キュウリウオ目
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アユ Plecoglossus altivelis
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キュウリウオ目(英: Osmeriformes)は、硬骨魚類の分類群の一つ。3科22属で構成され、アユ、シシャモ、シラウオ、ワカサギなどよく知られた釣魚・食用魚を含む88種が所属する。ほぼすべての種類は淡水魚か、あるいは海洋と河川を往復して暮らす遡河性の魚類である。
概要
[編集]キュウリウオ目はサケ目・カワカマス目・ニギス目との関係が深く、これら4目は原棘鰭上目としてまとめられている。キュウリウオ目はかつてニギス目とともにサケ目に含められていたが、Nelson(1994)によってキュウリウオ亜目・ニギス亜目の2亜目13科からなる独立の目とされた[1]。その後Nelson(2006)において、ニギス亜目が単独の目として分離され、2008年現在の3科22属の構成となった[2]。
キュウリウオ目はキュウリウオ上科とガラクシアス上科の2上科からなり、ほとんどの種類は淡水で産卵する。キュウリウオ上科は北半球に分布し、仔魚〜稚魚期のみを海で過ごすアユや、産卵のため遡上回遊するシシャモ・ワカサギなど種によってさまざまな生活史がある。ガラクシアス上科は南半球の淡水域に生息し、特にタスマニア島を含むオーストラリア南東部と、ニュージーランドに多くの種類が分布する。
体型は一般に細長く小型で、体長は最大でも60cm未満である。腹鰭は腹部の中央についている。脂鰭をもつ種類ともたない種類があり、科以下の分類に用いられる。基蝶形骨・眼窩蝶形骨を欠く。
分類
[編集]キュウリウオ目はキュウリウオ上科・ガラクシアス上科の2上科の下に、3科22属が設置される[2]。かつて本目に含められていたニギス亜目 Argentinoidei は、Nelson(2006)により独立のニギス目 Argentiniformes として扱われるようになった。和名のない分類名については、本稿では上野・坂本(2005)によるカタカナ表記を参考とした[3]。
キュウリウオ上科
[編集]キュウリウオ上科 Osmeroidea は1科11属からなり、31種を含む。卵は粘着性の膜で覆われ、産卵後は砂礫などに付着する。かつて本上科に属していたスンダサランクス科 Sundasalangidae はニシン科に移されている。
キュウリウオ科
[編集]キュウリウオ科 Osmeridae 英: Smelt は3亜科11属31種。口蓋骨はダンベル状で、腹鰭の鰭条は8本。脂鰭をもつ。側線はあるが、多くの種では不完全である。体色は主に銀色で、体長20cm未満の種類が多い。
- ワカサギ亜科 Hypomesinae 1属6種。チカ、ワカサギなど日本で食用とされる種類を含む。チカは沿岸域に生息し河川には遡上しないが、産卵は塩分濃度の低い砂浜で行う。ワカサギは産卵のため遡上するタイプと、生涯を湖などで暮らす陸封型のタイプがある。
- アユ亜科 Plecoglossinae アユ1種のみが所属する。アユ科 Plecoglossidae として扱われることもある。日本および中国大陸沿岸に分布する。
- キュウリウオ亜科 Osmerinae 9属24種。キュウリウオ・シシャモ・カラフトシシャモ・シラウオなどが属する。カラフトシシャモはシシャモとは別属の異なる魚で、北極海からオホーツク海にかけての寒冷な海に住む。キュウリウオはキュウリのような独特の臭みがあり、名前の由来にもなっている。
- アリアケシラウオ属 Salanx
- シラウオ属 Salangichthys
- ヒメシラウオ属 Neosalanx
- Protosalanx 属
- 以上4属はかつてシラウオ科 Salangidae としてまとめられていた。
- カラフトシシャモ属 Mallotus
- キュウリウオ属 Osmerus - European smelt
- シシャモ属 Spirinchus
- Allosmerus 属
- Thaleichthys 属
ガラクシアス上科
[編集]ガラクシアス上科 Galaxoidea は2科11属57種で構成される。分布はオーストラリア・ニュージーランドなど南半球が中心である。ミナミキュウリウオ科の所属位置について、Nelson(2006)は形態学的な解析手法を採用し本上科に含めたが、ミトコンドリアDNAの解析に基づきキュウリウオ科の姉妹群であるとみなす見解もある[4]。
ミナミキュウリウオ科
[編集]ミナミキュウリウオ科 Retropinnidae は2亜科3属5種。
- ミナミアユ亜科 1属2種。背鰭は腹鰭の真上にある。現生種は内1種で、オーストラリア南東部およびタスマニア島に分布し、体長35cm程度にまで成長する。
- ミナミアユ属 Prototroctes
- ミナミキュウリウオ亜科 Retropinninae 2属4種。背鰭は腹鰭より後方にある。体長は最大でも15cm程度。オーストラリアとニュージーランドに分布する。
- ミナミキュウリウオ属 Retropinna
- Stokellia 属
ガラクシアス科
[編集]ガラクシアス科 Galaxiidae は2亜科8属52種。レピドガラクシアス属の魚類(1種のみ)には際立った特徴が多く、分類上の位置や他の分類群との系統学的な関係については多くの議論がある。
- レピドガラクシアス亜科 Lepidogalaxiinae 1属1種。オーストラリア南東部の淡水に住む。体型は細長く、背鰭は腹鰭の後方、臀鰭の真上にある。脂鰭をもたない。鱗が非常に薄い。眼球を動かすための筋肉を欠いており、その代償として頚部を下方および左右に曲げることができる。また、渇水期を土中に潜ってやり過ごすなど、形態および生態に特異な点を多く有している。
- レピドガラクシアス属 Lepidogalaxias
- ガラクシアス亜科 Galaxiinae 7属51種。オーストラリア・ニュージーランドに多く、ニューカレドニア・南アフリカ・南アメリカにも少数種が分布する。鱗をもたない。脂鰭は Aplochiton 属と Lovettia 属のみにあり、他の属にはない。淡水域で生まれ海で生活する種類、生涯を湖沼で暮らす陸封型のものや、夏眠をする種類などさまざまな生態が知られている。
- ガラクシアス属 Galaxias
- Aplochiton 属
- Brachygalaxias 属
- Galaxiella 属
- Lovettia 属
- Neochanna 属
- Paragalaxias 属
参考文献
[編集]- ^ Nelson JS (1994). Fishes of the world (3rd edn). New York: John Wiley and Sons
- ^ a b Nelson JS (2006). Fishes of the world (4th edn). New York: John Wiley and Sons
- ^ 『新版 魚の分類の図鑑』 pp.64-65
- ^ Waters JM, Saruwatari T, Kobayashi T, Oohara I, McDowall RM, Wallis GP (2002). “Phylogenetic placement of tetropinnid fishes: data set incongruence can be reduced using asymmetric character state transformation costs”. Syst Biol 51: 432-449.
- 上野輝彌・坂本一男 『新版 魚の分類の図鑑』 東海大学出版会 2005年 ISBN 978-4-486-01700-4
- 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2