ばらいろのウェブログ(その3)

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緊急:クィア学会の存続が危ういです!

【概要】

 クィア学会の研究大会と総会を今週末に控え、11/19に配信された「クィア学会ニュース No.57」において、クィア学会幹事会*1が学会の規約を守る意志がないことが明らかになりました。クィア学会の規約では「総会の決定は、出席者の総意による」と明示されているのですが、この【「総意」を「過半数の賛成」と解釈し直し、本日の総会から多数決で表決を行うこととします】との通告が、「お知らせ」として「クィア学会ニュース No.57」で会員に通知されました。

 そもそも「総意」を「過半数の賛成」と解釈し直す事自体が日本語の理解として無理なことです。またそもそも「会員の一部集団」でしかない幹事会が、規約の解釈を独断で変更するなどということが、許されるはずもありません。実は幹事会は、これまで、会員に無断で学会報告を日本語に限定するなど越権行為を繰り返してきました。それがここに来て、規約そのものを守らない、規約の解釈は幹事会が勝手に決めると宣言するところまできたのです。
 このままでは、学会の継続があやぶまれます。執行部である幹事会が規約を守らず、学会内民主主義が放棄されてしまっては、多様性を最大限に尊重しながら、実際に学会を継続運営し、クィア・スタディーズにとって生産的な対話の場を確保することは不可能です。
 今回の件は、今後クィア学会が存続していくことが出来るかどうかに関わる極めて重要な案件です。幹事会の行動が規約の無視と民主主義の放棄にまで至りましたので、ことの重大さに鑑み、この問題を広く公開していくことにしました。クィア学会に心を寄せる皆さん、是非、幹事会に「お知らせ」を謝罪とともに撤回するよう、声を寄せてください。外部の人のアドバイスのほうが、幹事会が冷静さを取り戻すためには、よいかもしれないのです。


【経緯】

 クィア学会の総会では、毎年たくさんの問題点が具体的に指摘され、幹事会や学会のあり方が会員から厳しく批判を受けてきました。しかし総会でも十分な時間をとって話し合いが行われたことはなく、会としての総意が形成されなかったので、これまで幹事会から提案されてきた活動報告は、一度も可決したことがありません。そもそも幹事会自体が、総会で出された意見や話し合いの経緯をまじめに受け止めようとせず、自身の権威主義的態度を改めて来なかったことこそが、活動報告の否決の理由です。
 そういったこれまでのやり取りや問題点は、以下の資料から読み取ることができます。


クィア学会の中にある人種差別と権威主義
クィア学会 第3回総会における配布資料


 しかしながら幹事会は、自身のあり方を振り返る姿勢が全く見られず、逆にパワーゲームに走りました。つまり、会員の中にある意見の不一致を、当事者間の話し合いの積み重ねで合意を形成しようとするのではなく、「自分に都合の悪い意見」を無視して議題を可決できるように制度を変えようとしているのです。
 以下は、「クィア学会ニュース No.57」からの抜粋です。

<議題1の規約について解釈変更のお知らせについての事前配布資料>
>規約 第17条 (表決)総会の決定は、出席者の総意による。


この規約条文につきまして、「総意」を「全員一致」とするこれまでの総会の解釈慣行は不合理ではないか、という会員からのご意見がありました。そのご意見をもとに、幹事会で議論した結果、「総意」とはあくまで、議論を尽くして納得ずくで学会の運営を行なって行こうという精神の表現であり、その精神を踏まえつつ、多数決で総会の表決を行う、という解釈に変更することが妥当である、という判断にいたりました。


議論が熟していないものについては、決をとらず議論を継続していくことは当然ながら、決をとる必要がある際には、現状の全員一致制では、「大きな少数の声」によって、「より小さな少数の声」がかき消されかねません。声の大小にかかわらず各会員を平等に扱うことが必要であり、そのためには、決定は多数決によるべきです。そのプロセスで出された意見は、少数意見も含めて、会員内で共有していくことで、継続的な学会運営のなかで、「小さな少数の声」も含めて、多様な意見が聞こえている学会となるでしょう。


