2012年 09月 15日
シリコンバレーでは「ハードウエア」の開発が熱い |
今日の横浜北部は相変わらず朝から暑いですが、多少雲が出てきてくれたおかげでここ数日よりも過ごしやすい気が。
さて、ちょっと前のものですが、またテクノロジー関係について興味深い記事がありましたので、その要約を。
内容は「シリコンバレーでハードウエア開発がブームになっている」ということでして、これは「ものづくり」が大事な日本にとっては気になるところかと。
「軍事における革命」(RMA)に関する本でトフラー夫妻は、第一次湾岸戦争(イラク戦争)を「完全に3次産業だけで行われた戦争ではなく、2次産業との組み合わせだった」と指摘しておりますが、このようなテクノロジー界における「2.5次産業化」の例を実際に実感させてくれるような良い記事です。
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シリコンバレーの「ハードウエア・ルネッサンス」
by ニック・ビルトン&ジョン・マーコフ
●近年のシリコンバレーは「シリコン」を忘れているようだった。それは.comやウェブ広告、SNS,
それにスマートフォン向けのアプリばかりをやっている感じだった。
●ところがここ最近は、ハードウエアが新しいソフトウエアとなりつつあるように見える。
●このトレンドは二・三年前のフリップビデオの発売からはじまったものであり、サーモスタットの「ネスト」や携帯カメラの「ライトロ」、それにスマートフォンと交信できる腕時計の「ペブル」などの登場によって加速したものだ。
●もちろんこれらのハードウェアはシリコンバレーでは作られていないのだが、そのデザインや製作・試作、それに必要な開発資金などは、この地域の小規模なベンチャー企業によって行われているのだ。
●この変化はなぜ起こったのだろうか?それは新製品の開発・製品化までの一連のコストが下がり、スピードがアップし、それに付随していたリスクが下がったことにある。
●もちろんこれはソフトウェアの重要性が下がったという意味ではない。むしろこれは、ハードウェアがソフトウエアと密接に統合されてきたと言ったほうが正しいのだ。
●アップルが製品デザイナーに教訓として教えたのは、「電子機器は、それ専用の使い勝手をよくするソフトウエアがなければただのゴミである」ということだ。
●そして現在では、すべての製品デザイナーたちがコストの安い3Dプリンターを使ってすぐに試作品を作れるような状況になってきている。これによって海外、とくに中国にある工場で作るよりも速くできるようになったのだ。
●またこのおかげで、製品デザイナーやエンジニアたちはテクノロジー開発をさらにスピードアップできるようになった。
●サンフランシスコにある製品開発会社「ライムラブ」の創設者の一人は「いままで三ヶ月かかっていた開発を、たった一ヶ月でできるようになりました」と説明している。
●「3Dプリンターがあれば使い捨てのような感覚で試作品ができますよ。夜に注文して翌朝受けとり、朝11時に破棄することも可能になったのです」とは彼の弁。
●コンピューター関連機器の製品開発コストの急激な低下は、一九九〇年代後半からシリコンバレーではじまっていた「ソフトウエア主導の開発」というレンドを消滅させ、新しいイノベーションの波を発生させることになったのだ。
●ベンチャー資本家のオサリバン氏は「いまから15年くらい前の世界と比べると、今の世界の変化は劇的ですね。iPhoneのような製品は部品価格を下げる役割を果たしたおかげで、われわれの生活を一変させるような革命的なデバイスを簡単に開発できるようになったのです」と述べている。
●この点を証明するために、オサリバン氏は小規模な九社のベンチャー企業の幹部を連れて中国まで行き、111日間にわたって各会社が新製品を製造できるまで指導している。
●オサリバン氏は自分のサンフランシスコにある投資会社を「ハクセルレーター」と名付け、六月にそのシステムから出てきた新製品を発表している。
●その一つが「シャカ」という会社がつくった帆船用の風速計であり、キンドラという製品は女性の排卵日を知らせるiPhone用のアクセサリーを作った。ビリボットというプロジェクトはオープンソースの低価格のロボットをつくるものだ。
