「鎌倉殿の13人」三谷大河渾身の傑作が暗示する「ちむどんどん」よりも深刻な“ドラマ危機”

ファンとそれ以外の人の温度差

今年話題になったドラマをひとつ選ぶとしたら、現時点での最有力候補はNHKの朝ドラ「ちむどんどん」だろう。一定の人気と評価を獲得する一方で、アンチによる批判、あるいは誹謗中傷がかつてないほどに目立った。

そんな朝ドラと並ぶ放送枠が、NHKの大河ドラマ。現在放送中の「鎌倉殿の13人」が終盤にさしかかっている。10月9日には箸休め的なトーク特番が放送され、残すは10回分(予定)だ。

NHK公式サイトより

ここまでの評判は上々といえる。「新選組!」(2004年)「真田丸」(16年)に次いで三度目の大河となる三谷幸喜の脚本が冴えわたり、役者たちもそれぞれが持ち味を発揮してきた。戦国や幕末ほどには馴染みがあるといえない、源平から北条にかけてという時代のドラマがこんなに面白くなるとはと驚いている人も多いだろう。

ネットでの反応からも、ファンの熱さが伝わってくる。作り手と演じ手、そして見る側の三位一体が傑作の条件だとすれば、これはまぎれもない傑作だ。

しかし、そのわりに視聴率はとれていない。1月こそ、15%超えを連発したが、その後低下し、7月以降は10~12%台で推移している。数字だけが指標ではないとはいえ、これはファンとそれ以外の人に大きな温度差があるからだろう。

 

温度差といえば、前出の「ちむどんどん」では、ファンとアンチの「分断」が深刻だった。一方「鎌倉殿の13人」における温度差はそういうものではない。ファン以外は無関心という印象で、それ以上の広がりがあまり感じられないのだ。

この理由は何なのか、ということを考える前に、その傑作ぶりを振り返ってみたい。

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