しもじ型巡視船
しもじ型巡視船 | |
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PS31「しもじ」 | |
基本情報 | |
艦種 | 180トン型PS |
就役期間 | 2016年 - 現在 |
前級 | びざん型 (2代) |
次級 | 最新 |
要目 | |
総トン数 | 206トン[1] |
全長 | 43.5 m[1] |
最大幅 | 7.8 m[1] |
深さ | 4.0 m[1] |
主機 |
ニイガタ16V20FX(10番船を除く) もしくはMTU20V4000M93L(10番船のみ) ディーゼルエンジン×2基 |
推進器 | ウォータージェット推進器×2軸 |
速力 | 25ノット以上[1] |
乗員 | 16名 |
兵装 | JM61-RFS 20mm多銃身機銃×1門 |
搭載艇 | 複合艇×1隻 |
FCS | RFS射撃指揮装置 (20mm機銃用) |
レーダー | 航海用×1基 |
光学機器 | 赤外線捜索監視装置 (RFS兼用) |
しもじ型巡視船(しもじがたじゅんしせん、英語: Shimoji-class patrol vessel)は、海上保安庁の巡視船の船級。分類上はPS型、公称船型は180トン型。予算要求時には「規制能力強化型巡視船」と称されていた[2]。
来歴
[編集]2012年9月の尖閣諸島国有化以降、尖閣諸島周辺海域では中国政府の公船の徘徊や領海侵入等の事案の頻度が増加していたが、これと同時に、外国漁船の違法操業も目立つようになっていた[1]。海上保安庁では、公船の徘徊等に対応するための大型巡視船(PL・PLH)による尖閣領海警備専従体制の構築と並行して、これらの外国漁船を規制するための小型巡視船(PS)も増強することになった。これが本型である[3]。
設計
[編集]基本設計はびざん型後期型をベースとしているが、規制能力強化が要請されたことから、大型の密漁船への強行接舷を想定して、船質をアルミニウム合金から高張力鋼に変更して強度を高めるとともに、舷側のほぼ全長にわたって脱着式の防護プレートを装備した。また操舵室脇にも同様の防護プレートを設置できるほか、船橋両舷の張り出し部下方に3本ずつの鋼材支柱を設けており、外見上の特徴となっている[注 1]。船首側前半部のレイアウトはびざん型後期型とほぼ同様だが、マストから後方の吸気室やクレーン、搭載艇の配置などは大きく改正された[4]。
主機として、10番船以外はニイガタ16V20FXディーゼルエンジン2基を搭載した[4][5]。10番船についてはMTU20V4000M93Lディーゼルエンジンが2基搭載されている[6][7]。なおびざん型では、新潟・ピルスティクのV型16気筒ディーゼルエンジンである16PA4V-200VGA(単機出力3,500馬力)、もしくは新潟16V20FX(単機出力5,000馬力)を搭載していた[8]。
同型船
[編集]一覧表
[編集]計画年度 | 船番 | 船名 | 造船所 | 起工 | 進水 | 就役/配属替え | 配属保安部署(配属管区) |
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平成26年度補正[9] | PS-31[9] | しもじ[9] | 墨田川造船[9] | 2015年3月16日[9] | 2016年3月9日[9] | 2016年11月30日[9] | 宮古島(第十一管区)[10][11][12][13] |
PS-32[9] | くりま[9] | 2016年3月25日[9] | 2017年2月28日[9] | ||||
PS-33[9] | おおがみ[9] | 新潟造船[9] | 2015年3月20日[9] | 2016年3月23日[9] | 2017年2月27日[9] | ||
平成27年度補正[14] | PS-34[14] | しぎら[14] | 墨田川造船[14] | 2016年3月28日[14] | 2017年3月13日[14] | 2017年11月15日[14] | |
PS-35[14] | ともり[14] | 新潟造船[14] | 2016年3月23日[14] | 2017年3月3日[14] | 2018年2月28日[14] | ||
PS-36[14] | とぐち[14] | 2017年6月30日[14] | |||||
平成28年度第2次補正[15] | PS-37[15] | ひさまつ[15] | 2017年3月22日[15] | 2017年12月25日[15] | 2018年11月30日[15] | ||
PS-38[15] | ながやま[15] | 2018年3月18日[15] | 2019年2月22日[15] | ||||
PS-39[15] | まえはま[15] | 2018年3月19日[15] | |||||
平成30年度第2次補正[1] | PS-40[1] | みかづき[1][16] | 墨田川造船[1] | 2020年4月7日 | 2021年2月16日[16] | 小笠原(第三管区)[1] | |
令和3年度補正 | PS-41 | かむい | 新潟造船 | 2023年7月 | 2024年2月22日 | 江差(第一管区) | |
令和6年度 | 2026年度予定 |
運用史
[編集]尖閣諸島周辺海域での外国船の不法操業取り締まり等を目的として[17]、2016年度(平成28年度)から2018年度末(平成30年度末)までの3年間で、各年度3隻ずつ計9隻の巡視船を宮古島に集中配備されることが計画されている[18][19]。この体制整備の一環で、宮古島海上保安署は2016年10月1日に宮古島海上保安部に昇格[20][21]。燃料・貨物輸送などに遊休化していた伊良部島の長山港長山地区が新たに泊地として整備されている[22][23][24]。
墨田川造船で2021年(令和3年)2月16日に引き渡し式が執り行われた10番船「みかづき」は、小笠原海上保安署に初めて配備される巡視船である[16]。外国船によるアカサンゴ(Corallium japonicum. cf. 宝石サンゴ)の密漁(2014年と2015年には、1日200隻以上の中国船が確認される日もあった[25]。)や違法操業が後を絶たない海域でありながら[16]、同署に配備されていたのは、FRP製、全長10m、排水量5.0tと船体も小さく、航洋性に乏しい監視取締挺「さざんくろす」(さざんくろす型監視取締艇 さざんくろす)であった[16]。つまり、巡視船が配備されておらず、第三管区海上保安本部横浜海上保安部などの巡視船が取り締まるという、心もとない状況が何年も続いていた[25]。2021年3月18日に第三管区海上保安本部を離れ、同年3月20日に小笠原海上保安署に配備され、小笠原海域の警備に当たっている。[26]
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 10番船以降は支柱が省略されている
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k 海人社 2020, p. 66.
