プロマネブログ

とあるSIerでプロマネやっているオッサンです。主にシステム開発ネタや仕事ネタ、気になった三面記事ネタの解説なんかしてたりします。

ITPro 「改正派遣法、施行されれば廃業」 の雑感

 

変わる派遣法!IT業界に迫る地殻変動 - [3]「改正派遣法、施行されれば廃業」:ITpro

 

 

 

う~ん、微妙だった。。。

 

ユーザが再委託先を管理したら偽装請負

ユーザー企業では、IT業界で散見される多重下請け構造を避ける傾向が強くなりつつある。ITベンダーの管理が複雑になるからだ。元請けのITベンダーが、業務の一部を別のITベンダーに「再委託」することを禁止する条項を契約書に盛り込むこともある。元請けのITベンダーは再委託を避けつつ技術者を確保するため、従来の再委託先である中小ITベンダーに、派遣の形態を要求するわけだ(図1)。

 

再委託を禁止する「再委託禁止事項」や「再委託事前承諾事項」などの契約、見たことがないわけではないんですけど、これはちょっとおかしいですね。。。

 

「元請け」とあるように、一次請けが請負で契約を結んだ場合、「ユーザ企業にとってベンダ管理が複雑になる」ことを理由に、二次請けを禁止することは基本ないです。

請負契約である以上、ユーザ企業は一次請け企業の仕事の進め方を管理する権限がないから。

もし、ユーザが請負先の再委託先を含む要員管理を行った場合、請負ではなく派遣や準委託となってしまうため、偽装請負となってしまいます。*1

 

※ちなみに、自身の労務提供を目的とした準委託契約では再委託はダメですよ。

 

ユーザ企業が多重請負を嫌う場合、その理由はオッサンが知っている限り「セキュリティ上リスクの向上」。

請負が多重構造化すると関係者が増加するため、セキュリティリスクが高まってしまいます。それを嫌がる事例があることは知ってます。

ただ、この場合でも極端な多重請負を嫌うってだけで、1~2次請けぐらいであれば許容する例がほとんど。大体の場合は、雇用形態ではなく開発環境や二次委託内容などでセキュリティを担保するようにしているからです。

ま、セキュリティリスクを考えた場合、請負はNGで派遣はOKという雇用形態が問題となる理由は無いですからね。

 

※まあ、開発地の問題とかは別途ありますが、そこはまた別の話

 

と言った形で、元記事の記載は微妙ですね。。。

 

 

ベンダ管理が複雑なので困っているのはどっちかって言うと元請け

ただ、ユーザ企業ではなく「元請け」側企業であれば、ベンダ管理が複雑になることを理由に派遣契約を結ぶ事例はあるかと思います。

というのも、再委託で請負契約を結ぶためには結構ハードルが高いです。

 

請負で再委託するためには、ウォーターフォールみたいにある程度仕事を切り分け、「依頼→納品」といった形で仕事をパッケージングする必要があります。

いちいち作業内容に対して指示を出したり、仕事の様子を監視したりすることは偽装請負となってしまうためできません。

 

つまり、ある程度まとまった単位で仕事を依頼出来るだけの指示を行うスキルが必要です。成果物の検品で一度でOKにならないことも見越したスケジューリングを行えなければなりません。兎にも角にも先を見すえての行動が必要です。

つまり、元請け側はマネジメントスキルがないときちんと再請負での仕事を管理することができないわけですね。あっさりと破綻します。まあこういった事情もあり元請けからしたら、派遣契約の方がよっぽど仕事しやすいんですね。

だからこそ、請負の体で実質派遣で仕事をしていた偽装請負が問題になったわけです。

 

技術者の受け入れ先であるユーザー企業やITベンダーにとっては、直接指示を出せる派遣契約の方が都合が良い。その上、指揮命令系統について厳密な運用をしなければ、偽装請負と見なされる可能性もある。

元記事では、ココらへんにはちょっとだけ触れてますね。

 

まとめ

いろいろツッコミ入れてみたんですけど、実際のところ、いわゆる元請けベンダの影響は限定的との認識です。

かなりのところ、請負契約に切り替わっていたりします。会社によっては、自グループ内の子会社開発を推進することで対処しているところもあります。オフショア開発など、日本を離れた例も多いです。

元請けベンダに取っては、地殻変動とまではいかないかな。。。

 

ま、とりあえずは、請負契約でユーザ企業が再委託先のベンダーを管理するとか、さらりと偽装請負チックなことを混ぜ込まないでいただきたいもんです。。。

 

以上