急遽テレワーク導入!の顛末記

ついにZoom有料プランを導入!「ホストって結構忙しい……」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(5)

はじめてのZoomビデオ会議編

Zoomといえば背景の合成。同僚の一人は宇宙空間からミーティングに参加していた

 緊急事態宣言の発令によってテレワークが推奨されているが、導入にはいくつかの物理的なハードルがある。その一つが 社員の自宅におけるネット環境 だ。奥まった部屋から電話をしていると、声が途切れ途切れになるというのは、よくある話。それが今、ビデオ会議の現場でも起きている。

 ……この記事を書いている時点で、7都府県の緊急事態宣言発令から45日が過ぎた。

 今回は、ついに……ビデオ会議アプリ「Zoom」の導入だ。LINEの音声チャットから始まり、いろいろあったが、やっと上層部で決定されたようだ。

 今回もドタバタしているが、その顛末を、ありのままに書いていきたい。

【今回のハイライト】
ついにZoomの有料プランを導入!
背景を変えられるのがZoomの醍醐味だが…スペックが足りなかった……
ホストは結構忙しい……

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5月14日(木): 39県で緊急事態宣言が解除に会社でZoomを導入することに

 昨日はLINEを利用して、会社の全体ミーティングを行った

 LINEのグループ通話を利用するのは、これが3度目。次も同じ展開かと思っていたら、役員から突然こんなことを言われた。

【役員】 あ、飛田くん、うちでもZoomを導入することが決定したから。

 詳しく聞くと、知り合いから「 ビデオ会議ならZoomの音質が良い 」と聞いたらしい。その理由が映像や音声の圧縮技術にあるとすれば、回線が悪いBさんの家でも通話品質が向上する可能性がある。

 どうやら、昨日ビデオ無しのグループ通話でミーティングを行った際、「顔が見えないと、会話の意図が伝わりにくい」と社長が不安視したのが決め手になったようだ。

 当初は申請中の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」が下りてから、ビデオ会議システムを導入する予定と聞いていた。テレワークが始まって1カ月以上、もうそんなことを言っていられる状況ではなくなったのだろう。

Zoomには基本の無料プランのほかに、いくつかのプランが用意されている

  Zoomは無料アカウントだと1回40分までしか利用できない ため、有料プランの契約をすることになった。主な有料プランは以下の3つ。

・プロ(月額2000円)
・ビジネス(月額2700円)
・企業(月額2700円)

 下に行くほど参加者が増え、最大500人までが1つの会議に参加できるようになる。その他、ダッシュボードの利用、オリジナルURLの発行、招待メールのテンプレート作成などが可能になるが……。 社内ミーティングでの利用ぐらいなら、一番安価な「プロ」で十分 だろう。

 前回にZoomでミーティングをしようと試みたときは、有料プランの契約が足かせになった。これで、ようやく制限時間から解放されそうだ。

5月15日(金): レナウンが民事再生手続きへZoomの有料アカウントを取得する

公式サイトでまずはアカウントを作成

 役員に確認したところ、Zoomで有料プランの「プロ」に契約することが、正式に決まったようだ。

 運用としては「会社の共用アカウントを作成し、社員が必要に応じて申請する」ということにしたいらしい。ライセンスを見ると、「管理者を決め、その人がミーティングを作成する」という運用にすればいいようだ。

 ………というわけで、さっそくアカウントの作成を依頼された。

【飛田】 社長ー、サインインのメールアドレスはどうしますか?
【社長】 サービスのログイン専用のアドレスを役員が管理しているから聞いてみて。

なんで突然に英語で??

