2014年 03月 10日
ブレジンスキーによるウクライナ情勢の予測 |
今日の横浜北部はよく晴れました。日は完全に春なんですが、やっぱり寒かったですね。
さて、ブレジンスキーのウクライナ状態に数日前のエントリーでもご紹介したばかりですが、少し古い情報として、彼が2012年初頭に出版した本の中にもウクライナ情勢について予測したものがあったので、その該当部分を抜きだして翻訳しました。
この本はまだ邦訳されておりませんし、もしかしたらこのまま出ないような気が。けっこういい本なんですけどね。
===
ウクライナ
by ズビグニェフ・ブレジンスキー
●ロシアがベラルーシをあまりコストをかけることなく併合できると、ウクライナの主権国家の未来は危ういものになる。
●ウクライナは1991年に独立したが、ロシアとの関係は緊張にあふれたものであった。また同時に、西側諸国との関係もハッキリとはしていない。
●ロシアは自分に利益の出るような政策をウクライナに飲ませようとして何度も強制しているのだが、この際に政治的なツールとしてエネルギーを使っている。
●2005年、2007年、そして2009年に、ロシアはウクライナへの石油とガスの流れを実際に止めたり、止めると脅したりしているのだが、これは価格設定の問題や、ウクライナのエネルギー面での大きな負債にある。
●2010年の夏に、当時のウクライナのヤヌコビッチ大統領は、ウクライナの黒海の港であるセヴァストーポリを、ロシアからのエネルギーの輸入価格を譲歩する代わりにその後の25年間貸借することを約束している。
●ウクライナは4500万人もの人口を抱えるヨーロッパの国であり、強い工業基盤と潜在的にとても生産的な農業がある。
●ロシアとの同盟関係になればロシア側に得になり、帝国復活への大きな第一歩となる。また、この問題はロシアのリーダーたちにとって郷愁を感じさせることでもある。
●したがって、クレムリンがウクライナに「共通の経済圏」に参加するように迫り続ける可能性は高く、ウクライナの主な産業基盤にたいしてロシア企業による合併や乗っ取りを行うことを通じて、直接的なコントロールを取り除いて行こうとするはずだ。
●また同時に、ウクライナの国を守る力や、必要とあらば主権を弱めるために、ロシアはウクライナの安全保障機関や軍の指揮に浸透するという静かな動きは続いている。
●もしアメリカが衰退することを前提にするのであれば、最終的にはベラルーシの併合にたいするヨーロッパ側の受け身の対応や、以前グルジアを軍事的に圧倒することに成功したという経験が、ロシアのリーダーたちをあからさまな再統合へと突き動かすことになるのかもしれない。
●ところがこれは非常に困難な任務となるはずであり、おそらく何らかの形の武力行使がからんでくるだろう。また、経済的に余裕のあるロシアへウクライナを公式の連合関係に組み入れるために、とりあえずはウクライナ国内に経済危機を発生させることが計画されることになるかもしれないのだ。
●ロシアはとくにウクライナ語を話す西部と中部の人々からナショナリスト的な反発を受ける可能性がある。
●時間の経過とともに、国家としてのウクライナは――それがウクライナ語かロシア語を話す人々かに関係なく――若い世代から深い思い入れを獲得しつつあり、それが自分たちのアイデンティティーの一部となりつつあるのだ。
●したがって、時間がたてばたつほどキエフがモスクワに自発的に屈服するのは困難になるかもしれないが、それでもロシアの短期な行動、そして西側の無関心は、EUの辺境で潜在的に暴発するような状況を発生させることにもなりかねないのだ。
Strategic Vision, 2012(pp.94-96)
===
以上の本はまだ邦訳されておりません。
それにしてもなかなか正確にものごとを予測していたんですねぇ、ブレジンスキーは。
ただしベラルーシのほうがロシアに先に吸収されているという話の前提なので、そこは注意して読んでいただきたいです。
さて、ブレジンスキーのウクライナ状態に数日前のエントリーでもご紹介したばかりですが、少し古い情報として、彼が2012年初頭に出版した本の中にもウクライナ情勢について予測したものがあったので、その該当部分を抜きだして翻訳しました。
この本はまだ邦訳されておりませんし、もしかしたらこのまま出ないような気が。けっこういい本なんですけどね。
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ウクライナ
by ズビグニェフ・ブレジンスキー
●ロシアがベラルーシをあまりコストをかけることなく併合できると、ウクライナの主権国家の未来は危ういものになる。
●ウクライナは1991年に独立したが、ロシアとの関係は緊張にあふれたものであった。また同時に、西側諸国との関係もハッキリとはしていない。
●ロシアは自分に利益の出るような政策をウクライナに飲ませようとして何度も強制しているのだが、この際に政治的なツールとしてエネルギーを使っている。
●2005年、2007年、そして2009年に、ロシアはウクライナへの石油とガスの流れを実際に止めたり、止めると脅したりしているのだが、これは価格設定の問題や、ウクライナのエネルギー面での大きな負債にある。
●2010年の夏に、当時のウクライナのヤヌコビッチ大統領は、ウクライナの黒海の港であるセヴァストーポリを、ロシアからのエネルギーの輸入価格を譲歩する代わりにその後の25年間貸借することを約束している。
●ウクライナは4500万人もの人口を抱えるヨーロッパの国であり、強い工業基盤と潜在的にとても生産的な農業がある。
●ロシアとの同盟関係になればロシア側に得になり、帝国復活への大きな第一歩となる。また、この問題はロシアのリーダーたちにとって郷愁を感じさせることでもある。
●したがって、クレムリンがウクライナに「共通の経済圏」に参加するように迫り続ける可能性は高く、ウクライナの主な産業基盤にたいしてロシア企業による合併や乗っ取りを行うことを通じて、直接的なコントロールを取り除いて行こうとするはずだ。
●また同時に、ウクライナの国を守る力や、必要とあらば主権を弱めるために、ロシアはウクライナの安全保障機関や軍の指揮に浸透するという静かな動きは続いている。
●もしアメリカが衰退することを前提にするのであれば、最終的にはベラルーシの併合にたいするヨーロッパ側の受け身の対応や、以前グルジアを軍事的に圧倒することに成功したという経験が、ロシアのリーダーたちをあからさまな再統合へと突き動かすことになるのかもしれない。
●ところがこれは非常に困難な任務となるはずであり、おそらく何らかの形の武力行使がからんでくるだろう。また、経済的に余裕のあるロシアへウクライナを公式の連合関係に組み入れるために、とりあえずはウクライナ国内に経済危機を発生させることが計画されることになるかもしれないのだ。
●ロシアはとくにウクライナ語を話す西部と中部の人々からナショナリスト的な反発を受ける可能性がある。
●時間の経過とともに、国家としてのウクライナは――それがウクライナ語かロシア語を話す人々かに関係なく――若い世代から深い思い入れを獲得しつつあり、それが自分たちのアイデンティティーの一部となりつつあるのだ。
●したがって、時間がたてばたつほどキエフがモスクワに自発的に屈服するのは困難になるかもしれないが、それでもロシアの短期な行動、そして西側の無関心は、EUの辺境で潜在的に暴発するような状況を発生させることにもなりかねないのだ。
Strategic Vision, 2012(pp.94-96)
===
以上の本はまだ邦訳されておりません。
それにしてもなかなか正確にものごとを予測していたんですねぇ、ブレジンスキーは。
ただしベラルーシのほうがロシアに先に吸収されているという話の前提なので、そこは注意して読んでいただきたいです。
by masa_the_man
| 2014-03-10 00:36
| 日記