コンテンツにスキップ

ハンナン事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ハンナン事件(はんなんじけん)とは、食肉卸売業「ハンナン株式会社」元会長の浅田満らが起こした企業犯罪事件の総称。

畜産振興事業団事件

[編集]

1987年10月、浅田は外国産牛肉の放出枠の割り当てをめぐって畜産振興事業団幹部に600万円を渡し、便宜を図らせた贈賄の容疑で逮捕された。1988年3月、東京地裁にて懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡されたが、浅田はその場で豊田健裁判長に向かって「(執行猶予期間が)長すぎるんじゃないですか」と食ってかかり、驚いた裁判長にたしなめられる一幕があった[1]

ハンナン牛肉偽装事件

[編集]

2001年から2002年にかけて、BSE対策事業の一環として行われた国産牛肉買い取り事業を悪用して、計約50億3000万円の詐欺補助金適正化法違反(不正受給)などの罪に問われた事件。

裁判経過

[編集]

2004年(平成16年)4月17日、BSEに関する農林水産省の補助金制度を悪用し不正受給を行ったとして、浅田満社長らが詐欺罪など複数の容疑で逮捕された[2]

2004年(平成16年)12月22日、史上最高額の20億円という保釈金を払って保釈される[3]

2005年(平成17年)5月11日大阪地裁角田正紀裁判長)は共犯として実弟の浅田暁ら5人を「首謀者である満被告の犯行を唯一止めうる立場にあり、責任は重い」などとして執行猶予付きの有罪判決を言い渡した[4][5]

2005年(平成17年)5月27日大阪地裁(水島和男裁判長)は浅田満に対して懲役7年の実刑判決を言い渡した[6]。被告側は判決を不服として控訴した。

2008年(平成20年)3月4日大阪高裁(片岡博裁判長)は一審・大阪地裁の懲役7年の判決を支持、浅田満側の控訴を棄却した[7]。被告側は判決を不服として上告した。

2012年(平成24年)2月27日最高裁第二小法廷古田佑紀裁判長)は上告審口頭弁論を開いた[8]。弁護側は全面無罪を、検察側は証拠隠滅教唆罪についてのみ無罪を主張して結審した[8]

2012年(平成24年)4月2日、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は、発見された書類は複製の可能性が高いとして有罪を維持した二審判決を「重大な事実誤認をした疑いが顕著」として破棄、大阪高裁に差し戻した[9]

2013年(平成25年)12月25日、大阪高裁(森岡安広裁判長)は「証拠隠滅教唆罪については証拠不十分で無罪」として、一審判決を破棄し懲役6年8月の実刑判決を言い渡した[10]

2015年(平成27年)4月8日、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は被告側の上告を棄却する決定を出したため、浅田満に対する懲役6年8月の判決が確定した[11]

2016年(平成28年)11月23日、浅田満は刑の執行のため刑事施設に収監された[12]。判決確定後も病気を理由に刑が執行されていなかったが、大阪高検は病状が快方に向かい、刑事施設に収容可能と判断し収容状を大阪地裁に請求して執行した[12]

再審請求

[編集]

2010年(平成22年)11月25日、大阪地裁(中川博之裁判長)は共犯として懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が確定したグループ会社の元役員について再審開始を決定した[13]。検察側は抗告せず。

2011年(平成23年)1月18日、大阪地裁(和田真裁判長)は証拠隠滅罪で懲役1年、執行猶予3年の判決が確定した関連会社の元従業員についても再審開始を決定した[14]。大阪地検はこの決定を受け入れる方針。経理書類について「(一審判決で)裁断されたと認定した書類が存在する疑いがある」と指摘した。ただし、被告人は全面無罪を主張してはいない。

2011年(平成23年)12月16日、大阪地裁(斎藤正人裁判長)でグループ会社の元役員の再審初公判が開かれた。検察は懲役1年6月を求刑、被告人は「証拠隠滅の行為をしていません」と意見陳述し、無罪を主張して即日結審した[15]