 途中で「Are you signing up on behalf of a school? はい/いいえ」と突然、英語で聞かれて戸惑ったが、教育には利用しないので「いいえ」と答える。

 これでアカウントの登録は無事に終わった。

アカウントの設定が終わり、テストミーティングを開始しようとすると、クライアントが自動でダウンロードされた
アカウントを作成した当初は、現在のプランが「基本プラン」となっていた
有料プランの支払いはクレジットカードかPayPalで
プランをアップグレード。後ほど、変更確認のメールが届くようだ

【飛田】 社長ー、クレジットカードの番号を聞かれたのですが。
【社長】 それじゃあ、このカードを使って……

 カードを渡そうとする社長。いやいや、それは駄目だろう。慌てて途中で遮り、代わりに社用カードの番号を入力してもらう。

 これでプランのアップグレードが完了。後ほど、プラン変更確認のメールがZoomから送られてくるようだ。

5月18日(月): 9月入学をめぐり賛否渦巻くはじめてのZoomのミーティング設定

現在のプラン名が「プロ」に更新されていた

 週が変わってパソコンを立ち上げると、Zoomから専用アドレス宛にメールが届いていた。

 Zoomにログインしてアカウント情報を確認すると、無事にプラン名が「プロ」に変更されていた。

 さらに、支払いの設定を見ると、翌月の同日が次回の請求日になっていた。どうやら 月契約が自動更新される らしいので、補助金が下りたら、請求日などを見直す必要があるだろう。

 さて、明日には会社の全体ミーティングがあるので、急ぎZoomで登録を行おう。クライアントアプリから「ミーティングをスケジューリング」を選択。

 「経過時間」を確認すると、無料アカウントの頃は30分までしか選べなかったが、今回は無事 1時間に設定することができた 。素晴らしい。

クライアントを立ち上げて、「+」ボタンからミーティングを作成
「経過時間」が40分以上に設定できた
ミーティングへの招待の文面をコピー。URLやID、パスワードが記載されている

 さらに、 ミーティングパスワードが有効になっているのを確認 する。

 以前はパスワードが設定されていないミーティングに、第三者が勝手にアクセスするケースがあったようだ。うちのような中小企業のミーティングに参加して得るものなど無いだろうが……、それでも守るべき情報はある。

 一通りの情報を入力して、ミーティングの設定は終了。最後に 「招待をコピー」して、社内連絡用のメーリングリストで送信 する。

これで、Zoomでビデオ会議する準備は整った。

5月19日(火):学生への追加支援策を文部科学相が発表「背景」使えず……ちょっとガッカリ……

クライアントを起動すると、バージョン更新の通知が届いた

 はじめてのZoomを使った全体ミーティングの日になった。

 今回はミーティングを設定したことから、私がホストを務めることになる。

 クライアントを立ち上げると、Zoomの更新のリクエストがあったので、急ぎ更新ボタンをクリック。幸い1分程度でアップデートは終了した。少し早めにクライアントを立ち上げておいてよかった……。

 会議の開始まで少し時間があるが、早めにログインしておこう。
有料アカウントでログインし、設定画面でビデオの画角を確認。

 そこで、ふと気が付いて、「バーチャル背景」の設定を試してみる。Zoomといえば、背景を合成できるのは有名な話。部屋が片付いていない人でも、これなら安心して会議に参加できるというわけだ。

「コンピュータが要件を満たしていません」………

 さっそく試してみたのだが、 なんだか合成がうまくいかない 。顔の一部が合成した海の青色に塗りつぶされてしまった。他の背景も試してみるが、顔の輪郭を上手く認識できていないみたい。

 そこで、ふと画面の下を見てみると、「グリーンスクリーンがあります」というチェックがオンになっている。そうか、これが悪さをしていたのか。

 OFFにしようとクリックすると、今度は「コンピュータが要件を満たしていません」とのメッセージが表示された。どうやら、 10年前のMacBook Airではスペックが足りていない らしい。少し楽しみだったので、ちょっとガッカリだ。

ビデオ会議開始!ホストって結構忙しい……
「許可する」アイコンをクリック、クリック、クリック……

 いろいろ試しているうちに会議の時間となり、「待合室」に役員が入ってきた。Zoomでは第三者が不正にアクセスしないように一度、待合室に入れられ、ホストの許可を得てから会議に参加するよう、標準で設定されている。

 さっそく、「許可する」のアイコンをクリックすると、役員の顔が表示された。

 「おはようございます」と挨拶をするうちにも、次々と同僚たちが待合室に入ってくる。なので、 片っ端からマウスでアイコンをクリックする 。ホストって結構忙しいな!

 数十人規模のオンライン授業とか、一体どうしているんだろう?