そもそも、既存の「性の規範」から外れた様々な表現、実践、運動、研究が交流し、クィア・スタディーズの発展に寄与しようとするクィア学会の会員にとって前提となるのは、個々人の多様性を尊重しあうことのはずです。それは、時として自分とは全く異なる意見を認め、それに従うことであり、また、自分の意見が総会での決と同じである場合は、自分の意見とは異なる様々な意見を持つ人々が所属している学会であることを常に認識することです。目指すべきは、「全員一致」ではなく、多様性を最大限に尊重しながら、いかに実際的に学会を継続運営し、クィア・スタディーズにとって生産的な対話の場を確保するかです。


これまでの総会では、「総意」を「全員一致」と解釈したため、数多くの議案について、議決できないままとなっています。このままでは、学会の継続があやぶまれます。


以上の理由から、「総意」を「過半数の賛成」と解釈し直し、本日の総会から多数決で表決を行うこととします。


(クィア学会ニュース No.57  2012年11月19日)

【問題点】

 文章や論理構成自体がとても稚拙なので、様々な意見を持った人達で組織的に活動することに不慣れな人が、思い勇んでやっちゃった的なものであることは明らかです。しかし狭い限られた意見の人達だけで議論していると、客観的に見たらありえないような内容のものでも、出てきてしまうことは残念ながらよくあります。
 まず、幹事会に規約の解釈を決める権限はないので、そもそもこの「お知らせ」は無効です(このことが明示的に確認されない限り、総会ではいかなる議案も話し合いに入ることはできません。)。ですので、その内容を検討する必要はないのですが、幹事会のどこに問題があるのかを考えるために、少なくとも以下の論点は問題として外せないと思います。


1:合意形成のための努力の放棄
 幹事会は、会内に実際に意見の相違があるという事実に向き合っていません。幹事会は、意見が異なるものどうしで意見交換したり、意見が異なる者と合意を形成するための努力を一切おこなっていません。むしろ逆に、どのようにして「自分たち幹事会を批判する会員」「幹事会と意見が違う人」とコミュニケーションを取らないで済ませるか、ばかりを考えています。だから、これまで一度足りとも「幹事会を批判する会員」と直接コミュニケーションを取ろうとせず、代わりに総会の可決要件の変更を出してきました。
 これは、多様性や意見の相違に向きあう練習を積んでいないということでもあるのですが、民主主義の基本を蔑ろにしているということを意味します。


2:独裁=民主主義の放棄
 会員が(幹事会も会員の一部をなします)現在の規約に問題があると感じたり、規約の解釈を変更すべきだと考えることはありえます。ではその場合にはどうすればいいのでしょうか。
 まず最初に、総会に対して、【規約の改正提案】や【規約の解釈を変更する提案】を議題として出せばいいのです。しかし幹事会がしたことは「私は現在の規約解釈に問題があると考えます。だから私が規約の解釈を変更しました。私の解釈に従いなさい」と会員に通告することでした。これは、非常にわかりやすい独裁です。「総意とは、ひびのの意見のことである。そのように解釈を変更したので、従いなさい」とひびのが言っているのと、何一つ変わりません。どうしてそんなことが出来るの?会内民主主義を放棄し、幹事会独裁に移行するとの宣言は、私には冗談にしか感じられないのですが、幹事会は真面目なのです。


3:幹事会の越権行為の常態化 一般社会では、執行部や会の代表が会の意見を決めることが、まるで当たり前のように行われています。しかし、そういった権威主義は「クィア」には似合いません。だから、クィア学会では規約で以下のように決めています。


総会は,本学会の最高の意思決定機関として,本学会の活動に関するすべての事項を決定する.(第15条)
幹事会は,本学会の執行機関として,本学会の活動に関するすべての事項を提案し,総会の決定を執行する.(第19条)


 つまり、幹事会は「草案作成機関」「提案機関」でしかなく、すべての決定は総会で行うことが基本なのです。これは、一般で行われていることとは違う流儀であることには、注意が必要です。
 しかし残念ながら、これまでの幹事会は、一般社会と同じやり方を会員に押し付けてきました。幹事会の越権行為は、既にクィア学会では常態化してしまっています。そしてだからこそ、総会で毎回厳しい批判を受けてきたのです。
 今回の幹事会の「お知らせ」もこの延長線上にあります。そもそも幹事会には何の決定権もない、ということを、幹事会自体が受け入れていないのです。だからこそ、根本的にこれまでのあり方を振り返り、これまでのやり方とは全てをがらっと変える(規約どおりに運営する)ということが、必要なのです。