●このようなシリコンバレーに見られるdot.comやウェブサービスやSNSからの撤退傾向は、実際はこの地域のルーツへの回帰とも言える。
●なぜならシリコンバレーは一九三〇年代後半に電子機器のデザインの中心地としてはじまったのであり、これはヒューレット&パッカード(HP)がディズニー映画の「ファンタジア」のために音源発信器を作った頃である。
●一九七〇年代初期にはセミコンダクターの会社が乱立したおかげで「シリコンバレー」という名前がついた。七〇年代半ばにはコンピューターを趣味とした人間たちが集まり、そこから生まれてきたのがアップルである。
●今日のシリコンバレーにおけるハードウェア関連のベンチャー企業で最も成功しているものは元アップル社員ばかりであり、彼らは自分たちの手でハードとソフトを両方一緒に手がけたいと考えている人ばかりだ。ここにアップルのDNAが受け継がれている。
●iPodとiPhoneをデザインしたチームを率いたトニー・ファデルは、最近になってNestという会社を立ち上げたのだが、これは美しいデザインの家庭用スマート・サーモスタットをつくっている。
●最初の四代のiPhoneをデザインしたヒューゴ・フィエネスはエレクトリック・インプという会社を立ち上げたが、これは家庭にある日常品をインターネットにつなげようと計画している。
●そしてグーグルのAndroidを率いているアンディー・ルービンは、その前はアップルのエンジニアとして働いた後に起業を手がけていた。そしてAndroidというソフトウエアはスマートフォンにしっかりと統合されたものであるが、これは結局アップルのiPhoneのライバルとなったわけだ。
●ハードウエア企業でブルートゥース関連のスピーカーやヘッドフォンを製作している「ジャウボーン」社の社長であるホサイン・ラーマン氏は、アップルが最近のハードウエアの新興企業の考え方のスタンダードに与えた影響は大きく、「アップルのおかげでハードルが上がりました」と言っている。
●しかし彼が警告するのは、「たしかにアイディアを製品にするコストは下がりましたが、それでもサプライチェインやマーケティング、それに配送等に関してはスケールを小さくするのは難しいです」ということだ。
●だが配送などはテクノロジーによってシンプル化されている。たとえばEbayやアマゾン、それにグーグルのマーケットプレイスなどは、誰でもウェブ上に店を展開して行商するのを可能にしはじめているのだ、
●ハードウェア関連の起業が盛り上がりを見せるなか、ニューヨークとシリコンバレーの起業家たちはベンチャーキャピタルの投資を呼び込もうと狙っており、その動きも活発化している。
●ある起業家は「ハードウェアの開発にとって一番の障害だったのは資金です。ところが消費者側の意欲の盛り上がりと開発コストの低下のおかげでベンチャーキャピタリストたちもハードウェアの開発に財布のヒモを緩めつつあります」と言っている。
●アンドロイドを使ってゲームを製作する会社や上述したペブルなどは、最近8億円から10億円規模の資金を提供されたばかりだ。
●このようなコスト低下の象徴は、名刺サイズの超小型PCであるラズベリー・パイだ。たった25ドルであり、これは最近のものでもブレイクスルー並みのイノヴェーションであると言われてバカ売れしている。
●マーケットの分析をするケヴィン・ヤップ氏は、「人々はこれを使って新しいデザインをマーケットにより素早く送り届けることができるようになります」と言っている。
●スチュアート・ブランド氏は、ソフトウエアというのは情報と同じように「自由になりたがっているのです」と述べており、オサリバン氏は「ハードウエアはソフトウエアと同じくらい低価格になったのです」と言っている。
===
つくづく実感するのが、戦略の階層のトップにある「デザイン」(世界観)と、その底辺にある「技術」が、まるで統合作戦のように結びついてきているという実態ですね。
いままでは「ハードのみ」もしくは「ソフトのみ」という形で開発が行われていたのが、いまやテクノロジーの発展によるコスト低下、そしてアップルの成功で、ソフトとハードの「統合」による開発が進んできているということでしょうか。
