本しゃぶり

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おっぱいの本16冊

おっぱいの本です。
ポルノは無い。

Scuola di fontainebleau, presunti ritratti di gabrielle d'estrées sua sorella la duchessa di villars, 1594 ca. 04.jpg
By School of Fontainebleau formerly attributed to Frans Pourbus formerly attributed to François Clouet - Artiste anonyme, Public Domain, Link

猫とおっぱい

しばらく前に読んだ本にこのようなことが書いてあった。

PVを取るのは猫とおっぱいなんですよ!
藤代 裕之. ネットメディア覇権戦争~偽ニュースはなぜ生まれたか~

薄々感じていたが、あらためて言われると「確かに」となる。はてなブックマークを見ていても、猫やおっぱいに関する記事のブクマが凄い勢いで伸びていったことが何度もある。我がブログに足りなかったのは「おっぱい」なのかもしれない*1。そう考えておっぱいの本を片っ端から買って読み、記事を書いてみた。

おっぱい強い。まさかブクマが900以上つくとは。

というわけで、PVが欲しければおっぱいについて書くべきである。「ブログを書くのにおすすめな本10選」なんて記事を定期的に見かけるが、誰も本当に読むべき本を紹介していなかった。この記事で紹介する本こそがブロガーが読むべき本であるのだ。

『乳房論』

この記事では多くの本を紹介するが、「どれか一冊」と言われたらこれを推す。

人の乳房に関する話をバランスよくまとめた本である。後に出版された様々な乳房本で引用されるだけあって、神話における乳房から乳癌、さらには豊胸手術と、対象となる話は幅広い。まさしく乳房学の入門書としてふさわしい。

やはり一番面白いのは古代から現代にかけて、人々の乳房観が移り変わっていくところ。人間というものは自分の感性こそが正しいと思いがちであるが、それは情勢やテクノロジーの影響を受けて形作られたものなのだ。このへんの話については先の記事に書いた。

一つ欠点を挙げるなら、対象となるのが欧米限定ということだ。日本が入っていないのは仕方ないにしても、アジアの文化がまるっと抜けている。

『乳房の神話学』

この本も『乳房論』に次いで引用されている。ただ「神話学」に期待して読むと期待は外れる。あとがきにも書いてあるように、「神話学」は直訳であってもこの本の実態を表していない。訳者の言うとおり「実例集」の方がいいだろう。

したがって、この本によって乳房に関する体系的な知識を得られるとは思わないほうがいい。逆に様々な乳房表現ならば、引用された数多の詩から学ぶことができるだろう。ありとあらゆる丸いものは乳房を称えるために使えるのだ。

対象となるのはフランスがメインとなる。この本を読んでいると、理想の形は異なれど乳房を求めるのは皆同じ、といった感想を抱く。実際のところは、乳房を重視しない文化が紹介されないだけなのだが。

『乳房全書』

乳房に関する「情報量」だけで言ったら今回紹介する中で最大なのがこの本だ。説明するよりも見てもらった方が早い。

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乳房だけで676ページ。乳房の百科事典。大きく、分厚く、重いが、 内容はきめ細かい。【図説】と書いておきながら説明文の方がはるかに多いのだ。

ただし「実用性」という観点では評価を低くせざるをえない。本書は乳房に関するあらゆる知識が独立した項目によって構成されているのだが、それがアルファベット順に配列されているのだ。それもフランス語の。そのため、ある項目を読みたいと思っても、それを探すのに苦労してしまう。せめて日本語の索引があれば良かったのだが。あるいは電子書籍化するか。

そのような理由で、どうしてもネタ本的な域を出ない。どうすればこの本を有効活用できるのか。一つ考えたのは千一夜物語方式。毎晩1項目だけ読んでいくのだ。これで700日生きられる。

『乳房の文化論』

乳房文化研究会での講演を元に執筆・編集された本。乳房に関する様々な話題が収録されている。内容はどれも興味深いのだが、元が講演なので一つ一つは短い。そのためこれだけではどの話にしても物足りなさを感じる。自分の興味のある話を探すために読む、というスタンスで臨むのが良い。

個人的に良かった点としては、『乳房論』に無い地域である中国、インド、そして日本における乳房の歴史が載っていること。特にインドは他と違って、女性の乳房を大きく豊かに表現するのが伝統であるというのが面白い。ヨーロッパが古代からルネッサンスにかけて「小さい胸を良し」としていたことを考えると、アレクサンドロス大王は巨乳文化を持ち帰らなかったようだ。

