人形の家
人形の家 Et Dukkehjem | |
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イプセンによる人形の家原稿表紙 | |
作者 | ヘンリック・イプセン |
国 | ノルウェー |
言語 | ノルウェー語、デンマーク語 |
ジャンル | リアリズム演劇、近代劇 |
幕数 | 3幕 |
初出情報 | |
初出 | 舞台公演 |
刊本情報 | |
出版元 | Gyldendal社、コペンハーゲン |
出版年月日 | 1879年12月4日 |
初演情報 | |
場所 | デンマーク王立劇場 |
初演公開日 | 1879年12月21日 |
日本語訳 | |
訳者 | 島村抱月、1911年 |
ポータル 文学 ポータル 舞台芸術 |
『人形の家』(にんぎょうのいえ、丁: Et dukkehjem [ed̥ ˈd̥ɔɡ̊əjɛmˀ])は、1879年にヘンリック・イプセンによって書かれた戯曲。
概説
[編集]1879年、デンマーク王立劇場で上演された。弁護士ヘルメルの妻ノラ(ノーラ[1])を主人公とし、新たな時代の女性の姿を世に示した作品。全3幕。
世界的にイプセンの代表作とされている。この作品(あるいは前作の『社会の柱』)をもってイプセンの社会劇あるいは中期問題劇の始まりと見なすのが一般的であり、彼はこの後ほぼ2年に1作のペースで作品を書き上げることになる。リアリズム演劇あるいは近代劇の代表作品であり、同時にしばしばフェミニズム運動の勃興とともに語られる作品である。この作品の成功がイプセンを一躍世界的な劇作家とした。西欧内部だけでなく、アジア諸国の女性解放運動や新劇(日本)、話劇(中国)など伝統演劇とは異なる新演劇の形成に直接の影響を与えた。
登場人物
[編集]- トルヴァル・ヘルメル:弁護士
- ノラ(ノーラ):主人公。その妻
- ドクトル・ランク
- リンデ夫人
- ニルス・クロクスタ
- ヘルメル家の三人の子供たち
- アンネ・マリーエ:乳母
- 女中
- ポーター
あらすじ
[編集]弁護士ヘルメルと妻ノラ(ノーラ)は公私ともに充実した生活を送っていたが、クリスマスイブに事件が訪れる。
ヘルメルは年明けから信託銀行の頭取に就任することとなり、その部下となる予定のクロクスタが、ノラを訪ねた。クロクスタはヘルメルと旧知の仲であったが疎まれており、ヘルメルの頭取就任後に解雇される予定であった。ノラはクロクスタの解雇撤回の頼みを断ろうとするが、クロクスタはノラが過去に犯した違法行為の証拠を握っていることを明かす。それはかつてヘルメルが重病に陥り金銭が必要になったとき、ノラはクロクスタから借金をし、その際に借用証書の父のサインを偽造したのであった。当時、父は死の床にあったため、それは苦肉の策でもあった。もし解雇されるなら、この秘密を暴露するとクロクスタに宣言されたノラは悩む。
ノラはヘルメルにクロクスタの解雇を取り消すよう頼むが、事情を知らないヘルメルは取り合わず、クロクスタは解雇を通告される。宣言どおりクロクスタは秘密を暴露する手紙をヘルメルに送りつけた。事情を知ったヘルメルは激怒し、ノラをさんざんに罵倒するが、その最中に改心したクロクスタから借用証書が返送されてくる。先ほどまでの態度を豹変させ、ヘルメルは微笑んで甘い言葉を発するようになる。ノラは今までにヘルメルから愛情を受けていると思っていたが、実は自分を人形のように可愛がっていただけであり、一人の人間として対等に見られていないことに気づき、ヘルメルの制止を振り切って家を出る。
主な日本語訳
[編集]- 独和対訳ノラ(小野秀雄訳、南山堂、1913年) ‐ 最初期の邦訳書。1911年の文芸協会による舞台(松井須磨子主演・島村抱月訳)の成功に肖り翻訳され、ドイツ語関連書としては異例の7刷6千部を売り上げた。[2][3]