さて、ちょっと前のものですが、またテクノロジー関係について興味深い記事がありましたので、その要約を。
内容は「シリコンバレーでハードウエア開発がブームになっている」ということでして、これは「ものづくり」が大事な日本にとっては気になるところかと。
「軍事における革命」(RMA)に関する本でトフラー夫妻は、第一次湾岸戦争(イラク戦争)を「完全に3次産業だけで行われた戦争ではなく、2次産業との組み合わせだった」と指摘しておりますが、このようなテクノロジー界における「2.5次産業化」の例を実際に実感させてくれるような良い記事です。
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シリコンバレーの「ハードウエア・ルネッサンス」
by ニック・ビルトン&ジョン・マーコフ
●近年のシリコンバレーは「シリコン」を忘れているようだった。それは.comやウェブ広告、SNS,
それにスマートフォン向けのアプリばかりをやっている感じだった。
●ところがここ最近は、ハードウエアが新しいソフトウエアとなりつつあるように見える。
●このトレンドは二・三年前のフリップビデオの発売からはじまったものであり、サーモスタットの「ネスト」や携帯カメラの「ライトロ」、それにスマートフォンと交信できる腕時計の「ペブル」などの登場によって加速したものだ。
●もちろんこれらのハードウェアはシリコンバレーでは作られていないのだが、そのデザインや製作・試作、それに必要な開発資金などは、この地域の小規模なベンチャー企業によって行われているのだ。
●この変化はなぜ起こったのだろうか?それは新製品の開発・製品化までの一連のコストが下がり、スピードがアップし、それに付随していたリスクが下がったことにある。
●もちろんこれはソフトウェアの重要性が下がったという意味ではない。むしろこれは、ハードウェアがソフトウエアと密接に統合されてきたと言ったほうが正しいのだ。
●アップルが製品デザイナーに教訓として教えたのは、「電子機器は、それ専用の使い勝手をよくするソフトウエアがなければただのゴミである」ということだ。
●そして現在では、すべての製品デザイナーたちがコストの安い3Dプリンターを使ってすぐに試作品を作れるような状況になってきている。これによって海外、とくに中国にある工場で作るよりも速くできるようになったのだ。
●またこのおかげで、製品デザイナーやエンジニアたちはテクノロジー開発をさらにスピードアップできるようになった。
●サンフランシスコにある製品開発会社「ライムラブ」の創設者の一人は「いままで三ヶ月かかっていた開発を、たった一ヶ月でできるようになりました」と説明している。
●「3Dプリンターがあれば使い捨てのような感覚で試作品ができますよ。夜に注文して翌朝受けとり、朝11時に破棄することも可能になったのです」とは彼の弁。
●コンピューター関連機器の製品開発コストの急激な低下は、一九九〇年代後半からシリコンバレーではじまっていた「ソフトウエア主導の開発」というレンドを消滅させ、新しいイノベーションの波を発生させることになったのだ。
●ベンチャー資本家のオサリバン氏は「いまから15年くらい前の世界と比べると、今の世界の変化は劇的ですね。iPhoneのような製品は部品価格を下げる役割を果たしたおかげで、われわれの生活を一変させるような革命的なデバイスを簡単に開発できるようになったのです」と述べている。
●この点を証明するために、オサリバン氏は小規模な九社のベンチャー企業の幹部を連れて中国まで行き、111日間にわたって各会社が新製品を製造できるまで指導している。
●オサリバン氏は自分のサンフランシスコにある投資会社を「ハクセルレーター」と名付け、六月にそのシステムから出てきた新製品を発表している。
●その一つが「シャカ」という会社がつくった帆船用の風速計であり、キンドラという製品は女性の排卵日を知らせるiPhone用のアクセサリーを作った。ビリボットというプロジェクトはオープンソースの低価格のロボットをつくるものだ。
●このようなシリコンバレーに見られるdot.comやウェブサービスやSNSからの撤退傾向は、実際はこの地域のルーツへの回帰とも言える。
