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「プログラマーは将棋ソフトの思考を把握していない」 真鍋大度と山本一成がアップルストア銀座で語る



▽ 4/2(木)アップルストア銀座でトークイベント開催!|イベント|日本将棋連盟

â–½ http://www.shogi.or.jp/topics/event/2015/04/post_1194.html

「最強の将棋ソフト」開発者の素顔

イベントは、真鍋大度さんと山本一成さんの紹介から始まりました。真鍋大度さんは、1976年生まれのアーティスト・プログラマーです。サカナクションの楽曲からリスナーの好みを学習しつつ無数のリミックスを生成する「SYMPHONY」や、Perfumeの楽曲の再生数や聞かれている位置の情報を取得して視覚化するアプリ「Perfume Music Player」などのプロジェクトで知られます。真鍋さんは、「自分はアーティストかつプログラマーであり、データを集めて表現に使っているが、『人工知能』と呼べるところまで活用するのはこれからだと思う」と語りました。

山本一成さんは、1985年生まれのプログラマーで、将棋ソフト「Ponanza」を下山晃さんと2人で開発しています。「Ponanza」は2013年3月、将棋ソフトとして初めて現役のプロ棋士に公の場で勝利しました。2014年に行われた「第3回電王戦」では、屋敷伸之九段を熱戦の末に破りコンピューターの4勝1敗という結果に寄与しています。現在、チェスではコンピューターが完全に人間を上回っていますが、将棋では人間と人工知能が切磋琢磨(せっさたくま)しています。「最強の将棋ソフト」開発者の山本さんに注目が集まりますが、会場では自宅でくつろぐキュートな写真が披露されました。

山本一成さん

Ponanza開発者の山本一成さん

どちらもビッグデータと機械学習を活用

真鍋さんと山本さんは、どちらもビッグデータと機械学習を活用している、という共通点があります。トークでは、同じアプローチでも真鍋さんの場合はアート表現なので「雰囲気が伝わればいい」のですが、山本さんは将棋なので「勝ち負けがハッキリする、そこに違いがある」というやり取りがありました。そこで司会の遠山さんから「将棋ソフトでもデータを視覚化できないか」という提案がありました。山本さんは「プログラマーは将棋ソフトの思考を把握していない。当たり前だが、開発者に理解できる手を指していたらプロ棋士には勝てない。しかし、どうしてコンピューターがそういう手を指したかという理由付けが欲しい。そのためには、思考ログの視覚化がキーになる」と語りました。

これから試してみたいプロジェクトとして、真鍋さんは「人工知能にDJをやらせてみたい」と述べました。世界中のDJがかけた音楽のプレイリストのデータから「この曲の次はこの曲がかかりやすい」などの情報を取得します。さらに、オーディエンスの好きな楽曲や心拍数、体の揺れ、視線、バーのお酒の売れ行きといった変数を組み合わせて、ダンスフロアを盛り上げたいとのことでした。山本さんは、人間がやっていたことをコンピューターが代替する状況で、逆に「人間とはどういうものか、ありありと見えてくる」と語りました。また、将棋においてもコンピューターが人間の上に立った後、人間が「どういう物語を作っていくのか」が重要であると述べました。

コンピューターが打った点を、線にするのが人間

1時間のイベントはあっという間でしたが、最後に聴衆からの質問を受け付けました。「コンピューターに定跡は作れますか」という質問に対し、山本さんは「コンピューターは新手を指すことができるが、一連の流れとして体系づけるのが得意ではない。今、そういう取り組みもしている」としました。遠山さんは「コンピューターが打った点を、線にするのが人間」と付け加えました。また「コンピューターに『将棋の盤面の美しさ』は分かりますか」という質問に対し、山本さんは「美しさという観念は、人間にとっても時代によって変わる」と答えました。「プログラミングの初心者にどう教えればいいですか」というプログラマーからの質問も上がりました。山本さんは「作りたい物があるのが一番いい。現代のプログラミングは分野として巨大になっていて、全部を理解するのは難しい。プログラムを書いている時の意識はいくつかのレベルがあり、高速化に取り組んでいる時は、コンピューターの気持ちになっているかも」と語りました。真鍋さんは「プログラミングは、自分の予想していない物が出てきた時が面白い」と語りました。

遠山雄亮さん、山本一成さん、真鍋大度さん

遠山雄亮さん、山本一成さん、真鍋大度さん

人工知能をどこまで信用すればいいか

「人工知能をどこまで信用すればいいか」という質問で、今回のトークは締めくくられました。山本さんは「プロ棋士が角を成らなかったら、将棋ソフトがフリーズしたことがある。一応それっぽく動いているだけで、なんにでもバグはある。グーグルの自動運転車は、鹿が飛び出してきたら避けられるのか。また、人間なら安心なのか、という問題もある。どちらにせよ、ミスはあると思って、うまく社会と合意を取っていくのが大事」と答えました。真鍋さんは、「想像力が必要だと思う。ドローンを使っている作品は、ドローンが誤作動したら壊れたり、人間にけがをさせたりすることがある。プログラムを100%信用することはない」と語りました。

2日後に奈良の薬師寺で「電王戦FINAL」の対局を控えているにもかかわらず、終始リラックスして受け答えする山本さんが印象的でした(結果は97手で「Ponanza」が村山慈明七段に勝利)。このイベントの様子は、4月中にアップルがポッドキャストで配信します。配信後は、iTunes Storeの検索窓で「apple イベント」と入力すると、これまでの配信コンテンツ一覧に表示されます。ぜひチェックしてみてください。

文: 新野漸

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