2009年 11月 08日
ジェンティールの「歴史に学べ」論 |
今日のイギリス南部は朝からスカッと快晴でして、とにかく気持ちの良い一日でした。
論文を書く毎日が続いておりますが、最近実感しているのはたとえ単語一つでも引用の参照ひとつでもいいですから「毎日論文に手をつける」ということですね。一日あいてしまうと、どうしても文を書く時の「勢い」みたいなものが失われてしまいます。
さて、今日は昨日のミアシャイマーに続き、今度は元軍人のアフガニスタンについての意見を。
この記事の著者のジェンティールは、本ブログでも以前に米陸軍の編成についての大議論を紹介した時の「保守派側」として紹介しております。
それではいつものようにポイントフォームで。
=====
Chimera of Victory
by Gian P. Gentile
●もし歴史がわれわれに何かを教えてくれるとすれば、最近バグダッドで起こった(司法省のビルを狙った)自爆テロはアメリカのイラク介入の終わりはまだ見えない、ということだ。
●よく言われているようなイラクに対する「サージ」はあまり成功しておらず、軍事的勝利によって政治的にも勝利できるというのはたんなる幻想なのだ。
●この幻想を教えてくれるのはフランスのアルジェリア介入である。
●1956年から1962年まで続いたこの介入の後に、この幻想はフランス陸軍から米陸軍の考えの中に伝わったのであり、現在も米軍の中で「フランスの軍事介入は暴動に勝った」と信じられている。
●ところがこれは事実ではない。アルジェリアの暴動側は目立たないうちにフランス軍や国民に手足の出ないようにして、1962年にドゴール政府から独立を勝ち取ったのだ。
●それから十年くらいしてからベトナム戦争の目撃者たちは、戦争の後半にはクレイトン・アダムス将軍のCOINによってベトナムを平定できたはずだと書き始めた。
●この「伝説」に従えば、アメリカ国民と政治家たちに強い決意があればベトナム戦争に勝てたということになる。
●この考えは現在のイラクとアフガニスタンに対する陸軍の考え方の中にも存在するが、これも幻想でしかない。
●実は米軍は1970年代初期にベトナムの共産主義者たちの暴動には勝てていなかったのであり、むしろベトナム側の変化に合わせ始めていたというほうが正しいのだ。
●1968年のテト攻勢で北ベトナム側は戦力を使い果たしてしまい、1975年の最後の攻勢まで戦力の回復を待ったわけだが、同じことは現在のイラクにも言える。
●先日の自爆テロはまさにそれが回復しつつあることを示しており、「サージ」が成功したとは言えないような状態になっている。
●このような歴史的教訓はアフガニスタンにも適用できる。
●歴史的にみれば、外国の侵入者が侵入された側の社会を武力で変革するというのは、かなりの人命と国力を費やしても実現できないものだ。
●兵士の数をもう少し増やして優れた将軍に任せれば二・三年で内戦状態にある国を平定できるという考えは、歴史を見ても間違いだということがわかる。
●アルジェリア、イラク、アフガニスタンもこの例にはずれない。われわれは歴史から何も学んでいないのであり、同じ失敗を繰り返しているのだ。
●私が2006年にイラクに駐留していた時に、イラク側の将軍にこの内戦があとどれくらい続くのかを聞いたことがある。彼の答えは「あと400年くらい」ということだった。
●考えてみれば、アメリカ自身も南北戦争という内戦に伴う奴隷制や社会的分裂という国内問題を修復するまでに百年近くかかっている。
●これをイラクの場合で考えてみると、たとえば1850年頃に外国から軍隊がやってきて、武力でアメリカの内戦を平定できただろうか?