一つ残念なのは画像の小ささ。乳房ネタとなると、当然ながら様々な芸術作品が引用されることになる。ところがその画像は各章ごとにまとめて載せられており、ひどい時には1ページに10枚くらい押し込まれている。いくらなんでもこれではよく分からない。

この記事を書くために乳房文化研究会を調べたら、『乳房の科学』という本が出ていることを知った。

完全に見逃していた。あとで読む。

2018/04/08追記
読んで書いた。

『巨乳の誕生』

日本のメディアにおける巨乳史の本。徹底的にメディアで巨乳がどのように扱われてきたのしか書かれないため、非常に偏った本という印象を受ける。アイドルやAVなどにおける巨乳について知りたい人にとっては必読書だが、巨乳全般について知りたいというのであればあまりお薦めしない。特に女性からの視点が皆無と言っていいのが残念。

その時の社会情勢によって求められる乳のサイズに増減はあるが、概ね巨大化の傾向があると言ってよさそうだ。メディアに巨乳が出るから巨乳好きが増え、巨乳好きが増えたからメディアに巨乳が出るようになる。フィッシャーのランナウェイはここにも当てはまると思われる。

『巨乳はうらやましいか』

『巨乳の誕生』に「女性からの視点が無い」と書いたが、この本はそれを補ってくれる。細身で巨乳という理想のようなプロポーションを持つ記者が、現代 (2007年出版) の巨乳事情アレコレを書いた本である。データよりも興味深い話を読みたい人向け。特に豊胸が強い。

いろいろおもしろい話はあるのだが、一つ気になったのは当時のアメリカで理想とされる乳の形について。彼の地ではグレープフルーツを半分に切ったような乳が理想であり、イラストでもそれが主流であるという。このような形状の巨乳には谷間というものが無く、豊胸手術によってのみ作ることができる。巨乳の谷間を "Y" に描くと "I" が正しいと言われる日本では考えられない話だ。

『おっぱいの科学』

こちらも女性のジャーナリスト*2による乳房の本。乳房にまつわる自身の不安を調べていく形で書かれている。乳がんや母乳の汚染といった話だ。普段は著者の性別についてそれほど気にすることはないが、この本に関しては著者が女性だからこそ書けた本であると思う。

これを読んでいて『人体600万年史(下)』を思い出した。

乳房においても人体の仕組みと現代的な生活でミスマッチが起きているのだ。例えば乳がんになる人は年々増加しているが*3、これは寿命が伸びたことによるものだけではない。初産の高齢化も影響しているようなのだ。この本ではまだそういった傾向がある、原理は仮説という段階なので細かい話はしない。ただこれが事実だとすると、人体に合った社会システムを構築する必要があるなと思う。

余談だが、この本が届いた時に「同じ本のハードカバーと文庫本を注文してしまったか」と焦った。そう思ったのは表紙が『乳房論』と同じく『ガブリエル・デストレとその妹ビヤール公爵夫人』だからである。この記事の冒頭の絵がそれだ。16世紀末に描かれたもので、作者は不明らしい。

『ひとはなぜ乳房を求めるのか』

タイトルから生物的な話かと思ったら表現の話だった。映画や絵画、ポスターなどでの乳房の描かれ方について書いている。「なぜ求めるのか」というより、「どのように描いてきたか」の方が適切に思える。

各章を別の著者が担当しており、題材も全く異なる。一番面白かったのは乳がんの啓発ポスターの話。乳癌検査を受けさせるために、命と乳房を失う恐れをいかにして煽り立てるかが勝負となる。当然、乳癌検査は早めに受けたほうがいいのだけれど、あんまり煽りすぎると今度は乳癌によって乳房を失った人が駄目な例や落伍者のように見えてくる。難しい。

『乳房の文化論』でも思ったが、複数の著者による同人誌スタイルはあまり俺向きではないようだ。興味のある話があっても短く、その分興味のない話がセットでついてくる。何より全体を通じての統一感というものが無い。そのあたりが減点となる。

『我がおっぱいに未練なし』

乳房の本を読んでいると乳がんの話がよく出てくる。特に著者が女性の場合だとなおさらだ。なので乳がんになった人の本も読んでみることにした。

この本は女社長の乳がん日記を加筆した本。44歳の女社長が乳癌と診断され、乳房の片方を切除する。社長をやっているだけあって、判断が早い。読んでいる限りでは、命と比べたら何をためらう必要がある、と躊躇なく切除することを選ぶ*4。ジョブズもこれくらい手術に前向きだったら良かったのだが。あいつも社長だったけど。

そんなわけで「乳がん患者の手記」という言葉から連想されるような悲壮感は一切ない。逆に言えば乳がんとなった時にこれをまず読むと、前向きになれるような気がする。俺は男性なので乳がんになる確率は低いが*5。

