8期) (1998年/松竹、CX ※製作協力:松竹京都映画)
- 鬼平犯科帳(第9期) (2001年/松竹、CX ※製作協力:松竹京都映画)
- 剣客商売(第1期) (1998年/松竹、CX/ ※制作協力:松竹京都撮影所) ※主演:藤田まこと、渡部篤郎
- 剣客商売(第2期) (1999〜2000年/松竹、CX/ ※制作協力:松竹京都撮影所)
- 剣客商売(第3期) (2001年/松竹、CX/ ※制作協力:松竹京都撮影所) ※主演:藤田まこと
- 剣客商売(第4期) (2003年/松竹、CX/ ※制作協力:松竹京都撮影所) ※主演:藤田まこと、山口馬木也
監修
[編集]- 仕掛人・藤枝梅安 (1991年/国際放映、CX)
- 時代劇スペシャル 仕掛人・藤枝梅安 対決 (1993年/国際放映、CX)
- 雲霧仁左衛門 (1995年〜1996年/松竹、CX)
- 編笠十兵衛 (1997年/松竹、TX/※制作協力:松竹京都映画)
協力
[編集]- 江戸の激斗 (1979年/東宝、CX/ ※制作協力:円谷プロダクション)
- 新・江戸の旋風 (1980年/東宝、CX/ ※制作協力:円谷プロダクション)
- 江戸の朝焼け (1980年〜1981年/東宝、CX/ ※制作協力:円谷プロダクション)
著・監修書
[編集]- - 我等の生涯の最良の映画(35) 風俗描写と働く女性の実態「赤線地帯」 - (著:市川久夫)
- 「調布・映画小史」(合冊綴) (著:市川久夫/刊:調布史談会/1990年)
- ※調布市立中央図書館 映画資料室 蔵書
- ※同書、108〜109,113pに市川へのインタビュー記事あり。
- 「人間走馬燈」(私家版)(著:市川久夫/刊:市川道子/2002年)
関連人物
[編集]関連項目
[編集]参考文献
[編集]- 「週刊新潮」2002年4月11日号より、墓碑銘「鬼平犯科帳を支えた市川久夫氏の現場一途」
脚注
[編集]- ^ Webcat Plus
- ^ a b 河北新報 1984年1月4日夕刊 8面「市川久夫 私のテレビ交友録」(第1回掲載の当人のプロフィール)
- ^ http://www1.odn.ne.jp/sanjinkai/syoukai/yokogao/yokogao43.html 山人会 ホームページ 会員の横顔 1978年/山人会報43号より
- ^ “森繁さんと市川さんのこと”. 守田比呂也公式ブログ. 2022年10月17日閲覧。
- ^ 市川久夫氏死去/「鬼平」をテレビ時代劇化 - 四国新聞社