- 人形の家(矢崎源九郎訳、新潮文庫、改版2016年)
- 人形の家(原千代海訳、岩波文庫、1996年)- 旧訳版は竹山道雄
- 人形の家(山室静訳、角川文庫、改版1990年)
- 人形の家(毛利三彌訳、論創社・近代古典劇翻訳<注釈付>シリーズ、2020年)
日本での公演
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
1911年公演
[編集]日本における初演は文芸協会による。会長の坪内逍遥の私邸内に建てられた文芸協会試演場で公演された[4]。
- 1911年(明治44年)9月22日~9月24日、文芸協会演劇研究所私演場(第二幕を省略した形で上演)
- 1911年(明治44年)11月28日~12月5日、帝国劇場(第2回公演。島村抱月訳。三幕全部を上演[5]。翌1912年(明治45年)3月14日から21日まで大阪中座でも上演された。)
9月公演のキャストは以下の通り。表記は当時による。
1928年公演
[編集]1946年公演
[編集]- 訳:島村抱月、演出:土方与志[8]
- 1946年(昭和21年)3月1日~3月17日、有楽座
- ヘルマー:滝沢修、ノラ:信千代、ランク:森雅之、リンデン夫人:竹久千恵子、クログスタッド:薄田研二、アンナ:山本安英、エレン:椿澄枝
1958年公演
[編集]劇団民藝 新劇50年記念公演
1971年公演
[編集]ノルウェー国立劇場 日本公演[9]
- 演出:エーディト・ローゲル、制作:日本文化財団
- 1971年(昭和46年)9月21日~10月11日、国立劇場ほか[10]
- ノーラ:インゲリッド・バルドゥン、ヘルメル:エスペン・シェーンベルグ、クロクスタ:フランク・ローベルト、リンデ夫人:アストリッド・フォルスタ、医師ランク:ヨアヒム・カルメイヤー、アンネ・マリー:エービィ・エンゲルヌボルグ
1978年公演
[編集]2000年公演
[編集]- 訳・台本・演出:毛利三彌[13]、制作:名取事務所、後援:ノルウェー王国大使館
- 2000年(平成12年)10月11日~10月15日、シアターΧ[14]
- ノーラ:日下由美、原康義、リンデ夫人:土井美加、若松泰弘、児玉泰次
2012年公演
[編集]- 訳:三輪えり花、演出:ニコラス・バーター
- 2012年(平成24年)9月7日~9月9日、シアターグリーン BIG TREE THEATER
- クログスタット:松橋登、ランク:得丸伸二、ヘルメル:石田博英、ノラ:井上薫、リンデ夫人:要田禎子、アンヌ:江川泰子
2017年公演
[編集]- 翻訳:原 千代海、演出:西川信廣、作曲・音楽=上田 亨、作詞=宮原芽映
- 2017年1月26日 - 29日、俳優座劇場
- 2017年1月31日~2月28日 千葉/四街道/所沢/船橋/松戸/王子/埼玉/大宮/昭島/八王子/練馬/桶川/板橋/町田
- ノラ:土居裕子、ヘルメル:大場泰正、リンデ夫人:古坂るみ子、クロクスタ:畠中洋、ランク:進藤忠
2019年公演
[編集]りゅーとぴあプロデュース[17]
- 上演台本:笹部博司、演出:一色隆司
- 2019年5月10日 - 20日、新潟りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場 / 2019年5月23日 - 24日、兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
- ノラ:北乃きい、ヘルメル:佐藤アツヒロ、リンデ夫人:大空ゆうひ、クロクスタ:松田賢二、ランク:淵上泰史
2022年公演
[編集]- 翻訳:原 千代海、演出:西川信廣、作曲・音楽=上田 亨、作詞=宮原芽映
- 2022年9月8日 - 11日、俳優座劇場
- 2022年9月14日~12月12日 九州/四国/中部北陸
