新型コロナウイルス(COVID-19)の広がりによるアメリカやヨーロッパ諸国における「戦時体制」の様子は、悲惨になってきた。
自由主義的価値観を重んじ、人の自由な移動も尊重する欧米諸国の政府が、店舗閉鎖や外出禁止などの命令を次々と発していく様子を見ると、呆然とした気持ちになる。
アメリカでは、数多くの人々が「9・11を思い出す」と語っている。9・11が起こった後、「世界が変わった」からだ。
今回も、「コロナ危機」勃発後の世界は、それ以前の世界とは全然違うものになるだろう。その新しい世界で日本はどのような役割を果たせるか。
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文明の存亡
トランプ大統領が、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び、波紋を呼んだ。民主党系の政治家は大統領の感染症対策の不備を批判するが、余裕をなくしてきたトランプ大統領は、中国に苛立ちをぶつけている。
中国という超大国がウイルスを世界に解き放ちながら、自国は権威主義的やり方で蔓延を抑えこんでしまったという状況は、自由主義社会から見れば、悔しくて仕方のないものだろう。自由主義社会は、開かれていたがゆえに、権威主義国家からの脅威にさらされた。そう思いたくなる構図がある。
ベストセラーになったジャレド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄』によれば、ヨーロッパ人による南北アメリカ大陸の征服は、銃などの武器だけでなく、病原菌によっても成し遂げられた。かつてヨーロッパ人は、病原菌を持ち込むことによって、原住民たちを殺戮したのである。それが今は、外来者が持ち込んだ病原菌で、欧米社会が壊されている。