2012年(平成24年)2月8日、大阪地裁(斎藤正人裁判長)でグループ会社の元役員の再審判決公判が開かれ、裁判長は「細断したとされる書類が多数存在し、自白の信用性に疑問がある上、ほかに細断したと認める証拠はない」として無罪判決を言い渡した[16]。検察側は控訴を断念し、2月10日に上訴権放棄で確定。

2011年(平成23年)12月22日、大阪地裁(和田真裁判長)で関連会社の元従業員の再審初公判が開かれた。検察は懲役1年を求刑、被告人は単独で経理書類を隠した行為を除いて無罪を主張し即日結審した。

2012年(平成24年)1月16日、大阪地裁(和田真裁判長)で関連会社の元従業員の再審判決公判が開かれ、「裁断したとされる書類の大半が確定判決後に見つかった」として、裁断について無罪、自宅に隠した点のみ有罪とし懲役6月、執行猶予3年が言い渡された[17]。検察側は期限までに控訴せず、有罪が確定した。

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ 毎日新聞1988年3月12日
  2. ^ 大阪府肉連の浅田副会長を逮捕 6億4千万円詐取容疑」『朝日新聞朝日新聞社、2004年4月17日。オリジナルの2004年4月29日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  3. ^ 偽装牛肉事件の浅田満被告保釈 過去最高の20億円納付」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年12月22日。オリジナルの2004年12月29日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  4. ^ 牛肉偽装事件、ハンナン前社長ら5人に有罪判決」『読売新聞読売新聞社、2005年5月11日。オリジナルの2005年5月14日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  5. ^ 「ハンナン」元社長に有罪判決 偽装牛肉事件で大阪地裁」『朝日新聞』朝日新聞社、2005年5月11日。オリジナルの2005年5月13日時点におけるアーカイブ。2025年3月1日閲覧。
  6. ^ 浅田元会長に懲役7年判決 「ハンナン」偽装牛肉事件」『朝日新聞』朝日新聞社、2005年5月27日。オリジナルの2005年5月29日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  7. ^ 牛肉偽装、ハンナン元会長の控訴棄却…大阪高裁」『読売新聞』読売新聞社、2008年3月4日。オリジナルの2010年12月4日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  8. ^ a b ハンナン元会長、上告審弁論 部下の再審結果が影響か」『日本経済新聞日本経済新聞社、2012年2月27日。オリジナルの2024年11月9日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  9. ^ 牛肉偽装、ハンナン元会長の審理差し戻し 一部無罪の公算」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2012年4月2日。オリジナルの2024年11月9日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  10. ^ "元ハンナン会長に一部無罪 牛肉偽装事件の差し戻し審". 共同通信. 2013年12月25日. 2013年12月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月26日閲覧
  11. ^ 食肉卸ハンナン・浅田元会長の実刑確定 懲役6年8月 最高裁が上告棄却」『産経新聞産業経済新聞社、2015年4月10日。オリジナルの2022年10月7日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  12. ^ a b ハンナン元会長を収監 牛肉偽装事件」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2016年11月29日。オリジナルの2016年11月30日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  13. ^ ハンナンの牛肉偽装、証拠隠滅巡り再審へ」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2010年11月26日。オリジナルの2024年11月9日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  14. ^ ハンナン牛肉偽装、別の元社員も再審決定」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2011年1月18日。オリジナルの2024年11月9日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  15. ^ 再審初公判で元部長無罪を主張 ハンナン牛肉偽装」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2011年12月16日。オリジナルの2024年11月9日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  16. ^ 元経理部長に再審無罪判決 ハンナン牛肉偽装巡り大阪地裁」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2012年2月9日。オリジナルの2024年11月9日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
  17. ^ 再審の元取締役に一部無罪判決 ハンナン牛肉偽装事件」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2012年1月16日。オリジナルの2024年11月9日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。

関連書籍

[編集]

関連項目

[編集]