開き直りが「なんとなく許される」
『民主主義は終わるのか』から現下日本の政治状況に政治学者の山口二郎氏(法政大学法学部)が強い危機感を持っていることが伝わってくる。
〈二〇一二年末に発足した第二次安倍晋三政権は、国政選挙で勝利を続け、高い支持率を保ちながら、安定しているように見える。しかし、そのもとでは、毎年のように、従来であれば内閣が崩壊するような大きなスキャンダルが起こっている。
森友学園疑惑に関連した公文書改竄など、その典型である。また、集団的自衛権の行使容認については、国論を二分した論争が起き、内閣法制局長官や最高裁長官を経験した専門家が、集団的自衛権の容認は憲法違反と発言した。
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従来の常識であれば、内閣が強引に立法を推し進めることはできないような世論状況が存在した。しかし、安倍首相は反対論を無視して政策を強引に進め、腐敗・不正の疑惑に対しては真相究明を拒んだまま職にとどまって再発防止に努めると開き直ってきた。
こうした強引さや開き直りが何となく許容されるのが安倍政治の特徴である。その意味で、政権は安定していても、腐敗や強権政治という病理は進行している。帯患健康などとのんきなことを言っていられる状況ではない〉
帯患健康とは、少し調子の悪いところはあるが全体としては健康だという意味だ。現下日本の政治が健康ではないという点では評者も認識を共有する。ただし、その病理は政権だけでなく、野党にも及んでいる。
野党の力が弱くなると、立法権に対して行政権が優位になる。安倍政権において、首相官邸の機能強化が進んだ。今井尚哉首相秘書官兼補佐官、北村滋国家安全保障局長らの有能な官邸官僚が政策の企画立案、遂行のみならず、スキャンダル処理を含む危機管理を巧みに行っている。