本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

さようなら、全てのエヴァーノート

2011年6月10日、Evernoteを使用開始。
2014年9月19日、有料プランに加入。
2024年3月23日、クソみたいなメールが届く。

プラン、廃止

いつも Evernote をご利用いただき、ありがとうございます。このたびは今後の Evernote 登録プランに関する変更についてご案内させていただきます。

お使いの Evernote アカウントは Plus から Personal に移行されました。Evernote Plus など、一般のお客様に数年間ご利用いただけなかった従来の登録プランが廃止となったためです。この変更により、Personal プランで利用可能な機能すべてをご利用いただけます。

今後はAnnualの登録プランが現在の Evernote Personal プランの料金 129.99 USD/Yearに合うように更新されます。この料金は次の更新日である2024/4/19から有効となります。お客様側で必要な操作はございませんが、登録プランは「アカウント概要」でいつでも管理できます。

Evernote の機能が変わらないにもかかわらず料金が上がるというわけではないのでご安心ください。この変更は、ご愛用いただいている製品のパフォーマンスと信頼性の改善を継続するために役立たせていただきます。当社ですでに行っている重要な作業については、こちらのブログ記事をご覧ください。当社製品をご愛用いただいている皆さまにおいては、Evernote の今後にご期待いただければ幸いです。

当社では質の高いサービスを皆さまに提供できるよう今後も邁進してまいりますので、今後とも変わらぬサポートをよろしくお願いいたします。何かご不明な点がございましたら、いつでもお問い合わせください。詳細については、ヘルプセンターでご確認いただけます。

よろしくお願いいたします。
Evernote チーム

俺はEvernoteに長く課金してきた。2014年9月19日より年額45ドルの「プレミアム」に加入。途中でプランを見直し、年額34.99ドルの「プラス」に変更。2023年にプラスは年額49.99ドルに値上がりしたが許容する。他のメモアプリに移ることは考えなかった。

俺がEvernoteに金を支払っている間にも様々な変更があり、そのたびに「改悪」という声が上がっていた。特に2023年12月の無料プラン大幅制限は記憶している人も多いと思う。それでも有料プランに入っている俺は関係ないと、使用継続の意思は変わらなかった。

だが、さすがに今回は無理だ。年額49.99ドルから年額129.99ドルという大幅アップ。「Evernote の機能が変わらないにもかかわらず料金が上がるというわけではないのでご安心ください」なんて書いてあるが、俺からしてみれば「使い方は変わらないにもかかわらず料金が2.6倍に上がる」のだ。こんなの許されるはずがない。

昔ならいざ知らず、現在はEvernoteからの移行先になりそうなメモアプリは多数ある。もしかしたら俺にとってより最適なアプリがあるかもしれない。俺はこれを変化の機会と捉えることにした。

アプリの選択を

ではどのメモアプリに移るべきか。いろいろと紹介記事を読む前に、まずは俺がメモアプリに求める要件をまとめてみた。

  • Must
    • マルチデバイス
    • Mac、Windows、iOS、Android対応
    • クラウド同期
    • 検索機能
    • PDFや画像ファイルの挿入
    • チェックボックス
    • ハイパーリンク
  • Want
    • OCR
    • オフラインノート
    • Webクリップ

こうして整理すると、Mustな要件については大半のメモアプリが該当するのではないかと思う。Wantについてはあったほうが嬉しいが、別に無くても構わない。

以上の要件を踏まえつつ、価格やその他機能を考慮に入れて移行先を選ぶことにした。最初に候補として挙げたのは以下である。

  • Notion:見た目はEvernoteとは別物だが移行先の筆頭。OCRとオフラインノートが無い以外は完璧。無料でも十分。
  • UpNote:Evernoteライク。オフライン対応。有料だが安い*1。
  • Joplin:Evernoteライク。オフライン対応。クラウドを自分で用意したら無料。

要件的にはUpNoteかJoplinなのだろうが、俺はまずNotionを試すことにした。既に使っているためである。他2つはインストールするところから始め、操作方法を学ばなければいけない。対してNotionなら学習コストが0である。