ところで夫の希望で蟹を食べる話が2度出てくるのだが、これは "cancer" を食らうという意味なのだろうか。特に解説は無かったけれども。ただ著者は商魂たくましく癌になったことを活用しつくそうとしているので、この本のテーマとするにふさわしい。

『江戸の乳と子ども』

豊乳は資本。江戸時代ではどのように乳が扱われていたのかという話。乳房が性的な意味を持っていなかった時代であるため、当然「乳」と言ったら母乳のことを指す。とはいえ「母乳」というのも現代的な呼び方である。粉ミルクが無かった時代であるため、赤ん坊を育てるには人が分泌する乳汁しかない。現代では母乳育児をするべきか粉ミルクでもいいか、ということでしばしば揉めることになるが*6、この本を読むと選択肢があるだけマシだな、と思う。

母親の乳の出が悪かったり死んだりすると、なんとかして乳を調達しなくてはならない時代である。逆に赤ん坊がすぐに死んで乳が余っている人は乳持ち奉公に出て、乳を売ったという。乳持ち奉公は中々いい金になったので、中には乳を売るために赤ん坊を産み、すぐに殺す者まで出る始末。経済に組み込まれるとはどういうことかがよく分かる。

こうもおっぱい本を読んでいると、様々な理想のおっぱいを知ることになる。だが理想の母乳はこの本で初めて見た。理想の乳の特徴の一つとして、「乳を器や爪の甲に垂らして傾けたとき、速やかに流れてあとに白く残らないもの」がある。何かの参考にするといい。

『乳房はだれのものか』

さらに時間を遡って、日本の古代・中世における乳房観を書いた本。ルネッサンスまでのヨーロッパの上流階級では、妻の仕事は子どもを多く産むことであり、授乳は乳母に任せるといのが基本であった。この本によれば日本においても同じだったらしい。収斂進化*7みたいで面白い。

ところで本書と『乳房全書』は、今回紹介した中で完読を諦めた本である。特にこの本は非常に読みにくい本であった。一つにはこの本で引用される文書が俺にとって馴染みの無いものであるということ。なまじ日本の古典であるがゆえに、文章がそのままで読みにくい。しかもその辺りの教養が無いのも痛い。これが聖書だったらまだ読めた気がする。

二つ目としてすぐに〇〇コンプレックスとかフロイトとか、その他心理学系カタカナ語が出てくるということ。意味がわからないのもあるが、読んでいて「それは裏付けがあるのか」と事あるごとに言いたくなる。こういう本は俺に向いていない。

『女性を弄ぶ博物学』

擬人化コンテンツにまみれているオタクは、森羅万象におっぱいがついていると思いがちである。しかし、現実でおっぱいがあるのは哺乳類だけだ。だからといってリンネはなぜ哺乳類を《Mammalia / 乳房類》*8と名付けたのか。哺乳類の特徴は他にもある*9。俺は今まで気にしたことも無かった。本書は18世紀の博物学界隈を例に、科学というものは当時の社会規範や常識からの影響から逃れられないという話をする。

当時の科学界は白人の男性によって構成されていた。加えて聖書の影響もあったことで、生物の基本形は雄であり、雌はオマケみたいな扱いとなっていた*10。今からすれば笑ってしまう。本来の性は雌型と言えるからだ*11。1/2の確率で間違っているのも面白いが、それが当時は「科学的」な考え方だったということに。きっと俺も別の分野で似たような状況にあるのだろう。

タイトルの「女性を弄ぶ」というのはちょっと本の内容からずれている。内容を反映させるなら「女性を拒む博物学」と言ったところだろうか。それでもまだ半分しか正しくない。拒まれていたのは女性だけでなく、有色人種も、である。こうしてみると、この本のタイトルもまた現代のジェンダー観から逃れられていないように見える。

『哺乳類誕生 乳の獲得と進化の謎』

おっぱいについて学ぶなら、おっぱいを獲得するところから始めるべきだ。ということで哺乳類の進化についての本である。

乳を獲得するまでが長い。タイトルにウソはないが、「そこから始めるか」と読んでいて思った。「乳の獲得」なのだから、爬虫類との分岐から始めるのだと予想していた。実際は有性生殖の解説から始まり、生物の進化の仕組みをゲノムの倍加までふくめてきっちりやる*12。そこから時代を順に進めていき、時には鳥類の解説といったように脇道にもそれる。そして残りページ数が半分を切ったところでようやく哺乳類にたどり着くのである。

