中高生からの相談
私が勤める「ナビタスクリニック新宿」では、オンラインで緊急避妊薬の処方をしている。オンライン処方とは、希望者がクリニックにメールをすると、テレビ会議の機能を使って画面越しに「オンライン診療」を受けられ、そこで医師が問題なしと判断すれば緊急避妊薬を処方してもらうことができる仕組みのことだ。
相談者・処方希望者の中には中高生も少なくない。「避妊に失敗したかもしれません」「彼氏が避妊してくれなくて…」と泣きそうになりながら相談してくる女の子もいれば、中には、避妊はできていたものの彼が心配して緊急避妊薬を飲むように言われて受診したという女の子もいる。彼女たちは、緊急避妊薬をすぐに処方してくれる場所を必死で検索して、なんとか私たちのクリニックを探し出してくるようだ。
緊急避妊薬のオンライン処方については、そのハードルを下げる施策が導入されてきたものの、まだまだ現在の制度は使いづらく、より処方をしやすい方向へ舵を切ったほうが良いのではないかと感じることがしばしばある。
ここでは、緊急避妊薬のオンライン処方をしている医師の視点から、実際に感じた制度の使いづらさについて紹介しようと思う。
ご存知の方も多いと思うが、いちおう「緊急避妊薬」とは何かについて説明しておこう。緊急避妊薬とはその名の通り、避妊に失敗した際、緊急的に服用する避妊薬のこと。妊娠を望んでいないにもかかわらず、性交渉の際にコンドームが破れてしまった、外れてしまった、という理由で避妊に失敗した際や、そもそも避妊をしていなかった時に、緊急的な手段として翌朝に内服されることが多い。そのことから、モーニングアフターピル、アフターピル、Emergency contraception、Plan Bとも呼ばれている。
米国や英国などの欧米諸国における緊急避妊薬の承認から遅れをとること約10年。2011年2月、日本でもようやく緊急避妊薬の製造販売が承認され、発売されるに至った。
先進国を含む世界19カ国では緊急避妊薬はすでに「市販」されており(つまり医師・薬剤師の許可がなくても購入できる)、76カ国では処方箋がなくても薬剤師を通じて購入が可能だ。ところが、日本では、医師の処方箋なしでは緊急避妊薬を手に入れることができない。
実は、過去に緊急避妊薬の市販化について議論されたことがある。厳密に言うと、2017年7月、厚生労働省による「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において5種類の薬剤の市販化が検討されたのだが、その中の一つに緊急避妊薬(一般名:レボノルゲストレル、商品名:ノルレボ)が含まれていたのだった。