それに情報が一箇所に集約されるというのも大きい。複数のメモアプリを使うとなると情報が分散し、検索性が悪くなる。ならばNotionに一本化するのが正解ではないか。

Notion、微妙

2週間ほど試し、Notionは俺の使い方だとEvernoteの移行先にならないことが分かった。最も使用頻度の多い、日記での使い勝手が悪いためだ。

上の記事で書いた通り、俺は日記をつけている。まず1日の始めに、ノートを新規作成する。それが本日のページだ。本日のページは開きっぱなしにする。画面に余裕があるなら、常に表示させておく。現在はMacBook Proの画面を分割し、一番左端に表示させている*2。

デスクトップ基本配置

本日のページに思いついたことがあったらすぐに書き込む。見た記事に対する意見、ふと思った疑問、新しく分かったことなど。装飾はほとんどせず、使うのはリストとチェックボックス、それにハイパーリンクぐらいだ。あとはスクショを貼る感じ。情報の整理よりも記録を重視するスタイルである。

この使い方がNotionと相性が悪い。理由は認知コストと画面サイズを求めてくるのだ。

まずは認知コストについて。俺はただテキストを入力したいだけなのに、Notionでは不要な説明やボタンが出てきてうっとおしい。

Notionのテキスト入力欄がうっとおしい

マークダウン形式でリンクを貼ったら選択肢が出てくるのも駄目だ。

リンクを貼っても訊いてくる

無視すればいいではないかと思う人もいるかもしれないが、不要な選択肢を提示される時点で駄目なのだ。俺はなるべく頭を使わずに記録したい。「本日のページ」に記録しているのも、どこに書くか考えたくないためである。書くための認知コストを最小限にしようとしているのに、Notionはそれを邪魔してくるのだ。

次は画面サイズ。Notionは多機能なオールインワンアプリワークスペースを謳っているだけあってか、画面を大きく使うことを求めてくる。サイドバーを隠しフルページで開けば、狭い画面でも使えなくはない。しかし使い勝手が最も良いのは全ての要素を開きっぱなしにしてのサイドビューである。

Notionはこう使いたいが場所をとる

Notionはデータベースやプロジェクト管理で使うには強力なツールである。実際、この前の年末年始の旅行管理には初めてNotionを使ってみたが*3、Evernoteよりはるかに楽で驚いた。しかし日記や、ちょっとしたアイディアを記録するには、俺の感覚だと使いにくい。Notionは限定的な使い方に留めることに決めた。

Obsidian、導入

現在、俺がEvernoteからの移行先として使っているのは、マークダウン形式でノートを作成・管理できるObsidianである*4。

触ってみて、ObsidianはEvernote以上に俺の使い方に合っていることに気がついた。正直なところ、もっと早く移るべきだったとすら思っている。Obsidianの魅力は多々あるが、特に重要な要素に絞って書こう。

まず要求仕様を完全に満たしている点が挙げられる。俺の使う端末ならどれでも使えるし、台数制限もない。ノートはマークダウン形式だが、ライブビューにすれば入力した途端にレンダリング状態になるし、画像もドラッグ・アンド・ドロップで挿入できる。OCRやWebクリップはデフォルトだとできないが、プラグインの導入で対応可能だ。

画像をドラッグ・アンド・ドロップするとマークダウン形式のリンクが生成され、画像が埋め込まれる

次に拡張性の高さ。Obsidianはコミュニティによって開発された何百ものプラグインが存在し、それによって必要な機能を必要なだけ追加することができる。俺が入れたプラグインで面白いのを挙げると、ChatGPTやGeminiといった生成AIとの連携がある。例えばこんな感じに。

GitHub - logancyang/obsidian-copilot: A ChatGPT Copilot in Obsidian

Obsidian上で生成AI (Gemini Pro) にブログ記事の構成案を考えてもらった。ここでAIが唐突にNotionに言及していることに気がついただろうか。俺からのプロンプトにはNotionへの言及が一切ないのに。これはAIの回答の最下部を見ると理由が分かる。

