リリース: 2011/6/12
分類: VOCALOID
ジャンル: ロック


今回紹介させていただくのは、otetsuさんのボーマス16新譜『Carnival』です。
otetsuさんの得意とするジャンルは……何だろう、ゴシックロック?
マイナーコードをバリバリ使った疾走感溢れるロックに、悲観的で、厭世的で、自虐的な歌詞を載せた、
なんとも言えない退廃した雰囲気が、ひたすらかっこいい。

ニコニコ動画での投稿歴は3年以上に及び、代表作としては『喪失モノクローム』『星屑ユートピア』
『迷的サイバネティック』『Child's Garden』『ブラックゴールド』辺りが挙げられるでしょうか。
同人活動も2年以上展開しており、今作でフルアルバムが5作目を数えます。
その中でも特に今作は、アグレッシブな曲が詰め込まれていて聴き応え抜群です。
さらにボーカルも、VOCALOIDの「巡音ルカ」「GUMI」の2人のみに絞られているため、
アルバム全体が艶めかしい空気で統一されています。

現在「アニメイト」「Morge Music」「とらのあな」で委託販売がされており、また「KarenT」レーベルからいろんなサイトでダウンロード配信がされています。
おそらく店舗側のマージン率の違いからか、「Morge Music」の価格がちょっと安くなっていますね。

ニコニコ動画でクロスフェード動画が公開されています。
 
 

そして、『Carnival』と同時に頒布された『Another』も要チェック。
otetsuさん自身がボーカルを取った、全7曲を収録したアルバムです。
元々バンドのボーカルだったらしく、かなり渋い声をされています。
 → 『【ボーマス16/otetsu】Another【クロスフェード】

以下、各曲の紹介に移ります。



■Tr.1 「カーニバル」
……ボーカルはGUMI。このアルバムのタイトルトラックです。
ねちっこいシンセがノリノリでマイナーコードを刻むギターに絡む様は圧巻。
歌詞の内容も実にホラー気味で、ふっと暗転する瞬間は背筋が凍ります。
ニコニコ動画でPVが公開されているので、絵や歌詞字幕を凝視しながら鑑賞するのもいいかもしれません。
 → 『【GUMI】 カーニバル 【オリジナル】

■Tr.2 「Hell-o」
……ボーカルはGUMI。
Tr.1とは対照的に、ストレートに駆けるロックで一気に加速します。
この曲に限らず、非常にエグい、ともすればグロいとも言える歌詞を、
ロックの縦ノリと歌詞のリズム、そしてボーカロイドの甘い声色でオブラートに包み、気持ちよく聴こえさせてしまう。
その手腕でotetsuさんの右に出る人は居ないようにも思えてしまいますね。

■Tr.3 「綱渡り」
……ボーカルは巡音ルカ。
4thアルバム『LENS』にも収録されている曲ですが、こちらは少しリメイクを施したver.になります。
この曲もニコニコ動画にPV付きで公開されていて、好評となっています。
 → 『【巡音ルカ】 綱渡り 【オリジナル・PV】

■Tr.4 「Falldown」
……ボーカルは巡音ルカ。
ここまで聴いた、あるいは当記事を読まれた貴方なら、歌詞でひたすら連呼される「落ちろ落ちろ」が、「堕ちろ」に見えてしまうかもしれません。
ですが、それはきっと気のせいですので、安心してくつろぎながら聴いてくださいね(微笑) 

■Tr.5 「迷子忘れ」
……ボーカルは巡音ルカ。
迷子になり、迷い込んだ先で「知らない大人」に次々と汚され、しまいには自分が迷子であったことも忘れてしまう。
こうして埋没してゆく姿は、一体誰を指して歌っているのでしょう。

■Tr.6 「チョコレート」
……ボーカルはGUMI。
今年のバレンタインシーズンに公開された曲ですが、そこは流石otetsuさん。
ありがちなラブソングになどなるはずもなく、チョコレートを欲して苦悶の表情を浮かべながら、
唾液を振り撒き歌う姿が脳裏に焼きつく。
公開当日はなかばネタ曲扱いされて「これは酷い」とか言われてましたが(多分)、
こうしてアルバムの文脈に組み込まれると、何とも吐き気の催す(褒め言葉)装いがいっそ美しいですね。
大好きです。いや本当に。
ちなみに、この記事書いてるヤツが、このアルバムで一番好きな曲です。

……ついでに言うと、この曲はotetsuさんご本人が歌ったバージョンもあるので、
こちらのCDで是非聴いてみてください。アニメイトやiTunes Storeで買えるよ!

ニコニコ動画で公開されたver.とは、歌詞とかが少し違うようです。
 → 『【GUMI】 チョコレート 【オリジナル】

■Tr.7 「実際問題。」
……ボーカルは巡音ルカ。
歌詞の言葉選びが一番好きな曲でもあります。熟語って高速リズムと相性いいですよね。
 
■Tr.8 「ペテン泣き虫」
……ボーカルはGUMI。
「嘘つきのフリしてごめん」の歌詞でゾクッと来ました。このひねくれ具合が実にたまらないですね。

■Tr.9 「錆びついたメリーゴーランド」
……ボーカルはGUMI。
このアルバムで唯一高速でないトラック。アルバムの最後にして、ようやくゆっくりな曲が入りましたw
冒頭の歌詞から、Tr.1 「カーニバル」の続編とも捉えられそうですね。




……

………………総評。

記事冒頭でも書きましたが、全体的にアグレッシブな曲が多く、
最初から最後までフルスピードで突っ走る感覚がたまらない一枚です。
otetsuさんは普段から高速な楽曲を多く手掛ける方ですけど、今回はいつもに増して徹底してる、という意味で。
また、これも記事中でちょろっと触れましたが、歌詞のエグさがいつもより更に際立っていますね。
グロさも交えてきており、こうなるともはやホラーのレベル。
歌詞の意味を深く考えながら聴いてたら、その日の夜は眠れなくなること請け合いです(※請け合うな

また、ボーカルを「巡音ルカ」と「GUMI」に絞ったのは名案でしたね。
otetsuさんは他にも「がくっぽいど」や「初音ミク」等、たくさんのボーカロイドを所有しており、アルバムにも必ず3~4人のボーカロイドを起用しています。
しかし、このアルバムの良さである「かっこよさ」と「艶めかしさ」を目一杯表現できるのは、必然的にこの2人しかいなくなる、という判断は正解で、アルバム全体をループすればするほど、そう思えてきます。
ボーカルの声色がぶれないことと、曲調にもバラつきがないことが、アルバム『Carnival』としてのキャラ立てを一層強めているのでしょう。

9曲31分と、少し短めのアルバムではありますが、全体のまとまりの良さと音・詞の濃さから、リスナーの想像を越えるほどずっしりとした、聴き終わった頃には満腹を通り越して「もう勘弁して下さい」と土下座も辞さないような、そんな素敵なアルバムに仕上がっているのです。いやマジで。

最後になりましたが、このアルバムのジャケットイラストはriria009さんが手がけたもので、otetsuさんのCDほぼすべてのジャケットは、この方のお仕事です。見よ、この眼力。
そして、そのジャケットイラストは実は2種類ありまして、Diaboloさんのデザインにより、それぞれ違うかっこよさを持った絵がリバーシブルな仕様になっているのです。どんな絵かは公式サイトをチェケラ