2010年 01月 12日
北京政府の米国におけるロビー活動の発達 |
今日のイギリス南部は朝から雲の多い一日でした。寒波ですから日中でも相変わらず氷点下ギリギリという感じですが、さすがにここまで長く続くと慣れてきましたね。
さて、今日は中国ネタを一つ。アメリカにおける中国の政治面での影響力の拡大についてです。
またいつものようにポイントフォームで。
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China's lobbying efforts yield new influence, openness on Capitol Hill
By John Pomfret
Saturday, January 9, 2010; A01
●十年前に、アメリカの政治家たちは中国の貿易会社( the China Ocean Shipping Co.)が米国に対してスパイ活動をやっていると非難し、この会社がカリフォルニアのロングビーチに支社を出す案に反対したことがある。
●ところが最近になると、ジョン・ケリー上院議員やステーヴィン・リンチ下院議員が、この会社がアメリカの社会に貢献していると絶賛している。
●このような劇的な変化は中国の影響力が米国議会で増していることを示しており、これらの事情に詳しい人々によれば中国のやり方はかなり洗練されてきており、米国議員たちはアメリカ全体おける中国の経済力の影響力を認識しはじめているという。
●もちろんアメリカ人の多くはまだ中国を批判的な目で見ているが、そのロビーによる影響は明らかだ。あるオレゴン州選出の下院議員は「アメリカ人たちは中国人を共産主義者ではなく中国人であると認識しはじめている」と言っている。ちなみにカナダに続くオレゴン州の二番目の貿易相手は中国だ。
●中国はいままでアメリカの議会にはそれほど影響を与えようとはしていなかったが、現在は方針を変えて、ロビー活動で台湾に対抗するまでになっている。
●十年前まで中国を非難する米国議員は多かったのだが、去年の10月には孔子の生誕2560年を記念する決議が米国議会で通過したほどだ。
●1979年に最初に中国を訪れた米国の市長となったダイアン・ファインスタイン上院議員(加州民主党)は「もともとは反共的な見方で中国を見ていたんですが、現在は資本主義化しているという見方に変わってきている」と話している。
●もちろん中国に対する態度の軟化は全体に見られるわけではないが、それでも米国議会の中では大きな変化が見られるという。これは地元選挙区のビジネスが中国との貿易に頼らざるを得なくなっているからだ。そのおかげで反中的な法案は通りにくくなりつつある。
●中国のアメリカに対する輸出は相変わらず超過しているが、アメリカの中国に対する輸出も激増しており、アメリカ全土の選挙区の85%は中国との貿易の増加を経験している。中国はいまやカナダとメキシコに続くアメリカの輸出先だ。
●クレアモント・マケンナ・カレッジのミンシン・ペイ教授は「米国議会にいる人々もアホではないですよ。数年前まで中国批判をしても影響なかったが、現在は中国側とビジネスをしている米国側の会社の社長が、心配して電話をかけてくるようになったからです。選挙区で雇用を生み出しているのは中国とのビジネスなので」と言っている。
●在米中国大使(Zhou Wenzhong)は、四年の在任期間の間に米国の上下院の100人分の選挙区を訪問したが、これは単なるイメージ向上のためのロビー活動というよりも、お互いの関係性の重要性の確認作業であったという。彼は議員たちの中国の重要性の認識はかなり深いとみている。
●1990年代末頃までは、在米中国大使館は米国議会に働きかける人間としてたった一人の人間しか任務を行っていなかった。それまではアメリカ側のビジネスグループにロビー活動を頼んでいたのだ。
●ところが2001年に中国がWTOに加盟することになると、それまでのビジネスグループは自分の将来の競争相手に働くことをいやがるようになったのであり、これによって中国大使館は本格的に自ら動き始めることになる。
●1990年代中頃には当時の台湾総統であった李登輝がコーネル大学でスピーチを行うために台湾は米国からのビザ発給をとりつけ、これが台湾危機に発展したことがある。
●2005年にも中国国営の石油会社であるCNOOCが米国のユノカルを買収するという話があったが、シェヴロン側のロビー活動に阻止されてしまった。この時に中国側はロビー活動に4百万ドルを使っている。
●去年中国は新しい大使館を2億ドルかけてワシントンに建設しており、いまやアメリカの大学を出た完璧な英語を操る人間ばかりを10人集めてロビー活動させており、反中派の議員団体はあからさまに影響力を発揮しはじめようとしている中国側の新しい動きに警戒感を強めている。