ソースとなったノート

AIが回答を生成するのに使用したノートの出典が記されている。つまり自分のノートをベースに、回答を生成してくれるわけだ。Notionも月額8ドルで同じようなことができるが*5、決まったAIしか使えない。一方このCopilot for Obsidianは選択肢が豊富だ。API Keyさえ設定すれば、好きなモデルを金を支払えるだけ使うことができる。

モデルの選択肢

このCopilot for Obsidianは一例に過ぎず、Obsidianは自分の使いやすいように様々なカスタマイズが可能だ。俺の日記の使い方なら、CalendarとThinoを入れることで、Evernoteよりも入力・管理が楽になった。

日記の入力スタイル

ここまでObsidianの使い勝手の良さに焦点を当ててきたが、将来のことについても言及しておこう。今回俺はEvernoteのプラン変更に嫌気が差してObsidianへと移行したわけだが、将来的にObsidianも駄目になるかもしれない。Obsidianの場合はプラン変更よりも、開発停止リスクの方が高いだろう。そうなった場合にどうするか。

アプリが使えなくなっても、ノートは無事なのがObsidianの良いところである。ノートはマークダウン形式でローカルに保存されているので、マークダウン対応のアプリで簡単に開けるわけだ。ディレクトリ構造もアプリで見るのと同じになっている。

ノートの保存状態

現在だけでなく未来の課題も無くなったわけだから、もうObsidianで確定して良い。安心してEvernoteと別れることができる。

さようなら

心のかたち、ノートのかたち

俺にとって最適なEvernoteからの移行先が見つかった。後はこれまで通りの運用をしていってもいいのだが、どうせならObsidianの特徴を活かした「先」へと進みたい。それはリンクの活用である。

Obsidianは他のメモアプリと同じようにフォルダやタグによる管理も可能だが、それ以上にリンクを重視している。

  • リンクを簡単に作れる:[[ノート名]]でノートへのリンクが作成される
  • リンクからノートを作れる:リンク先のノートが存在しない場合、新規にノートが作られる
  • バックリンク先の表示:どのノートがこのノートにリンクしているかも分かる
  • ノート埋込:ただ他のノートへリンクを作るだけでなく、埋め込みも可能
  • リンクの自動更新:Obsidian上で保存先やタイトルを変更した場合、リンクが自動で修正・更新される
  • 添付ファイルも:添付した画像などのファイルも同じ扱い
  • グラフによる可視化:リンクの関係を可視化できる

俺のノートのグラフ (一部)

簡単にリンクを作れて、ノート間の関連性が見えてくる。つまりこれは『知的生産の技術』で紹介されていた「発見のカード」の電子化が可能というわけだ。

「発見のカード」は以下のような書き方をする。

  • 一枚のカードに一つの情報を書く
  • しっかりと完全な文章で書く
  • 内容の一行サマリーとして見出しをつける

書かれたカードを組み合わせたり並べ替えたりして、新しい発想を引き出すというわけだ。

この方法は物理的なカードなら優れた手法だと思うが、Evernoteではやりにくかった。複数のノートをまとめて見るのはやりにくい。なので関連するアイディアは、一つのノートの中にまとめて書き込むことが多かった。

しかしObsidianなら違う。簡単にリンクを作れるし、埋め込み機能によってあたかも一つのノートであるかのように扱うことができる。そのため、「一つのノートに一つの情報」でもまとめて扱いやすい。小さな単位でのノートを作るメリットは大きく、デメリットは小さいのだ。

極めつけはデフォルトで用意されているCanvasである。ノートや画像、Webページなどをまとめて配置・連結させることができるのだ。

Obsidian Canvas - Visualize your ideas

俺は複雑で要素の多いネタの記事を書く時は、まさにこのような図を作って頭を整理していた。だがそれは紙の上でのことである。せっかく色々とEvernoteにメモをとっていても、関連性は別のメディアを使うしかなかったわけだ。それが今はObsidianで完結する。

これができるとなると、ノートは小さく作り、なるべくリンクを貼るようにした方が良い。なので俺はノート作成を以下のように行うことにした。

  • ノートは必ず関連するノートからリンクする形で作る
  • 関連するノートが分からなければ、当日の日記にリンクする形で作る*6
  • webページはwebクリップでノート化してリンクする
  • webクリップする際には自動で日記へのリンクを付ける