●なぜならシリコンバレーは一九三〇年代後半に電子機器のデザインの中心地としてはじまったのであり、これはヒューレット&パッカード(HP)がディズニー映画の「ファンタジア」のために音源発信器を作った頃である。
●一九七〇年代初期にはセミコンダクターの会社が乱立したおかげで「シリコンバレー」という名前がついた。七〇年代半ばにはコンピューターを趣味とした人間たちが集まり、そこから生まれてきたのがアップルである。
●今日のシリコンバレーにおけるハードウェア関連のベンチャー企業で最も成功しているものは元アップル社員ばかりであり、彼らは自分たちの手でハードとソフトを両方一緒に手がけたいと考えている人ばかりだ。ここにアップルのDNAが受け継がれている。
●iPodとiPhoneをデザインしたチームを率いたトニー・ファデルは、最近になってNestという会社を立ち上げたのだが、これは美しいデザインの家庭用スマート・サーモスタットをつくっている。
●最初の四代のiPhoneをデザインしたヒューゴ・フィエネスはエレクトリック・インプという会社を立ち上げたが、これは家庭にある日常品をインターネットにつなげようと計画している。
●そしてグーグルのAndroidを率いているアンディー・ルービンは、その前はアップルのエンジニアとして働いた後に起業を手がけていた。そしてAndroidというソフトウエアはスマートフォンにしっかりと統合されたものであるが、これは結局アップルのiPhoneのライバルとなったわけだ。
●ハードウエア企業でブルートゥース関連のスピーカーやヘッドフォンを製作している「ジャウボーン」社の社長であるホサイン・ラーマン氏は、アップルが最近のハードウエアの新興企業の考え方のスタンダードに与えた影響は大きく、「アップルのおかげでハードルが上がりました」と言っている。
●しかし彼が警告するのは、「たしかにアイディアを製品にするコストは下がりましたが、それでもサプライチェインやマーケティング、それに配送等に関してはスケールを小さくするのは難しいです」ということだ。
●だが配送などはテクノロジーによってシンプル化されている。たとえばEbayやアマゾン、それにグーグルのマーケットプレイスなどは、誰でもウェブ上に店を展開して行商するのを可能にしはじめているのだ、
●ハードウェア関連の起業が盛り上がりを見せるなか、ニューヨークとシリコンバレーの起業家たちはベンチャーキャピタルの投資を呼び込もうと狙っており、その動きも活発化している。
●ある起業家は「ハードウェアの開発にとって一番の障害だったのは資金です。ところが消費者側の意欲の盛り上がりと開発コストの低下のおかげでベンチャーキャピタリストたちもハードウェアの開発に財布のヒモを緩めつつあります」と言っている。
●アンドロイドを使ってゲームを製作する会社や上述したペブルなどは、最近8億円から10億円規模の資金を提供されたばかりだ。
●このようなコスト低下の象徴は、名刺サイズの超小型PCであるラズベリー・パイだ。たった25ドルであり、これは最近のものでもブレイクスルー並みのイノヴェーションであると言われてバカ売れしている。
●マーケットの分析をするケヴィン・ヤップ氏は、「人々はこれを使って新しいデザインをマーケットにより素早く送り届けることができるようになります」と言っている。
●スチュアート・ブランド氏は、ソフトウエアというのは情報と同じように「自由になりたがっているのです」と述べており、オサリバン氏は「ハードウエアはソフトウエアと同じくらい低価格になったのです」と言っている。
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つくづく実感するのが、戦略の階層のトップにある「デザイン」(世界観)と、その底辺にある「技術」が、まるで統合作戦のように結びついてきているという実態ですね。
いままでは「ハードのみ」もしくは「ソフトのみ」という形で開発が行われていたのが、いまやテクノロジーの発展によるコスト低下、そしてアップルの成功で、ソフトとハードの「統合」による開発が進んできているということでしょうか。
by masa_the_man
| 2012-09-15 12:48
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