- ^ “平成26年度 海上保安庁関係補正予算の概要” (PDF). 海上保安庁 (2015年1月9日). 2017年3月14日閲覧。
- ^ 秋本 2018.
- ^ a b 海人社 2017.
- ^ “公共調達の適正化について(財計第2017号 平成18年8月25日に基づく契約に係る情報の公開)令和3年度分”. 海上保安庁. 2023年7月15日閲覧。
- ^ “入札・落札の状況 政府調達 特機契第18123号 3,700kWディーゼル機関3基ほか6点買入” (PDF). 海上保安庁 (2019年3月6日). 2021年2月3日閲覧。
- ^ “第三管区海上保安本部入札情報 船舶用部品(Oリング等)買入(その6)”. 第三管区海上保安本部. 2023年10月24日閲覧。
- ^ 佐藤 2008.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 海人社 2017b.
- ^ “巡視船艇2隻を配属/宮古島海上保安部”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2017年3月18日) 2021年2月19日閲覧。
- ^ “巡視船「しぎら」配備、宮古島海保”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2017年12月2日) 2021年2月19日閲覧。
- ^ “宮古島海上保安部、巡視船就役で記念式典”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2018年4月13日) 2021年2月19日閲覧。
- ^ “巡視船「ひさまつ」入港、宮古島海保7番船”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2018年12月21日) 2021年2月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 海人社 2018.
- ^ a b c d e f g h i j k l m 海人社 2019.
- ^ a b c d e 「海上保安庁 初の小笠原向け巡視船「みかづき」竣工 南方海域での密漁などへ対処」『乗りものニュース』株式会社メディア・ヴァーグ、2021年2月19日。2021年2月19日閲覧。
- ^ “サンゴ密漁対策へ新型巡視船 3隻新造 補正に36億円計上”. 産経ニュース (産業経済新聞社). (2014年12月19日) 2017年3月14日閲覧。
- ^ “巡視船3隻を増強配備/宮古島海上保安署”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2015年9月4日) 2017年3月14日閲覧。
- ^ 海上保安庁政策評価広報室「特集 宮古島海上保安部 第十一管区海上保安本部 規制能力強化型巡視船『しもじ』 宮古島海上保安部に配属」(PDF)『かいほジャーナル』Vol. 70、海上保安庁、2017年3月17日、4-9頁。
- ^ “尖閣警備強化誓う 宮古島海上保安部が開所式”. 琉球新報 (株式会社琉球新報社). (2016年10月15日). オリジナルの2017年3月14日時点におけるアーカイブ。 2017年3月14日閲覧。
- ^ “尖閣漁船対応体制を強化/海上保安部”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2016年10月16日) 2021年2月19日閲覧。
- ^ “海保、宮古に尖閣対処拠点整備へ 伊良部が有力”. 琉球新報 (株式会社琉球新報社). (2015年8月28日) 2017年3月14日閲覧。
- ^ “宮古島海上保安部が誕生/巡視船12隻を配属へ”. 宮古毎日新聞 (宮古毎日新聞社). (2017年1月1日) 2017年3月14日閲覧。
- ^ “★宮古島の体制強化で係留施設など整備”. 沖縄建設新聞 (沖縄建設新聞). (2015年9月2日) 2017年3月14日閲覧。
- ^ a b 「小笠原に巡視船「みかづき」配備へ 密漁対策を強化」『産経新聞』産業経済新聞社、2021年2月16日。2021年2月19日閲覧。
- ^ “新巡視船「みかづき」出港 違法操業取り締まり強化”. テレ朝news. 2022年2月4日閲覧。
参考文献
[編集]- 秋本, 茂雄「2008-2018年 進化の10年を振り返る (特集 海上保安庁 : 創設70周年)」『世界の艦船』第881号、海人社、2018年7月、130-135頁、NAID 40021585462。
- 海人社(編)「新型巡視船「しもじ」拝見!」『世界の艦船』第855号、海人社、2017年3月、64-65頁。
- 海人社(編)「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向 : 平成28年度を顧みて」『世界の艦船』第861号、海人社、2017年3月、141-147頁、NAID 40021224513。
- 海人社(編)「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向 : 平成29年度を顧みて」『世界の艦船』第881号、海人社、2018年3月、195-201頁、NAID 40021585590。
- 海人社(編)「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向 : 平成30年度を顧みて」『世界の艦船』第903号、海人社、2019年3月、157-163頁、NAID 40021926537。
- 海人社(編)「海上保安庁船艇の全容」『世界の艦船』第933号、海人社、2020年10月、37-101頁。
- 佐藤, 一也「4サイクルディーゼル機関の技術系統化調査」『国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第12集』2008年3月。
関連項目
[編集]- ウィキメディア・コモンズには、しもじ型巡視船に関するカテゴリがあります。