●これを考えると、たった二年でイラクやアフガニスタンの内戦を終わらせるのが不可能であることがよくわかる。
====
これは歴史の例を上手く使った議論ですな。
昨日のミアシャイマーの場合はアメリカの国内政治の歴史から論じておりましたが、このジェンテイールの場合は南北戦争やアルジェリアなどの例を使っております。
ちなみにこのジェンティールは、米陸軍の編成に関する議論の際の論敵であったネーグル(マクリスタル賛成派)のCOINをここでも批判しているという意味で、そのまま彼と論争を続けていることになりますね(笑
論文を書く毎日が続いておりますが、最近実感しているのはたとえ単語一つでも引用の参照ひとつでもいいですから「毎日論文に手をつける」ということですね。一日あいてしまうと、どうしても文を書く時の「勢い」みたいなものが失われてしまいます。
さて、今日は昨日のミアシャイマーに続き、今度は元軍人のアフガニスタンについての意見を。
この記事の著者のジェンティールは、本ブログでも以前に米陸軍の編成についての大議論を紹介した時の「保守派側」として紹介しております。
それではいつものようにポイントフォームで。
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Chimera of Victory
by Gian P. Gentile
●もし歴史がわれわれに何かを教えてくれるとすれば、最近バグダッドで起こった(司法省のビルを狙った)自爆テロはアメリカのイラク介入の終わりはまだ見えない、ということだ。
●よく言われているようなイラクに対する「サージ」はあまり成功しておらず、軍事的勝利によって政治的にも勝利できるというのはたんなる幻想なのだ。
●この幻想を教えてくれるのはフランスのアルジェリア介入である。
●1956年から1962年まで続いたこの介入の後に、この幻想はフランス陸軍から米陸軍の考えの中に伝わったのであり、現在も米軍の中で「フランスの軍事介入は暴動に勝った」と信じられている。
●ところがこれは事実ではない。アルジェリアの暴動側は目立たないうちにフランス軍や国民に手足の出ないようにして、1962年にドゴール政府から独立を勝ち取ったのだ。
●それから十年くらいしてからベトナム戦争の目撃者たちは、戦争の後半にはクレイトン・アダムス将軍のCOINによってベトナムを平定できたはずだと書き始めた。
●この「伝説」に従えば、アメリカ国民と政治家たちに強い決意があればベトナム戦争に勝てたということになる。
●この考えは現在のイラクとアフガニスタンに対する陸軍の考え方の中にも存在するが、これも幻想でしかない。
●実は米軍は1970年代初期にベトナムの共産主義者たちの暴動には勝てていなかったのであり、むしろベトナム側の変化に合わせ始めていたというほうが正しいのだ。
●1968年のテト攻勢で北ベトナム側は戦力を使い果たしてしまい、1975年の最後の攻勢まで戦力の回復を待ったわけだが、同じことは現在のイラクにも言える。
●先日の自爆テロはまさにそれが回復しつつあることを示しており、「サージ」が成功したとは言えないような状態になっている。
●このような歴史的教訓はアフガニスタンにも適用できる。
●歴史的にみれば、外国の侵入者が侵入された側の社会を武力で変革するというのは、かなりの人命と国力を費やしても実現できないものだ。
●兵士の数をもう少し増やして優れた将軍に任せれば二・三年で内戦状態にある国を平定できるという考えは、歴史を見ても間違いだということがわかる。
●アルジェリア、イラク、アフガニスタンもこの例にはずれない。われわれは歴史から何も学んでいないのであり、同じ失敗を繰り返しているのだ。
●私が2006年にイラクに駐留していた時に、イラク側の将軍にこの内戦があとどれくらい続くのかを聞いたことがある。彼の答えは「あと400年くらい」ということだった。
●考えてみれば、アメリカ自身も南北戦争という内戦に伴う奴隷制や社会的分裂という国内問題を修復するまでに百年近くかかっている。
●これをイラクの場合で考えてみると、たとえば1850年頃に外国から軍隊がやってきて、武力でアメリカの内戦を平定できただろうか?
●これを考えると、たった二年でイラクやアフガニスタンの内戦を終わらせるのが不可能であることがよくわかる。
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これは歴史の例を上手く使った議論ですな。
昨日のミアシャイマーの場合はアメリカの国内政治の歴史から論じておりましたが、このジェンテイールの場合は南北戦争やアルジェリアなどの例を使っております。
ちなみにこのジェンティールは、米陸軍の編成に関する議論の際の論敵であったネーグル(マクリスタル賛成派)のCOINをここでも批判しているという意味で、そのまま彼と論争を続けていることになりますね(笑
by masa_the_man
| 2009-11-08 07:59
| 日記