20241221

 センスの良し悪しはしばしば文化資本に左右されると思われている、と「はじめに」で述べました。文化資本が多いとは、いろんなものを鑑賞したり読んだりしてビッグデータを蓄積していることですが、それは、モデルが非常に多いために、特定のモデルに執着しなくなる、ということでもあります。非常の多くのデータがあり、なおかつ十分にこなれていると、再現志向から降りやすくなる。
 人生の途中から教養を身につけようとして、いろいろ見たり読んだりすると、いろんなものの再現をやりたくなる段階に入ります。たいがい誰でもその段階を経験しますが、そこで停滞するというか、そこに、ある意味で安住してしまうことが多いように見受けられます。そこをどう通過するかが大事です。
「こなれる」というのは、取り込んだデータがそのものとしてモデルになる段階を通過することです。そのときにどういう脳内の処理が行われるのかはわかりませんが(おそらく脳科学でも今後研究されるテーマだと思います)、キーとなるのは、適度な忘却、省略、ある特徴の強調、などだと思います。そして、データ量が多い=文化資本が多いと、特定のモデルに片寄らないわけです。
 というこの説明で、お気づきの方もいるかもしれませんが、これはAIによる生成の話に似ています。AIは、テキストでも画像でも大量のデータがまずあるわけですが、それを「学習」した結果から、新たなものを生成する。その生成物は、もとのデータのコピー(の切り貼り)ではありません。学習とは抽象化であり、大量のデータ(つまり、AIの文化資本!)が、いったん抽象化された上で(技術的に言うと、データの特徴を多次元で数値化することで)、そこから生成する。
 モデルに対して再現志向ではなく、というのは、AIのように「学習」を経た上で、新たなものを生成することです。そのときの学習とは、モデルをより正確に理解しようとする「がんばる方向」ではなく、むしろ、忘却や省略や胡蝶などがポイントなのです。引き算的な学習とでも言えるかもしれない。では、人間においてそれはどう起きるのか。時間をかける、放っておく、しかありません。インプットして、日々をすごしていくなかで、だんだんと脳内でその処理がなされる。それを加速できるかどうかは微妙なところです。しかし、教養を身につけるとは、インプットそのものの再現的応用をすることではない、とわかっておくことには意義があると思います。
(千葉雅也『センスの哲学』より「モデルの再現から降りること、AIの「学習」」)


  • きのうづけの記事に書き忘れたこと。二年生1班のテストの際、Y.Tさんから(ものすごくいまさらであるけれども)誕生日プレゼントをもらったのだった。パンダのしおりとパンダの絵葉書。後者は姪っ子らにあげたらきっとよろこぶと思う。あと、Y.Kさんからは手編みのハンバーガーをもらった。Y.Kさんいわく、「りんごのハンバーガー」とのことで、バンズの部分が真っ赤になっているもの。手のひらサイズなので、ペンケースにつけておくことにしたのだが、ペンケースにはS.Rさんにもらったちいかわのパチモンのぬいぐるみも、R.Kさんにもらった自作のアクセサリーもついているものだから、まるで10代の女子の私物みたいになっている。あと、S.Bさんにあらためて体調についてたずねたところ、授業は今日で終わりであるのでテストの日まで実家にもどって静養するという話もあった。
  • ちょっと前から、以前のようにその日あったできごとを事細かくあたまから順に書くのはやめにして、変わり映えのしないできごと、というよりもむしろお決まりのフレーズで処理してしまうのが常態化してしまっている行動を(「◯◯時起床」やら「◯◯時からウェブ各所巡回」やら「ケッタで外国語学院へ」など)少しずつ端折るようにしているわけだが(なぜ少しずつであるかというと、端折るその行為にかなり強い抵抗をともなうからである)、このやりかたで書くとやはりどうしても抜けが多くなる、書いておいたほうがいいことすら書き忘れてしまうことが多々ある。その日のできごとをあたまからバカのひとつ覚えのように書いていくと、あれもこれもと出来事の細部をどんどんどんどん思い出すというか、もれなく拾いあつめることができるという強みがおそらくある。その強みを捨てるのはしのびないのだが、あえて捨てることで別の域に踏みこんでみたいのだ。
  • 昼は作文。「実弾(仮)」第7稿の続き。シーン24の最後でまたしても麻痺ってしまい、今日もまたダメな日なのかと気分が沈みかけたが、どうせあと数周は改稿を重ねるのであるからと検閲レベルがひきさげた。で、よし! となったので、そのままシーン25もあたまから尻まで一気に通した。これで前半の山場は終了ということになる。
  • 夜、どういうきっかけであったか忘れてしまったが、中国建設銀行の口座に入っている残高を確認するためにアプリをひらいたところ、何度ひらいてもひらいてもすぐに落ちるというのをくりかえして一向に先に進まず、ということは実はずっと前からよくあるアレであったのだが、今日のは特にひどくてほとんど使いものにならなかった。アプリに2023の文字があったので、もしかしたらあたらしいバージョンがとっくにあるのかもしれない、こいつは古すぎるせいでろくに動かないのかもしれないと思い、それで百度でアプリを検索してみようとしたのだが、こちらのスマホに入っている百度もまた、たぶんバージョンが古すぎるのが原因だと思うのだけれどもろくに動かない、ろくに動かないものをそのままにしていたのはこちらは基本的に百度を使うことがほぼないからであるしスマホとなればなおさらであるのだけれども、ところでGoogleのプレイストアでダウンロードしてインストールしたアプリは最新バージョンが発表されたらほぼ自動的に更新される一方、プレイストア外でダウンロードした中国のアプリは中国建設銀行のアプリも含めてそうではない。で、百度の代わりに微信で検索して見つけた中国建設銀行のアプリをダウンロード&インストールしたところ、ついでに应用宝というアプリまでついてきて、というかこれが中国版のプレイストアみたいなものであるらしいということには先日国際交流処で学生が居住許可証用のアプリをダウンロードするにあたってこの应用宝というアプリを使用していたことからも察しがついていたわけだが、今回こいつと再会するにあたって、どうやらこいつをアンインストールせず残したままにしておけばここ経由でゲットしたアプリの最新バージョンの通知も自動的にとどくらしいと判断、それで今回は捨てずにキープしておくことにした。中国建設銀行のアプリも菜鸟のアプリも、それからふだんまったく使っていない支付宝のアプリも、さっそくこの应用宝経由でまとめて最新バージョンに更新した。
  • で、そうやってスマホをいろいろに触っていた拍子に、けっこう前にWISEからメールがとどいていたことをおもいだしたのでなんとなく目を通してみたところ、中国から中国外に送金する際に必要な手数料が最大で70%カットされることになったという内容だったので、えー! マジで! とびっくりした。それで実際にWISEのアプリをひらいてみて確認してみたのだが、たしかにそのようなアレになっているふうだったので、この規則がまたいつ撤回されることになるかわからないことであるし、だったらここらでいっぺん100万円ほどまとめて送金しておこうと決めた。で、送金手続きをはじめたのだが、銀行経由とAlipay経由の二通りの方式があり、前者の手数料が特に爆下がりしているようだったのでそれで試してみたところ、中国建設銀行のアプリの振り込みページに指定の名義と口座番号と金額を打ち込むところまではうまくいくのだけれども銀行名の項目だけどうしてもうまくいかない、というのはWISEの指定する銀行名が選択肢のなかに見つからないからなのだが、しかし先学期は無事送金できた記憶がある。それで過去ログをWISEでサルベージしてみたところ、7月2日づけの記事に以下のようにあった。

