ゴーン氏の改革から25年、そして「脱ゴーン」から5年。しかし日産の時価総額は今年、国内下位に転落してしまった。「危機」の裏で、何が起きているのか。
前編記事【日産が自動車業界で「時価総額6位」に転落…「ひとり負け」「稼げるクルマがない」その奥にひそむ「人災」の真相】より続く。
ゴーン以前に逆戻り
社内外で、内田社長に対してさらに厳しい声も上がっている。ある元幹部は「彼はガチンコでビジネスをした経験が少ない」と語る。それは内田氏の出身母体である購買部門で常態化していた、「手ぬるい仕事」とも関係しているようだ。
日産の購買部門では収益が落ち始めた2010年代半ば、下請けに対して大幅値引き要請に成功したことに味を占め、無理な値引き要請が常態化していた。それを見越した下請け側は、やがて大幅値引きされることを前提に、実態よりも高い金額の見積書を出すようになったそうだ。
日産の購買部門は、それを薄々知りながら黙認した。見積金額が高いと値引き要請額も大きくなり、それが「原価低減の実績」として担当者の評価につながるためだ。こうした「やらせの原価低減」と言われても仕方ないようなビジネスを続けた結果、日産は「高コスト体質」企業となった。
この構図も1990年代後半、日産が系列下請け企業を役員・幹部の天下り先として利用するため、高価な部品購入を黙認していたことと似ている。今の日産は、「ゴーン改革」以前の昔の日産に逆戻りしている感がある。
日産の執行の最高意思決定機関である経営会議(EC)メンバー12人のうち、内田氏のほか2人が購買部門出身。うち1人が、内田氏を支える最側近と言われ、経営戦略やガバナンスを担当する役員の渡部英朗氏だ。
渡部氏が取りまとめ役として策定し、今年3月に発表された2024年度からの新中期経営計画「アーク」では、2026年度までに100万台の販売増を目指すとしていたが、今回の決算で早くも白紙撤回することが明かされた。市場動向の読みの甘さが露呈したと言っても過言ではないだろう。