こうすることで新たに作るノートは孤立することが無くなり、必ず何かしらのノートとリンクする。それはいつしか、俺の興味関心を反映したネットワークとなるはずだ。これこそ「第二の脳」にふさわしい。

終わりに

今回、長年愛用してきたEvernoteの予期せぬ値上げによって、新たなメモアプリを探す羽目になった。しかしこれは悪いことではなく、むしろチャンスだったのかもしれない。Obsidianへの移行によって、ノートを自由にリンクし関連付けることができるようになったからだ。

これは単にノートを書くだけでなく、自分の思考を深め、アイデアを生み出すために大きな意味を持つ。Obsidianは「第二の脳」たるにふさわしいツールだと言える。たとえObsidian自体が使えなくなっても、培ったノートの作成・管理方法は生きていくだろう。

EvernoteからObsidianへの移行は、単なるアプリの乗り換えではない。自分の知的生産に対する考え方そのものを変える転換点となった。今ではEvernoteの値上げに感謝すら覚えている。これからも自分に合った方法を模索し、ノートと共に歩んでいきたい。

現在入れているコミュニティプラグイン

他におすすめがあったら教えてほしい。

  • Obsidian Calendar Plugin:Obsidian用のシンプルなカレンダーウィジェット。
  • Obsidian Copilot:Obsidian用のChatGPTを使ったCopilot。他のAIも使用可能。
  • Obsidian Hover Editor:ページプレビューホバーを機能的なエディタインスタンスに変換する。
  • Obsidian Iconize:Obsidianで任意のものにアイコンを簡単に追加。
  • Obsidian Image Toolkit:画像を表示するためのObsidianプラグイン。
  • Obsidian Omnisearch:OCRとPDFの索引付けをサポートするObsidian用の「ただ動く」検索エンジン。
  • Obsidian Outliner:Workflowyã‚„RoamResearchのようにリストと作業を行う。
  • Obsidian Read It Later:Webクリップして後で読むためのObsidianプラグイン。
  • Recent Files Obsidian:最近開いたファイルのリストを表示する。
  • Remotely Save:S3、Dropbox、OneDrive、webdavをサポートして、ローカルデバイスとクラウドサービス間でメモを同期する非公式のObsidianプラグイン。
  • Obsidian Smart Connections:Obsidianでメモと対話し、リアルタイムで最も関連性の高い情報を確認。整理してインタラクションを取りながら、OpenAIのChatGPT、GPT-4およびEmbeddingsを利用。
  • Obsidian Text Extractor:画像(OCR)およびPDFからテキストを抽出するための(補完的な)プラグイン。
  • Obsidian Thino:ノートのすべてのデータからクイックキャプチャを行うObsidianプラグイン。
  • Obsidian Various Complements Plugin:IDEの自動補完のように単語を補完するObsidianプラグイン。

Notionも使い続ける

*1:月額100円 or 買い切り3500円。

*2:右隣にあるCO2モニターについて知りたい人はこれを参照。二酸化炭素を減らすと部屋が寒い (冬なので) - 本しゃぶり

*3:フランス旅行計画のガントチャートを作りたい|honeshabri

*4:「あれ、UpNoteかJoplinじゃないの?」と思った人もいるかもしれない。実は俺もこの記事を書くまで、自分の間違いに気がついていなかった。検索履歴を遡ると、俺は一度Joplinを本格的に検討していた。だがNotionを試すことにし、合わないと分かったわけだ。そこで次にJoplinを試すはずが、何かの間違いでObsidianをインストールしたようである。俺もなぜObsidianを入れることになったか分かっていない。

*5:正確には年払ではメンバー1人あたり月額US$8、月払ではメンバー1人あたり月額US$10になる。Notion (ノーション)の料金プラン: フリー、プラス、ビジネス、エンタープライズ、AI

*6:だいたいノートを作る前に関連するアイディアを日記に書いていることが多いので。