乳を獲得するまでにずいぶんと長い時間がかかったが、それは乳の解説が簡素というわけではない。筆者の専門は泌乳生理学である。乳腺の構造や乳汁の成分についてもきっちり書いてある。特に第10章の「泌乳制御の進化」は内容が専門的で、明らかにそこだけレベルが違うと思えた。生物学的な意味で乳を一から学びたい人にお勧めの本であると言える。

『おっぱいの進化史』

複数の研究者によるおっぱいの同人誌的な本。気のせいかもしれないが、おっぱい本はこのような同人誌スタイルが多い気がする。タイトルからすると進化がメインに思えるが、『哺乳類誕生』の方が進化している。この本は乳汁の話がメイン。より生物学的な意味で乳に焦点を当てた本と言えるだろう。

読むと人類とそれ以外の乳汁の成分が異なることが分かる。やはりその動物の特性や生息環境によって求められるものは違うのだ。例えば海洋生物だと脂肪分が多く、人類は糖分が多めである。ロムルスとレムスは狼の乳で育てられたと言うが、ある程度育ってからではないと厳しいと思われる。

『人とミルクの1万年』

人類と動物では乳汁の成分は異なるが、人類は加工をすることで活用してきた。人類のミルク活用の歴史はおよそ1万年にわたるのだ*13。この本は世界におけるミルク活用の結果を紹介したものである。所変わればミルクも変わる。どうしてそのようなミルク文化が生じたのか、主に気候の観点から説明がされていく。ジュニア新書なので簡単に読める。

ミルク文化はミルクの加工方法によって分類することができる。この本の良いところは、著者が実際に世界各地へ調査に行き、どのように加工・利用しているかを取材しているところにある。これにより、様々なミルク文化を体系的に理解することができるのだ。しかしこの手のは読むだけでなく、実際に食べこそ、と思ってしまう。

『ミルクと日本人』

世界に対して日本でのミルク活用はどうなのか。というわけで日本における牛乳の歴史を書いた本である。日本での牛乳活用は奈良・平安時代に作られていた「蘇」が最初だが、これは途絶えてしまった。そのため実質的には開国後から、となる。日本における牛乳の歴史を見ると、文化や産業がどのように発達していくかを見ることができて面白い。

日本における牛乳の特徴的なところは、その栄養価の高さから福祉として活用されたとこにある。学校給食に必ずと言っていいほど出るのはそのためだ。とはいえ牛乳は元々高級品であったため、支給するには金がかかって難しい。それが支給に至る決め手となったのは兵力増強のためだというのだから、笑ってしまう。何か新しいものを取り入れるならば、軍に結びつけるのが手っ取り早い。

終わりに

あるフランス人医師は言った。「おっぱいと一緒なら、およそどんなものでも売れる」と。ならばここで紹介した本もきっと売れるだろう。

おっぱいの本を紹介する記事を思いついたはいいが、紹介する以上、ちゃんと読む必要がある。そして俺は読んだ本をブクログに登録している*14。おかげで直近の乳濃度が凄いことになってしまった。地層はこのように作られる。

ともあれ、ここで紹介した本を読めば、平均的な日本人よりもおっぱいついて詳しくなれるのは間違いない。あなたのブログが乳と猫の流れる地とならんことを。

本をまとめて紹介する記事

*1:猫はサーバルで十分。

*2:この人は普通のサイズ。

*3:日本女性に増え続ける乳がん | 乳がんとは | 乳房再建ナビ

*4:読んでいて『ジョジョリオン』の豆鉄礼が左手を捨てたシーンを思い出した。

*5:男性でも乳がんになることはある。「おっぱいの科学」では海兵隊の基地周辺が燃料漏れによって汚染され、男性の乳がん患者が集団発生した話が載っていた。

*6:『おっぱいの科学』を読んだ後だと母乳汚染も考慮に入れる必要があるため、もっと悩むことになる。

*7:複数の異なるグループの生物が、同様の生態的地位についたときに、系統に関わらず身体的特徴が似通った姿に進化する現象。

*8:直訳だと「哺乳」ではなく「乳房」となる。

*9:体毛、横隔膜、2心房2心室など。

*10:もちろん人間のあるべき姿は白人男性である。

*11:Y染色体にあるSRY遺伝子が無ければ精巣が作られないし、精巣からアンドロゲンとAMHが分泌されなければ生殖器は雌型となる。

*12:これを読めばリンネも雌が基本型と分かるだろう。

*13:と予想されている。科学的に明らかにされているのは8000〜9000年。

*14:honeshabriの本棚 (骨しゃぶり) - ブクログ