ばらいろのウェブログ(その3)

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鳳鳴 ー 中国の記憶

鳳鳴(フォンミン) ー中国の記憶
FENGMING A Chinese Memoir
中国/2007/中国語/カラー/ビデオ/183分
監督:王兵(ワン・ビン) Wang Bing
ひとりの老女が雪道を歩きアパートへ向かう。赤い服を身にまといソファーに腰を掛けた彼女の名は、和鳳鳴(ホー・フォンミン)。地方の新聞記者として働いて結婚したが、同じく記者である夫の執筆した記事が原因で、反革命分子のレッテルを貼られ、ふたりは別々の強制収容所へ送られてしまった……。1950年代以降の中国で起きたふたつの粛正運動で数々の迫害を受け、1974年に名誉回復するまでの、約30年にわたるひとりの女性の壮大な物語が綴られていく。9時間の超大作『鉄西区』で本映画祭2003大賞を受賞した王兵(ワン・ビン)監督の最新作。
http://www.yidff.jp/2007/program/07p1.html#t2

 ほとんどの画面がカメラ固定で、ひたすらソファーに座った和鳳鳴さんがしゃべり続ける映像。映像技術的にはおそらく最悪で冗長以外の何者でもないのだけれど、でも(時々寝たりすることがあるとはいえ)その話にずっと引き込まれていくから不思議。要は、帰省して親や祖父母の長話を聞かされているのと同じ構図なんだけど、その話のうまさというか、内容の濃さ・ダイナミックさというか、話し手の和鳳鳴さんのリアルさを見せつけられる感じ。
 中国というと「一党独裁」とかのイメージもあるけど、実際には各現場・各個人ごとでそれぞれの判断や選択や行動があることや、でも共産党の方針が実際に個々人の生活に影響していることや、最終的にはコネと人脈で生きていかざるを得ないことや、そんな、実際の人々の暮らしが分かる感じがよかった。あと何より社会なり都市なりといった範囲に置いて「食べるものがないこと」「飢餓」という事が実際にあり得ること、そういう問題を一切考えずに生きていられる今のわたしの生活が実はものすごく例外的で恵まれた状況なんではないかということに、改めて思いを至りました。