hituziのブログじゃがー

あべ・やすし。最近は ツイッターばー かきょーる。

わかちがきは、発明されたものだ。

I am a student.


ああ、英語を かくのは いやなものです。「アイ アム ア ステューデント」。「わたし は 学生 です」。

ってことですね。言語音は、連続しているもので、アイとアムとアとステューデントの間に、音のきれめが くっきりあるわけではありません。けれども、文字で表記するときには、ことばの きれめにスペースを いれています。これを日本語では「わかちがき(分かち書き)」と いいます。


世界の言語のなかで、この わかちがきを しない言語は日本語と漢語(いわゆる中国語)ぐらいだと いわれています。もちろん、ほかにも いくつか あるはずですが、わかちがきを しない言語としては、日本語と漢語が代表格です。


とはいえ、日本語だって わかちがきされることも あります。小学校の教科書や日本語点字では わかちがきを しています。語学書としての日本語の入門書でも、よく わかちがき されています。


わかちがきのルールは、英語とドイツ語を くらべてみても、ずいぶん様子が ちがう印象が あります(ドイツ語FAQ - ドイツ語で一番長い単語って何ですか?)。英語とスワヒリ語だって、ちがっています(スワヒリ語入門・文法手帖)。

FAQ(ファク)とは、「よくある質問」という意味です。


言語学の専門書に『「語」とはなにか-エスキモー語から日本語をみる』というのが あります。むずかしい本です。これを みると、言語学でいう「語」というものが、よく わかるというよりは、よく わからなくなります。


ともかく、わかちがきの はなしをします。


英語は、スペースで くぎりながら表記するのが あたりまえだと おもっていませんか? もちろん、いまでは「あたりまえ」なのですが、これが発明され、導入されたものだということは、あまり しられていないように感じます。


ここで、『読むことの歴史-ヨーロッパ読書史』大修館書店という ぶあつい本を ひらいてみます。さくいんの630ページに「分かち書き」という項目がありました。124、132、157、158、163、164、179、180、184ページで「分かち書き」について かいてあるようです。さっそく みてみましょう。


 アイルランドの写字生たちは、ラテン語のテクストを筆写するにあたって、元にした写本で行われている「連続記法」を棄てた。彼らが採用したのは、文法学者の品詞分析の方法から借用した形態論的な分割であって、つまり彼らは「分かち書き」を始めたのである。
124ページ。


…読書の歴史にとっての12世紀は、とりわけ分かち書きによるテクスト形式が継続して用いられ、定着をみた時代であった。
157ページ。


 分かち書きによって読者と書物の距離が縮まったばかりでなく、著者と原稿の距離もまた縮まった。…中略…2世紀末から一般的な書き方になっていた「連続記法」 scriptio continua は実践が難しかったために、古典古代の末期では著作家はほとんどの作品を口述していた。分かち書きが始まると、自筆の筆記に対して急速に関心が寄せられるようになった。
163ページ。


ラテン語では当然だった機能語の分かち書きは、1500年頃になってもロマンス諸語においては実行されていなかった。
179ページ。

引用は、これくらいに しておきましょう。さくいんには「連続記法」という項目も あります。あわせて ごらんください。連続記法というのは、よく つかう日本語で いえば「べたがき(べた書き)」です。

日本語点字は 石川倉次(いしかわ・くらじ)によって1890年に考案されました。もう118年もの間、一部で日本語は わかちがき されてきたということです。


興味ぶかいことですが、日本語を学習した韓国出身者は、日本語を かくとき、さも当然かのように わかちがきして表記します。おなじく日本語を学習した中国出身者は、日本語を かくとき、完全に「べたがき」して かくことが ほとんどです。この ちがいは、ものすごく はっきり でます。

韓国を 旅行してみると、すぐに みつかりますが、観光地にある案内文に 日本語が かきそえてあることが よくあります。その日本語文が わかちがき されているのを 何度も みたことが あります。それくらい、わかちがきに なれてしまえば、それが当然であり、ふつうになるということでは ないでしょうか。


つまり、わかちがきは「なれの問題」ということです。


日本語に わかちがきは必要ないという意見をよく みます。「必要ない」というのは、「してはならない」を意味しないと おもうのですが、どうでしょうか。漢字や ひらがなが連続してしまうときには、わかちがきを してみても、いいと おもいますけど。一般的には、わかちがきは「絶対にしないもの」なんですね。不思議です。


ですが、これまた興味ぶかいことに、チャットでは、わかちがきは一般的なんです。あたりまえのように わかちがき しているひとが、たくさん います。 すでにというか、いつもというか、日本語の表記は、変化しつつあるのだと おもいます。


とにかく、わかちがきは発明されたものだということを、わすれないでくださいまし。