オーマイニュースサイクル

オーマイニュースというニュースサイトがあって、いろいろと話題になっているらしい。やすやすと2ちゃんねらーにつられたとか内部の人間である佐々木俊尚が異を唱えたとか。いろいろと話題を提供してくれて楽しそうなので口を挟んでみる次第だ。

こういうものにはいろいろな利害関係者がある。思いついただけで以下のとおり:

  • 主催者
  • 編集者
  • 広告出稿者
  • 記者
  • 読者

ここらへんの利害を調整しつつ、うまく正のフィードバックがかかるようにサイクルを作ってまわしていかないとシステムというのは成長・持続しない。

オーマイニュースがとりあえずどんなビジネスモデルで動くつもりだったかは「「ゴミため」から投げつけられた毒饅頭----オーマイニュースは大丈夫なのか(1)」- BigBang に書いてあった。

そのやわなところを図解してみようというつもりである。

まず、Google AdSense以前ののどかな Blog、日記の世界はこうだった。

日記作者 (テキストだけではないので作者とする) と読者がいるだけだ。金もなければ欲得もない。作者が苦労してえられるのは、読者の賞賛、ひいては名誉だけだった。ごくたまにこれを仕事に結びつける人もいたが、それはごくわずかな例外だった。名誉しか得られない世界で頑張るのは、暇な学生か目立ちたがりの変人だ。これをポトラックサイクルと名づけよう。

これも立派なサイクルではあり、それなりには回っていたが社会を巻き込むようにはならない。一部のサブカルチャーでしかない。

それが Adsenseが加わることで以下のように変わる。「G」というのは Google、「広」というのは広告出稿者だ。

ごらんのように、作者が得られるのは空虚な名誉だけではなくなった。「広」が金を出し、「G」が適切に分配することによって「広」は「読」に認知を得る。このサイクルがうまく動いて、Googleが大もうけしているのは周知の事実だ。もちろん「広」も上客を得られ、「作」もいいコンテンツを書けば小金を稼げ、「読」は面白いコンテンツが増えて喜ぶ。四方一両得だ*1。

しかしコンテンツが増えればごみも増える。Googleは目的を持って探すにはいいが「面白いもの」を探すには弱い。そこではてなブックマークのような質を上げる仕組みが生まれてくるのが次だ。

「ブ」は「読」に質を与える。その代わり「G」から小金をもらったりする*2。これでわれわれはブクマを使ってクネクネした有益な記事を読むことができる。これがそれほど人口に膾炙しているかは知らないが、少なくともこの entryを読みに来る皆さんの中では大ヒットでしょう。

で、やっと話はオーマイニュース、というか編集つきニュースサイトになる。そのサイクルはずばり以下だ。

「編」が金の流れに横入りして、「作」への金の流れを制限する。もちろん、これは「読」に与える「質」が上がって、その結果「読」のパイが大きくなり、「作」への名誉が大きくなるか、めぐりめぐって「作」に入る金が多くなれば問題はない。

しかしこのサイクルはブクマサイクルに比べれば脆弱だ。「編」の仕事がだめだめであれば、そもそもこれはサイクルにならない。金の流れは滞り、全時代的ポトラックサイクルに逆戻りだ。

これに対しブクマサイクルは違う。最近衆愚化が言われるはてなブックマークだが、例え「ブ」が機能しなくたっても Googleサイクルは残っている。さらに、別にソーシャルブックマークははてなだけではない。del.icio.us でも何でもいい。替えがきくのである。

そう、オーマイニュースのサイクルに比べれば冗長性があるのだ。一つの部分が腐っても回り続ける*3。システムとして頑丈なのである。

オーマイニュースのシステムも「編」がちゃんと機能すればもちろん当初の目論見どおりにいくかもしれない。それでもサイクルのホップ数が多い分、サイクルをまわすエネルギーが必要*4だというのはあるが。

さて、ではブックマークサイクルが最適なのだろうか? はてブかどうかはわからないが、われわれはやはりブクマされたと一喜一憂しなければならないのだろうか?

そんなことはない。わが国の政府はちゃんと次の手を考えてくれている。皆さんもこの記事を覚えているだろう。そう、これが完成した暁にできるのが次のサイクルだ。

完璧な嘘発見器を用いて、最高の質を全国民にもたらす。これが最高のシステムじゃなくして..あれ、なんかサイクルになってない気がするな?? おかしいな。総務省さん、俺、なんかまちがってる??

*1:Googleは千両得ぐらいしてそうだが

*2:はてなブックマークのモチベーションは金だけでもない気がするが...

*3:もちろんこのサイクルは「G」が切断点だ。ここに関しては頑張ってくれ

*4:つまり「編」も上前をはねる分、「作」にいく金は少なくなる