●また、チャック・シューマー上院議員(民主党NY州)とリンゼイ・グラハム(共和党サウスカロライナ州)が2005年に人民元切り上げを求める決議案を出そうとした時に、北京政府は彼らを中国に招いており、最後には懐柔してしまった。
●2005年から2009年の間に、中国は初めて台湾よりも多くの数の米国議員を本土に招いており、強力なロビー団体(Patton Boggs やHogan & Hartsonなど)に対して使う資金も(まだ台湾には及ばないが)三倍に増やしたという。
●ファインスタインも同僚たちの中国に対する見方が時間の経過とともに洗練されてきたと言っている。彼らはアメリカが中国に巨額な借金をしていることや、多くの物資を輸入(彼女の州は去年一年だけで100億ドル分)していることを知っているのだ。「たった三十年でこれほど急速に変化した国は見たこと無いわ」とは彼女の弁。
●ワシントンでは「赤チーム」が北京、「青チーム」が台湾を支持していることで有名だったが、最近の中国の急激な発展は「赤チーム」の影響力を拡大させている。
●ナンシー・ペロシ下院議長は91年に中国を訪れたときに天安門事件について触れ回ったのだが、去年中国を訪れたときには人権のことについては触れながらも気候変動などに話題を変えたのだ。
●以前は完全に台湾派だった議員たちも、今は中国寄りになっている者が多い。たとえばサモアの代表のファレオマヴァエガ議員は以前は強力な台湾派だったが、最近は親台湾的な法案に反対するようになっている。彼は北京側のロビー活動が、ドイツ、日本、イギリス、フランスのようにうまくなりつつあることを認めている。
●親北京派(U.S.-China Working Group)に所属する議員は60人であり、彼らの発言力は高まっているのだが、これを率いるリック・ラーセン(民主党ワシントン州)とマーク・スティーヴン・カーク(共和党イリノイ州)下院議員たちの選挙区では中国とのビジネス面での結びつきが大きい。
●ラーセンは「われわれは中国の株を安い時に買ったのだが、その株はこれから上昇するだけだ」と言っている。
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「浸透」の成果が現れて来たということですね。中国側が北京に議員を大量に招いて「チャーム・オフェンシブ」をやっている様子がよくわかります。
また、中国との結びつきに対する地域差が、そのままアメリカの国政に反映されるというのも(当然かも知れませんが)政治地理学的、いや、地政学的ですねぇ。
さて、今日は中国ネタを一つ。アメリカにおける中国の政治面での影響力の拡大についてです。
またいつものようにポイントフォームで。
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China's lobbying efforts yield new influence, openness on Capitol Hill
By John Pomfret
Saturday, January 9, 2010; A01
●十年前に、アメリカの政治家たちは中国の貿易会社( the China Ocean Shipping Co.)が米国に対してスパイ活動をやっていると非難し、この会社がカリフォルニアのロングビーチに支社を出す案に反対したことがある。
●ところが最近になると、ジョン・ケリー上院議員やステーヴィン・リンチ下院議員が、この会社がアメリカの社会に貢献していると絶賛している。
●このような劇的な変化は中国の影響力が米国議会で増していることを示しており、これらの事情に詳しい人々によれば中国のやり方はかなり洗練されてきており、米国議員たちはアメリカ全体おける中国の経済力の影響力を認識しはじめているという。
●もちろんアメリカ人の多くはまだ中国を批判的な目で見ているが、そのロビーによる影響は明らかだ。あるオレゴン州選出の下院議員は「アメリカ人たちは中国人を共産主義者ではなく中国人であると認識しはじめている」と言っている。ちなみにカナダに続くオレゴン州の二番目の貿易相手は中国だ。
●中国はいままでアメリカの議会にはそれほど影響を与えようとはしていなかったが、現在は方針を変えて、ロビー活動で台湾に対抗するまでになっている。
●十年前まで中国を非難する米国議員は多かったのだが、去年の10月には孔子の生誕2560年を記念する決議が米国議会で通過したほどだ。
●1979年に最初に中国を訪れた米国の市長となったダイアン・ファインスタイン上院議員(加州民主党)は「もともとは反共的な見方で中国を見ていたんですが、現在は資本主義化しているという見方に変わってきている」と話している。
●もちろん中国に対する態度の軟化は全体に見られるわけではないが、それでも米国議会の中では大きな変化が見られるという。これは地元選挙区のビジネスが中国との貿易に頼らざるを得なくなっているからだ。そのおかげで反中的な法案は通りにくくなりつつある。