 WISEの設定をする。tax recordは無事認証されたが、実際に送金を試してみたところ、銀行送金とさほど手数料変わらんなという感じ。セブン銀行のATMで金をおろす場合、3380元おろすのに手数料が46元で、これは割合でいうと73分の1になる。いっぽう、WISEで3659元送金する場合、手数料は151元で、これは割合でいうと24分の1だ。つまり、ATM経由の三倍手数料がかかる計算になる。WISEを経由せず銀行間で送金する場合、これはどこで得たのかちょっとよくわからんデータなのだが、100万円の送金で手数料が5万円というメモ書きが残っている。割合でいえば20分の1。銀行間での送金には毎回必要書類を提出する必要があるわけだし、それを考えるとやっぱりWISEのほうがはるかに便利で時間も金も節約できることになるわけだが、だからといって決して安い手数料ではない。今回は試しに実際に送金してみたわけだが、基本的には年間限度額ぎりぎりまでATMでおろし、突発的に日本の口座に金が必要になった場合のみWISEで送金するという方針にしたほうがよさそう。

  • 送金に手こずったという記述はまったくない。おかしいなーと思いながらあれこれ試してみたのだが全然らちが明かず、かといってすでに送金プロセスをはじめてしまっているのでここでこいつをキャンセルしてしまうと次回以降送金手数料が増えるというペナルティが生じてしまう。それでもう仕方なく銀行経由ではなくAlipay経由での送金を、多少手数料は高くついてしまうけれどもそれでも以前よりはずっとマシになっているはずであるからと実行することにしたのだが、実行した瞬間に記憶がよみがえった、7月2日もやっぱり銀行経由がうまくいかずAlipayで送金をしたのではなかったか? そうだった気がする! この画面に見覚えがある! 100万円分の送金とは別に、7月2日と同額の3659元の送金もしてみたのだが、手数料は108元だった。以前より43元安くなっている。100万円分というか正確には105万円分の送金だったわけだが、こちらの手数料は1025元で、まあ大雑把に計算すれば100万円送金するごとに2万円余分にかかるということになるのか。以前調べた記録によると、銀行間で直接送金をたのむ場合は100万円の送金につきおよそ5万円の手数料がかかるとあるし、なにより送金のたびごとにクソみたいに大量の書類を提出しなければならないという煩雑さもあるから、それとくらべるとやっぱりWISEを使用したほうが、たとえ割高なAlipay経由の送金でもまちがいなくベターである。ちなみに前回も今回もなぜかできなかった銀行経由の送金の場合、100万円の送金でも手数料はたった5000円ほどですむらしい。
  • ついでなのでクソ古い百度のアプリはアンインストールして代わりに搜索大全という名前の検索アプリをいれておいた(VPNがなんらかのアクシデントで使えなくなった場合や、中国語での情報が必要な場面で使うものだ)。