4:解釈が日本語的に無理
 規約において「総意」と書かれていたら、それはとは全会一致のこと。全員が明示的に賛成する必要はなく、明示的な反対がでなければ「総意が得られた」と言える。もし多数決で決めるのであれば、可決要件を明示する(「出席者数の過半数」「会員の2/3」など)必要がある。
 こういったごく普通の日本語の解釈を勝手に変えてしまうと、規約が規約としての体をなさなくなる。

【オマケで添削】

【現状の全員一致制では、「大きな少数の声」によって、「より小さな少数の声」がかき消されかねません。】
 「そのような危惧がある」という程度のことで、勝手な解釈変更ができるというのは無理があります。ここでは、ちゃんと、【「大きな少数の声=ひびの」によって、「より小さな少数の声」がこれまでかき消されてきたと、幹事会としては考えている】と言い切らないと、論理的には破綻しています。
 しかしそう言い切ると、ではいつ何がと具体的に検討する必要性が生じ、実際にはそのような事実はないことが明らかになるので、危惧の指摘しかできていないのです。


【時として自分とは全く異なる意見を認め、それに従うことであり】では、幹事会はひびのの意見に従ってくださいね。自分が人に従うことは想定せず、他者が自分に従うことだけ想定してますね。さすがですw


【これまでの総会では、「総意」を「全員一致」と解釈したため、数多くの議案について、議決できないままとなっています】
 単に事実と異なります。これまで数多くの議案は、実際に採決された上で、規約に従って否決されてきたのです。「否決」というのが総会の意志であり、クィア学会の意志であり、議決の結果です。否決という結論がちゃんと出ているのに、その事実に向き合ってこなかった幹事会のあり方がよく分かる文章です。


【このままでは、学会の継続があやぶまれます】
 これも、そんな事実はないのに、なに言っているんだろうw


【提案】

 幹事会の行動が規約の無視と民主主義の放棄にまで至ったので、「お知らせ」が撤回されるか、無効であることが明示的に確認されない限り、総会ではいかなる議案も話し合えません。しかし、そこでもめていては、ホントに総会が破綻して終わりです。(もし仮に本当に幹事会が自分たちの解釈を会員に押し付けたら、総会議決の無効確認訴訟すら実際に提訴されかねないということ、ホントにわかっていないんだよね、おそらく。)
 幹事に面識がある人も、ない人も、ぜひ幹事会に対して、不当な「お知らせ」を自ら撤回するよう働きかけて下さい。閉じられた狭い人間関係の中だけで議論してきて、客観的に物事を見る事ができなくなっているので、外部からの意見はとても重要です。
(これは、幹事会だけではなくクィア学会全体の雰囲気としても言えることです。学会内部にこれだけ越権行為と権威主義とレイシズムがはびこっているのに、会員に危機感がなさすぎです。本当に信じがたい。)


※なお、総会では、納得の行く釈明と真摯な謝罪が幹事一人ひとりから聞けない限り、現幹事が提案者となる予算案を含むすべての議案に、私は明示的に反対します。自分の間違いを認められない者には幹事を続ける資格が無いので、幹事の辞任を求めます。また、開き直った幹事に対しては、今後も継続して一人ひとりの責任を公的に追及し続けます。


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緊急:クィア学会の存続が危ういです!


 

*1:ちなみに、現在の幹事は以下の人達です:向井 大策(上野学園大学教員)・池田 弘乃(東京大学大学院)・高原 幸子(大学非常勤講師)・長島 佐恵子(中央大学教員)・前川 直哉(京都大学大学院)・黒岩 裕市(大学非常勤講師)・野田 恵子(大学非常勤講師)・溝口 彰子・大橋 洋一・菅野 優香・佐伯 順子・鹿野 由行 第4期 (2011.11.13-) の役員