インタビュー

「アイマスエキスポ」バンダイナムコ・波多野氏インタビュー

「アイマス」シリーズ初となるEXPO開催の意図や次に目指す先とは?

【THE IDOLM@STER M@STER EXPO】

会期:12月14日~15日

会場:幕張メッセ 第1~第3ホール

 12月14日・15日の2日間、バンダイナムコエンターテインメントの看板タイトルの1つ、「THE IDOLM@STER(以下、アイマス)」シリーズのイベントとして同社では初となるエキスポ「THE IDOLM@STER M@STER EXPO(以下、アイマスエキスポ)」が開催された。

 会場ではライブあり、物販あり、パートナー企業の出展あり、ファンメイドのサークル出展あり、痛車展示ありと単なるエンターテインメントを提供するだけでなく、ファンと共に作り上げたイベントと言う印象の強い展示会となっていた。筆者は初日の14日に会場を取材し、その様子については別途レポートを掲載しているので、ぜひこちらも合わせてご覧頂きたい。

 「アイマス」シリーズは来年で20周年の節目を迎えるが、そのタイミングで初代と同じアーケード向けの最新タイトル「アイドルマスター ツアーズ」をリリースする事が明らかになっている。

 20周年を控えたこのタイミングでの初の試みである「EXPO」の開催には一体どのような意図があったのだろうか?また、20周年にはどのような施策でシリーズのファンたちを驚かせてくれるのか?こうしたヒントの一助になると考え、今回はバンダイナムコエンターテインメントのAE事業部、765プロダクションゼネラルマネージャーの波多野公士氏に会場にてお時間を頂戴し、今回のアイマスエキスポ開催の意図や経緯、そして20周年に向けての心意気などについて話を伺ってきたので、その内容を簡単に紹介したい。

バンダイナムコエンターテインメントのAE事業部、765プロダクションゼネラルマネージャーの波多野公士氏

アイマスエキスポ開催は「アイ」を一堂に集めるために!

――今回初めてとなるアイマスエキスポ開催はどういった意図なのでしょうか?

波多野氏:来年、2025年の7月で「アイドルマスター」のシリーズが20周年を迎えるんですが、 それを1つのきっかけとして、プロデューサーさんやアイドルたち、それから制作陣や皆さんの「アイ」を一同に集めようという思いから、それを「アイが集まる」というコンセプトとして今回こういうイベントを開催させていただきました。このアイにはもちろん「アイマス」のアイやアイドルのアイ、制作陣やファンのみなさんの愛なども含まれます。

――今回のライブパートは、従来のように声を演じる声優さんのライブとは別に、キャラクターがステージに立ってライブを行なうパートもあり、これがすごくリアルで正にそこにいるという存在感が感じられました。こういう試みはいつごろから行なっていますか?

波多野氏:約2年前くらいから、今回の20周年だけでなく、その先の未来に向けた「アイドルマスター」シリーズのIP軸戦略として「PROJECT IM@S 3.0 VISION」をスタートしました。この中でMR(複合現実)を使ったライブにも力を入れると発表しており、これ以降はMRを使ったライブもどんどん増やしています。こうしたMRによるライブは、それ以前にも試したことはありましたが、1年前からは「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」というプロジェクトも立ち上げており、さらに力を入れていきたいところです。

アイマスエキスポのポスターや立て看板に書かれたキャッチコピーは「“アイ”が集まる」だ!

――今回のアイマスエキスポにおいて、最も力を入れた見どころはどこでしたか?

波多野氏:今お話に出たMRライブへの感想を受ける形でお返しすると、「アイドルマスター」に登場するアイドルたちが、ステージ上のあの場所にいるんだっていう雰囲気が出せているのは、単なるMRの技術だけではなく、これまでの20年分のアイドルたちそれぞれのストーリーがあるからだなという風に思っています。

 会場に足を運んでくれるプロデューサーさんたちが、ステージに上がってる彼女たちの20年分のストーリーから、その性格やこういうアイドルだよねと理解してくれているからこそ、存在感が増しているのではないかと考えています。

 制作陣の作るMRの形やCGによるライブと、プロデューサーさんたちの応援の仕方が融合することで、より実在感が上がってるというのが、こういった形態のライブを行なっている他のキャラクターによるライブとの、1番の差別点だなと思っていますし、今後もここには本当に力を入れていきたいなと思っています。

20周年はみんなで全国のファンたちに「アイに行く」

――先ほどの話にも出ていましたが、来年20周年ということで、20周年以降の展望や20周年で実現したい事など、現段階でお話できる事がありましたら教えてください。

波多野氏:いくつかある柱の中で、キーワードとしては、先日公開した20周年イヤーティザーPVのテーマでもある“アイ MUST GO ON!”っていう形で、先ほどの「アイ」というキーワードが、どんどん続いていくんだというイメージを持っています。

