女性器を神聖視する「子宮系」女子たちの知られざる苦悩
スピリチュアルと妊娠・出産を巡る不安「子宮系」という言葉をあなたは知っているだろうか。「子宮系」とは女性器である子宮を重視したり、さらには「神聖視」したりする、「スピリチュアル」なメソッドの一群を指す。
「子宮系」は、書籍やネットを通して広まった。また、子宮をケアするための生理用ナプキンが人気を集めたり、子宮を整えるセラピーやグッズを集めた「子宮フェスタ」が各地で開催されたりもしている。
「子宮系」は、ヨガやパワースポット、前世、アロマや占いなどによるスピリチュアル・ブームから派生したもので、成人女性を中心に広く支持を集めるようになった。
ただし、ウェブ上での「子宮系」に対する評価は、必ずしも好意的ではない。特に、「子宮系」が子宮という臓器を取り上げているにもかかわらず、非科学的、非医学的な見解とセットになっていることが疑問視されている。同時に、「子宮系」のセッションやイベントが、高額であることも批判されている。
確かに、「子宮系」にはあやうい側面がある。だが、それだけが「子宮系」のすべてと言えるだろうか。このエッセイでは、「子宮系」の内容を紹介しつつ、一部の女性がそれを支持する理由について考えてみたい。そこには、現代日本の女性が妊娠や出産を巡って抱えている「生きづらさ」が凝縮されているのではないか。
医学的な知識とケアメソッド
「子宮系」といってもその内容はさまざまだ。2000年から2017年のあいだに、「子宮系」を主とした書籍は33冊出版されている。そこで、「子宮系」の大まかな傾向を示すために、書籍のなかでもムックを取り上げたい。
「子宮系」ムックは生活情報誌、女性誌の別冊として発刊されており、スピリチュアルに関心が薄くても手に取りやすい。「子宮系」のいわば入門書であると同時に、全体像をつかむのに最適なサンプルでもある。やや長くなるが、その中身を細かく見ていこう。
初期の「子宮系」ムックとして、生活雑誌『Saita』(セブン&アイ)が2004年に別冊で出した『よくわかる、婦人科のすべてbook――「子宮と卵巣これで安心!」』を取り上げよう。このムックは、医学的な見地から子宮について解説したものと、子宮を自分でケアするメソッドを紹介する記事で構成されており、後続する「子宮系」ムックのモデルとも言える。
例えば、記事では子宮内膜症や子宮頸がんなどの病気が、図説や手術の方法などとともに解説されている。また、産婦人科に検診を受けに行く手順や、都内の医師や病院を紹介するリストも添付されている。
興味深いのは、こうした医学的知識とは別種の子宮ケアメソッドも紹介されている点だ。巻末には、子宮から「悪い気」を追い出すための、骨盤を整える体操やツボ押しが紹介されている。この記事の副題には、「カラダにたまった『悪い気』は追い出そう大作戦」とつけられている。
さらに、生活雑誌『オレンジページ』(オレンジページ)の別冊ムックである「からだの本」シリーズの一つ、「不調改善のカギは『子宮力にあり!』」を取り上げよう。このムックでは、「スピリチュアル」と言えそうなメソッドの記事がより多く紙幅を取っている。