- ノラ:土居裕子、ヘルメル:大場泰正、リンデ夫人:髙橋美沙、クロクスタ:畠中洋、ランク:進藤忠
2024年公演
深作組ドイツ・ヒロイン三部作第一弾『ノラーあるいは、人形の家ー』
- 翻訳:大川珠季、演出:深作健太、音楽:西川裕一
- 2024年5月23日 - 26日 銕仙会能楽研修所
- 2024年6月1日、2日 水戸芸術館ACM劇場
- ノラ:夏川椎菜、ヘルメル:宮地大介、リンデ夫人:高山のえみ、クロクスタ:川久保拓司、ランク:塩谷亮、へレーネ:荻沼栄音、エミー:寺戸花
脚注
[編集]- ^ 「日本では、長く(ノラ)と呼ばれてきたが、劇中、なんども(ノーラノーラ)と繰り返し呼ばれ、いわばこの劇の弾んだリズムを作るもとにもなっているから、原語どおりの長母音の発音が望ましい。」論創社版(2020年4月刊)毛利三彌訳『人形の家』p155注4
- ^ 醫學中央雜誌 医学中央雑誌刊行会 1913-06
- ^ 『新聞研究五四十年』小野秀雄、毎日新聞社、1971、p16
- ^ 金子 2012
- ^ “文芸協会-近代演劇の革新へ向かって-”. Japan Search. 2021年7月29日閲覧。
- ^ 久保栄. “久保栄 イプセン百年祭講演”. www.aozora.gr.jp. 2021年7月29日閲覧。
- ^ 井上理恵「敗戦後の芸術運動:――東芸の場合――」『演劇学論集 日本演劇学会紀要』第29巻、日本演劇学会、1991年、31-49頁、doi:10.18935/jjstr.29.0_31、ISSN 1348-2815、NAID 130007743628。
- ^ Corporation), NHK(Japan Broadcasting. “ニュース映像 戦後編 第8号|NHK 戦争証言アーカイブス”. NHK戦争証言アーカイブス. 2021年7月28日閲覧。
- ^ 『ノルウェー国立劇場日本公演プログラム』日本文化財団、1971年 。
- ^ “芸術劇場 「人形の家」(字幕スーパー)―ノルウェー国立劇場日本公演より | NHKアーカイブス”. www.nhk.or.jp. 2021年7月28日閲覧。
- ^ “イプセン生誕150周年記念公演”. CiNii Books. 2021年7月29日閲覧。
- ^ “シアターΧ提携 イプセン連続公演「人形の家」”. www.nato.jp. 名取事務所. 2021年7月18日閲覧。
- ^ イプセン現代劇上演台本集、毛利三彌、論創社、2014年、p.59。
- ^ 演劇年鑑 2001、日本演劇協会、2001年、p.231。
- ^ “『人形の家』 RADAイン東京二十周年記念公演 ? 現代演劇協会 デジタルアーカイヴ”. onceuponatimedarts.com. 2021年7月25日閲覧。
- ^ “俳優座劇場プロデュース公演1981年ー2020年」”. 株式会社俳優座劇場. 2022年9月11日閲覧。
- ^ Inc, Natasha. “北乃きい主演「人形の家」開幕に佐藤アツヒロ「惜しむことなく愛情を表現」”. ステージナタリー. 2022年1月21日閲覧。
- ^ “俳優座劇場プロデュース公演1981年ー2020年」”. 株式会社俳優座劇場. 2022年9月11日閲覧。
参考文献
[編集]- 金子幸代「イプセン『人形の家』をめぐる鷗外と魯迅 : 魯迅生誕一三〇年に寄せて」『富山大学人文学部紀要』第56号、富山大学人文学部、456-444頁、2012年。 NAID 40019217502。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 『人形の家』:旧字旧仮名 - 青空文庫(島村抱月訳)
- 『『人形の家』解説』:旧字旧仮名 - 青空文庫(島村抱月著)
- 人形の家(国立国会図書館デジタルコレクション)楠山正雄訳、新潮文庫