 その中にあるいくつかの施策の中で、先ほどご説明したようなMR活動で、これに関してはアイドルたちがより現実世界で活躍できる場を広げられるように展開していきたいと考えています。

 次にゲームに関しては、直近でいくと今年の5月に「学園アイドルマスター」のリリースがありました。これによって非常に多くの新しいファンの皆さんとプロデューサーさんたちに出会うことができましたので、来年以降もこれには力を入れていきたいなと。加えて来年はアーケード版の「アイドルマスター ツアーズ」のリリースも予定しています。

 最後に、これはとても大事にしている事なんですが、20周年は「アイに行きます」というキーワードも掲げておりまして、具体的にはツアーライブの本数を増やしたり、全国のショッピングモールや小売店など色々なところに制作陣やキャストのみなさんと一緒に伺って、プロデューサーさんやファンのみなさん1人1人と会ってお話して帰ってくるという事に力を入れていきたいと思って、そういう活動も開始しているところです。

 現段階ではまだ実際に伺えた場所は少ないですが、20周年をきっかけに、こうした活動を通してこれまでの皆さんのプロデュース活動に対して1人1人に感謝をお伝えしたいなっていうのをやっていきたいと思っています。

 20周年という節目ではこういった感謝の気持ちをお伝えする場を用意するのと同時に、これからの未来にこういう面白いコンテンツに私たちはチャレンジするといった新たなイメージをプロデューサーさんたちと共有できるきっかけになるようなイベントやコンテンツが供給ができればいいと思っています。

――最後に20周年に向けての「アイマス」シリーズのファンに向けてのメッセージを聞かせてください。

波多野氏:20周年を通して、そういった皆様とやってきた活動の振り返りであったりとか、感謝を伝えるってこともそうですし、 あと12月27日に配信番組が控えていたりとか、その先も何回も配信がありますので、そういった場で、よりこう皆さんに驚いたり喜んでいただけるような仕掛けをどんどん発表していけたらなという風に思っていますので、楽しみにしていてください。

――ありがとうございました。

アイマスエキスポ会場では、「アイドルマスターポータル」サイトの機能などを手掛ける株式会社ジュニが20周年の特別企画について紹介する展示も見られた
アイマスエキスポ会場では「アイドルマスターシリーズ」の歴史を示した年表も展示されていた
20周年記念を示したメッセージボードには多くのファンたちからのコメントが寄せられていた

波多野氏の好きな楽曲は「MUSIC♪」。その理由は……

 以上、波多野氏とのインタビューの模様をお伝えした。波多野氏は2009年にバンダイナムコエンターテインメントに入社し、最初に携わったアイドルマスターのコンテンツが、DMM VR THEATERにて行なわれた公演「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆」とのことで、2年前に発表された「PROJECT IM@S 3.0 VISION」以前からVR/MRなどの最新技術と「アイマス」シリーズとの融合を考えていたのだろうと推察される。

 ここからは余談だが、波多野氏が最も印象に残っている「アイマス」シリーズの楽曲について尋ねると、間髪入れずに「アイドルマスターシャイニーフェスタ(2012年発売のPSP用ゲーム)」のテーマ曲「MUSIC♪」を挙げた。理由としては「歌えばほら新しいDOOR、開いてく輝いて、始まる世界、LISTEN!!私のMUSIC♪」という歌詞が衝撃だったからだという。

 この歌詞を聞いて波多野氏は「すごく挑戦的なMRライブという物にチャレンジしているアイドルマスターというIPをすごい尊敬できると思ったんです。歴史のあるIPなのに、他のIPでやっていないようなライブ興行にチャレンジし、従来のライブ興業の形態も続けていて……この歌詞の中でも同じようなメッセージを打ち出していて、昔から常に新しいことに挑戦し続け、20周年の今でもフレッシュな感覚でコンテンツを供給し続けているアイドルマスターというIPをすごく尊敬できると思ったんです」と語る。

 20周年の展望の話でも触れたが、単に新たな技術を追うだけではなく、波多野氏のインタビューからは、そうした新たな技術へのチャレンジに加えて、ファンやプロデューサーとのコミュニケーションもかなり大事にしている雰囲気が感じられた。

 20周年という節目を迎える「アイマス」シリーズの次なる挑戦はどのようなものになるのか。楽しみにしているファンたちの予想を上回る驚きと喜びの施策が発表される日が今から楽しみだ。