B判定でも不合格
2018年春の大学受験について、東京都内の高校教員からこんな嘆きの声が聞こえてきた。
「今年は〝日東駒専〟がかなり難化したと感じました。大手予備校の模試で、〝日東駒専〟の合格判定でB(合格圏内)を出していた生徒が軒並み入試で落ちてしまい、ショックを受けています。去年は早稲田大や〝GMARCH〟が難しくなりましたが、今年の〝日東駒専〟の不合格率は異常です。東京の私立大学入試は、今後どれだけ難しくなるのか。不安になってしまいます」(都内の私立高校教員)
言うまでもないが、〝日東駒専〟とは、日本大、東洋大、駒澤大、専修大、〝GMARCH〟は、学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大のこと。首都圏の大学を偏差値別にグループ分けするときに、偏差値が高い順に〝早慶上理〟〝GMARCH〟〝日東駒専〟と言われることが多い。〝日東駒専〟は偏差値では中堅の大学といえる。
その〝日東駒専〟が今年、極端に難化したというのだ。一体なにが起こっているのか。
「首都圏の受験生がかわいそう」
「首都圏の受験生、高校生には、ちょっとかわいそうなことをしているなと思います」
こう話すのは、大学入試に関する調査・研究や情報提供を行なっている大学通信の安田賢治常務。いわば大学入試のリサーチのプロも、今年は〝日東駒専〟が難化したことを認めている。
安田氏によると、その傾向は一般入試の志願者の数字に表れていた。大学通信が提供する「入学志願者速報」によると、4大学の志願者数の前年比は、次のようになっている。
<日本大学 102.3%>< 東洋大学 114.1%><駒澤大学 107.6%> <専修大学 102.9%>
どの大学も志願者を増やしていることがわかる。特に東洋大学は突出している。しかし、合格が難しくなった理由は、志願者数が増えたから、だけではない。合格者数も減らされているのだ。
定員抑制で去年から難化
各大学が合格者を減らしているのは、文部科学省が「入学定員管理の厳格化」を進めているため。毎年、大学は入学定員よりも多くの学生に合格を出してきたが、文科省は大学が定員を大幅に超過して入学させた場合、「私立大学等経常費補助金」を交付しないとして、この超過率の基準を年々引き下げてきた。
補助金が不交付となる超過率は1973年度は「7倍以上」(たとえば100人の入学定員なら、700人まで合格を出せる)だったが、2013年度には収容定員8000人以上の大規模大学では1.20倍、それ以外の大学では1.30倍まで引き下げられた。
この基準が16年度からさらに引き下げられ、18年度には「大規模大学は1.1倍、収容定員が4000人から8000人の中規模大学は1.2倍」と定められた。大規模大学の場合、昨年は1.17倍、今年は1.14倍、と門戸は着実に狭くなっている。例年より合格者数が減るのだから、必然、合格は難しくなる。
日東駒専の志望者にとってさらにつらいのが、GMARCH志望者の中で、「滑り止め」として日東駒専を受ける学生が増えていることだ。
去年の受験では、難関・上位校が合格者数を減らしたことで「難化した」と話題になった。早稲田大と法政大が前年より2000人以上も合格者を減らしたほか、立教大は1500人以上、青山学院大は1400人以上、明治大は約1300人減らしていた。この影響で、〝GMARCH〟を希望する受験生のうち、併願校として〝日東駒専〟を選ぶ学生の数がさらに増えているという。
「難関大学のさらなる難化を受け、今年は受験生がかなり併願校を増やしたと考えられます。今年の一般入試では、GMARCHクラスに合格した受験生が、日東駒専などの中堅校には受からなかったというケースもあったと聞いています」(大学通信 安田賢治常務)
入学定員の抑制は、来年の受験まで続く。来年も東京都内の多くの大学の入試が難しくなることは、間違いないだろう。