●中国のアメリカに対する輸出は相変わらず超過しているが、アメリカの中国に対する輸出も激増しており、アメリカ全土の選挙区の85%は中国との貿易の増加を経験している。中国はいまやカナダとメキシコに続くアメリカの輸出先だ。
●クレアモント・マケンナ・カレッジのミンシン・ペイ教授は「米国議会にいる人々もアホではないですよ。数年前まで中国批判をしても影響なかったが、現在は中国側とビジネスをしている米国側の会社の社長が、心配して電話をかけてくるようになったからです。選挙区で雇用を生み出しているのは中国とのビジネスなので」と言っている。
●在米中国大使(Zhou Wenzhong)は、四年の在任期間の間に米国の上下院の100人分の選挙区を訪問したが、これは単なるイメージ向上のためのロビー活動というよりも、お互いの関係性の重要性の確認作業であったという。彼は議員たちの中国の重要性の認識はかなり深いとみている。
●1990年代末頃までは、在米中国大使館は米国議会に働きかける人間としてたった一人の人間しか任務を行っていなかった。それまではアメリカ側のビジネスグループにロビー活動を頼んでいたのだ。
●ところが2001年に中国がWTOに加盟することになると、それまでのビジネスグループは自分の将来の競争相手に働くことをいやがるようになったのであり、これによって中国大使館は本格的に自ら動き始めることになる。
●1990年代中頃には当時の台湾総統であった李登輝がコーネル大学でスピーチを行うために台湾は米国からのビザ発給をとりつけ、これが台湾危機に発展したことがある。
●2005年にも中国国営の石油会社であるCNOOCが米国のユノカルを買収するという話があったが、シェヴロン側のロビー活動に阻止されてしまった。この時に中国側はロビー活動に4百万ドルを使っている。
●去年中国は新しい大使館を2億ドルかけてワシントンに建設しており、いまやアメリカの大学を出た完璧な英語を操る人間ばかりを10人集めてロビー活動させており、反中派の議員団体はあからさまに影響力を発揮しはじめようとしている中国側の新しい動きに警戒感を強めている。
●また、チャック・シューマー上院議員(民主党NY州)とリンゼイ・グラハム(共和党サウスカロライナ州)が2005年に人民元切り上げを求める決議案を出そうとした時に、北京政府は彼らを中国に招いており、最後には懐柔してしまった。
●2005年から2009年の間に、中国は初めて台湾よりも多くの数の米国議員を本土に招いており、強力なロビー団体(Patton Boggs やHogan & Hartsonなど)に対して使う資金も(まだ台湾には及ばないが)三倍に増やしたという。
●ファインスタインも同僚たちの中国に対する見方が時間の経過とともに洗練されてきたと言っている。彼らはアメリカが中国に巨額な借金をしていることや、多くの物資を輸入(彼女の州は去年一年だけで100億ドル分)していることを知っているのだ。「たった三十年でこれほど急速に変化した国は見たこと無いわ」とは彼女の弁。
●ワシントンでは「赤チーム」が北京、「青チーム」が台湾を支持していることで有名だったが、最近の中国の急激な発展は「赤チーム」の影響力を拡大させている。
●ナンシー・ペロシ下院議長は91年に中国を訪れたときに天安門事件について触れ回ったのだが、去年中国を訪れたときには人権のことについては触れながらも気候変動などに話題を変えたのだ。
●以前は完全に台湾派だった議員たちも、今は中国寄りになっている者が多い。たとえばサモアの代表のファレオマヴァエガ議員は以前は強力な台湾派だったが、最近は親台湾的な法案に反対するようになっている。彼は北京側のロビー活動が、ドイツ、日本、イギリス、フランスのようにうまくなりつつあることを認めている。
●親北京派(U.S.-China Working Group)に所属する議員は60人であり、彼らの発言力は高まっているのだが、これを率いるリック・ラーセン(民主党ワシントン州)とマーク・スティーヴン・カーク(共和党イリノイ州)下院議員たちの選挙区では中国とのビジネス面での結びつきが大きい。
●ラーセンは「われわれは中国の株を安い時に買ったのだが、その株はこれから上昇するだけだ」と言っている。
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「浸透」の成果が現れて来たということですね。中国側が北京に議員を大量に招いて「チャーム・オフェンシブ」をやっている様子がよくわかります。
また、中国との結びつきに対する地域差が、そのままアメリカの国政に反映されるというのも(当然かも知れませんが)政治地理学的、いや、地政学的ですねぇ。
by masa_the_man
| 2010-01-12 08:26
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