【第1回】はこちらをご覧ください。
聞き手・小峰隆生(筑波大学非常勤講師)
第一章 米軍が日本から撤退する理由
背に腹は替えられない米軍
この章では、本当に在日米軍は日本から撤退するのか? またするとしたら、何故なのか、その理由について、徹底的に検証していく。
米国が独裁者の治める国ならば、その人物の一存でなんとでもなるだろう。
しかし、米国は、国民の参加する民主的な選挙で選ばれた大統領が治める民主主義の国である。国民が国に納めた貴重な税金で、米軍は武器を揃え、兵士に給料を払い、活動しているわけだ。
即ち、米軍は、莫大な国民の税金を使っている以上、米国と米国市民のために、最大限に奉仕しなければならないのだ。
当然、米国の納税者たちの意見は、大きく軍に影響を与えることになる。
日本人は、日米同盟があるのだから、日本を守るために、在日米軍はいてくれるだろう、と無条件に思いがちだ。まして日本から撤退することなど絶対に無いと思っている。
が、果たして、本当にそうなのだろうか?
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---撤退する最大の理由は何ですか?
最大の理由は、軍事費の節約でしょう。
---と言いますと?
米国の財政は悪化していて、さらに金持ちと貧乏人の二極化は限界まで進んでいます。米国で暮らしていると分かるのですけれど、ここが、先進国かと思うくらい、アフリカの第三世界のような貧困地帯が広がっています。だから、国民の最大の関心事は経済です。
自分が1993年に大学留学した時、大学における一単位の価格は50ドルでした。今(2014年現在)は、一単位取得するのに400ドル前後もかかります。
---金持ちしか大学進学できないじゃないですか!!
---世界平和を持続するために、軍隊を海外に派遣しているより、米国内を豊かにするほうが先じゃないですか?
そういうことです。かつて、マルクスは、資本主義は金持ちと貧乏人の二極化がどんどん進み、金持ちはさらに金持ちになり、貧乏人はもっと貧乏になり、最終的に破局すると予測しました。今、米国はその予測通りになっています。
数年前に、米国におけるガソリンの平均価格が1ガロン4ドルを超えました。その時、各地で、タンクローリーからガソリンを盗む略奪事件が多発しました。上がったのはガソリン代だけではなく、医療費もしかりです。オバマ大統領は就任前から医療改革を進めようとしました。ですがあまり上手くいきませんでした。大統領が率先して対応しても対応しきれないほど、問題は深刻化しているということです。
---世界の警察官をつとめる前に、まずは国内の治安維持ですね。
莫大な金を軍備に使って、自分たちの地元の生活が貧しい。だから、イギリスがどこにあるか地図で指させないような連中でも、これはおかしいと思っています。
この人たちは、自分の生活する周辺に確実な雇用があるかないか、そしてガソリンの値段だけが、最大の関心事です。だから、世界の辺境が戦争でどうなろうと、知ったこっちゃない。
この階層は、ガソリン代が、3ドル50セントまでならば、何とか暮らせるというのが実情です。
---この方々は、日本の尖閣諸島問題とかは?
場所も含めて、絶対に知らないといっていい。
---だから、莫大な金を軍事費に使うよりも、家の近所の仕事確保とガソリンの値段を下げるほうに金を使え、となりますね。
そうなります。
米国の国防予算は、2001年は3,162億ドルだったのが、2010年は6,909億ドルと約2.2倍になっています。ちなみに米国を除いた世界各国の軍事費を総計しても4,500億ドル程度にしかなりません。
---これを機会に儲けようとした輩もいるでしょ?
いましたよ。
例えば2005~06年ごろですが、イラク、バグダッドの米大使館に、PMC(民間軍事企業)の警備員を大量に雇う契約が交わされた。しかし、守るべき大使館職員の数が少ないので、今度は、米国本土から急遽、職員が大量に増員されて、送り込まれました。本末転倒の話です。
---ミリタリーバブルですね。
まさに。米国で専門家筋にリサーチしてみると、適正な国防予算は4,000億ドル以下のようです。理想は、3,000億ドル。
段階的に3,500億~4,000億ドルに減らして様子を見て、可能ならば、3,000億ドルのレベルまで、国防予算を減額しなければなりません。
この金の問題も、日本から撤退する理由の大きな部分を占めています。