参加はできているのに、なぜかBさんの映像だけブラックアウトしている

 さて、ここで重要なのがBさんの通話品質だ。

 表示を「ギャラリービュー」に変更して、参加者全員の映像をサムネイルで表示させてみたのだが、……なぜか、Bさんの映像だけ表示されていない。

 えっ、なんで?

 参加者リストを見てみると、Bさんだけカメラのアイコンが有効になっていなかった。慌てて、LINEで確認してみると、今回は少しでも回線状況をよくしようと、有線でネットにつないだノートPCからアクセスしているらしい。

ただ、パソコンがどうも古くて、カメラが機能していないようで……。

【役員】 時間がもったいないので、Bさんはスマホからアクセスしてください。

 公式サイトにシステム要件が記載されていたが、あまり古いマシンだとZoomが使用できないようだ。すぐにBさんが待合室に入り直してきたので、「許可する」のアイコンをクリック。

 気になる音声は、おぉ、かなりいい。LINEの時みたいにこもった感じがないし、映像もスムーズに動いている。これは 以前のグループビデオ通話とは大違いだ

音質向上、映像もクリア! でもハウリングする!?

 トラブルで5分ほど時間が押したが、何とか会議が始まった。「おはようございます」と久々に全員が顔をそろえて挨拶する。

まずは社長から全社員に向けてメッセージ

 まずは社長から話があった。

「いよいよ緊急事態宣言が解除されそうだが、その決定を受けて今後の勤務体制を検討していきたい。会社としては柔軟に対応するので、 要望があれば言ってほしいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんんんん。

【役員】 ……社長、何かハウってませんか?

 そうなのだ、ミーティングに全員が入室したあたりから、時々ハウリングが起きていた。以前より音はクリアに聞こえるのだが、むしろそれが仇になったのか?

 今日は会社に4人出社していたので、それぞれが自分の机からミーティングに参加しており、それも原因になったかもしれない(編注:おそらくそれが原因。ビデオ会議で、何人かが同じ場所から参加する場合、代表者1人以外のマイクをミュートにする、などの対策をしたほうが良いです)。

【役員】 とりあえず、全員もう少しスピーカーの音量を下げましょう。

 その指示に従って、 ボリュームを調整すると、長いこと鳴っていたハウリングがようやく収まった 。これで、ようやくまともな会議になりそうだ。

というより、何人かが近い距離からミーティングに参加するなら、ヘッドセットを使うのが正解かもしれない。

「プラスアルファ」を試すにはマシンパワーが必要

 その後は大きなトラブルもなく、全体ミーティングは無事に終了した。 みんなの顔が見えたことから、参加者一人一人の会話へのレスポンスが、以前よりスムーズだったと思う 。これなら社長も満足してくれるだろう。

ミーティングの終了と同時に、録画データのエンコードが始まる。

 全員が退室したのを確認し、ミーティングを終了する。

 すると、レコーディングしていた録画データのエンコードが始まった。

 実は会議が始まると同時に、Zoomの機能を使ってその様子を録画していたのだが、 エンコード処理とともにパソコンの動作が一気に重くなる

エンコード中はCPUの使用率が94%に、メモリ消費量も跳ね上がった

タスクマネージャーを起動すると、CPUの使用率が100%近くになっていた。そして、進行状況を表すバーが全然進まない。

 これは……かなりの時間、仕事ができなさそうだ。

 結局、 1時間強の録画データをエンコードするのに、約30分が必要 だった。

 ファイルはMP4形式で出力され、容量は600MB程度。SSDの容量が残り少なくなっているので、これを毎回レコーディングするのは厳しい。

会議中のZoomのCPU使用率は15%程度なので、普通に参加するだけなら低スペックマシンでも問題ないのだが

 ただ、録画データとは別に、 サウンドオンリーの音声ファイルも別途作成されるのは、データを共有するのに便利そう だ。背景を合成できることも含め、Zoomはいろいろ気が利いている。……あれこれ試そうとすると、ちょっといいマシンが欲しくはなってくるが。

 緊急事態宣言が終わり、再び出社するようになるまで、あと何回の全体ミーティングをZoomで行うのだろう。ストレスなくコミュニケーションを行うために、これからも環境を改善していきたいと思う。

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※編集部より
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飛田九十九