欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とグループPSA(プジョー・シトロエン)が経営統合で基本合意した。FCAは今年5月、仏ルノーとの合併について協議したものの、実現しなかったという経緯がある。
自動者業界は100年に1度の変革期を迎えており、規模の拡大が生命線となりつつある。これまでの自動車業界においては、企業統合は容易ではないというのが一般常識だったが、その常識は根本的に変わった。FCAをめぐる一連の動きは、もはや自動車は完全にコモディティ化しており、かつてのパソコンのような存在になりつつあるという厳しい現実を示している。
数字を足せば「トップグループ入り」だが…
FCAは、2014年にイタリアのフィアットと米クライスラーの合併で誕生した会社で、北米では「ジープ」ブランドが、欧州では「アルファロメオ」「マセラティ」といったブランドが有名である。PSAは仏シトロエンと仏プジョーを中核とするメーカーで、両者のほかにオペルなどを傘下に持つ。
2018年におけるFCA販売台数は480万台、PSAは390万台なので、単純合計すると870万台の販売台数になる。
現在、世界シェア1位の独フォルクスワーゲン(VW)の販売台数は1083万台、2位のルノー・日産連合は1076万台 3位のトヨタ自動車は1059万台、4位のゼネラル・モーターズ(GM)は838万台である。FCAは8位、PSAは9位となっており、かなり苦戦しているが、両社の合併によってGMを追い越し、トップグループの仲間入りを果たすことができる。
FCAは米国市場に強く、PSAは欧州市場に強い。このため、販売戦略的には両者の合併にシナジー効果があるという解釈になるが、話はそう単純ではない。これまでの時代、自動車メーカーが合併するのは容易ではないというのが業界の常識であった。その理由は、自動車に特有の技術体系やマーケティングの複雑さにある。