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映画「室井慎次 敗れざる者」(本広克行監督、2024)を見る。大ヒット映画シリーズの続編(前編)。

   

「室井慎次 敗れざる者」(2024)を見る(MOVIXさいたま)。1997年に放送開始され映画版も大ヒットを記録したテレビドラマ「踊る大捜査線」シリーズで柳葉敏郎が演じる人気キャラクター「室井慎次」を主人公に描く映画2部作の前編(後篇は「室井慎次 生き続ける者」)。

2003年に公開された「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が打ち立てた記録、興行収入173.5億円、観客動員数1260万人は、20年以上経った今もなお、2位に50億円以上の差をつけたまま邦画実写記録の圧倒的頂点に君臨している。

今作では、青島役の織田裕二などが出演せず、過去のシリーズのいくつかのシーンがフラッシュバックして使われているが、かなり間隔があいているので、出演者が若々しく感じる。ただ、続編としてストーリーをうまくつなげている。

劇中、若手の警官などが室井に「レインボーブリッジを封鎖したんですよね」というと「封鎖はしていない」と何度も繰り返すなどのほか、過去シリーズのシーンが違和感なく挿入される。なぜ室井は定年退職を前に職を辞して田舎の秋田に行ったのか…の謎にも迫っている。

ただ、大ヒット映画の栄光にすがっているように見えなくもない。

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<一部ネタバレあり>

映画はシリーズの過去シーンから始まる。
室井慎次は語る。「信念を持った男・青島から俺は教えられた。組織で生きるには信念が必要だ」と。長官から質問された。「そんなに組織が閉鎖的か。組織などそんなに簡単に変わるものではない」などと長官が言った。

警察の組織改革に挑むなど、波乱に満ちた警察人生を歩んできた室井慎次。5年も改革に取り組んだ。もういいだろうと、室井は27年前の青島俊作(織田裕二)との“約束”を果たせなかったことを悔やみ、警察を辞めて故郷・秋田に帰ったのだった。

そこには、かつての想いで、森貴仁(齋藤潤)や凜久(りく、前山くうが)の2人の少年とシンペイという名前の犬と一緒に穏やかに暮らす室井の姿があった。

そんな中、室井の前に突如謎の少女が現れた。その少女の来訪とともに、他殺と思われる死体が発見される。それは特殊詐欺と強盗事件の犯人の遺体であり、村は混乱に陥る。そして明かされる、少女の名前は…日向杏(福本莉子)だった。

シリーズ最悪の犯人と言われた猟奇殺人犯・日向真奈美(小泉今日子)の娘だという、衝撃の事実が判明する。

              「臭いにおいだ。」

「とんでもない死体を見つけましたね、室井さん」。東北の山奥には似つかわしくない、おびただしい数の警察官、ヘリや警察車両。それにドローンまで。

「最悪」なだれかはなぜ室井慎次を狙うのか。穏やかな暮らしを求めた室井のまわりに、再び、事件の影が迫りくるのだったが…。

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眉間にシワとモノマネもされる室井を演じる柳葉敏郎は、同じ敏郎の三船のCM「男は黙ってサ〇〇〇ビール」(古い!)のように寡黙が似合う。余計なことは言わない。相手の言いたいことは黙って聞き、最後に言葉を発する。

秋田の集落の地域課の若手警官・乃木真守(矢本悠馬)が、警察本部で上級職にあった室井に会ってはしゃぎ、勝手に推測でモノを言うが「俺は何も言っていない。あいさつで来るのなら止めてほしい。もう警察官ではない」と突っぱねる。乃木という警官、とにかくノー天気のチャラ男。

室井が預かって育てている子供たちは、犯罪者の子供などで、児童相談所から引き受けてきた子供たち。

児童相談所・総務班長の松本敬子(稲森いずみ)は、室井の履歴書を見て、「警察官だったようですので、安心できます」といった引き受けた当初のやり取りもあとから映し出される。

そして、秋田にそういった話があるということを聞きつけて、母親から数万円の現金と手紙をもって室井のもとにやってきたのが日向杏(福本莉子)だった。

この杏という少女について、貴仁は「室井さんも気付いていると思いますが杏には注意したほうがいいですね」とみていた。その兆候は見え始めていた。

こんな発言もする。貴仁に対して「(暗に室井を指して)大人って卑怯だよね。孤児を預かってお金をもらっているんだから。お金が貯まったらすぐ捨てられるよ」だった。

一方、母親を殺害した服役中の殺人犯の弁護を担当している弁護士・奈良育美(生駒里奈)が、容疑者は反省しているから、その刑を軽くするために貴仁に証人になってほしいと依頼をしてきた。

すでに弁護士からは何度も手紙が来ていたが、貴仁は手紙を一切読まずにいた。この弁護士も新人でまだ世間知らずだが、かなり計算高い自己本位の人物。

容疑者も「私のクライアント」の一言で片づけるしゃくし定規の対応しかしない。貴仁は、手紙を読んだのち、弁護士に「母さんを殺した男に会うよ」という。

弁護士は、これでかなり有利になると見たようだ。室井は新人で猪突猛進型の人間は知っている。「かつて弁護士で一生懸命な女性がいた」という(映像では「容疑者 室井慎次」のシーンで登場した弁護士・小原(田中麗奈)だ)。

貴仁が室井とともに容疑者に面会に行くが、弁護士の同席を断るのだった。話を誘導されてしまう可能性があったからだ。面会してみると、容疑者の男の態度が不真面目で反省のかけらもないことがわかる。

室井が、容疑者があくびをしてまともに対応しない姿を見て「帰ろう」と貴仁を促すが、貴仁は容疑者に向かって「あんたのような大人をよく知っている。あんた以外の大人(室井のこと)もよく知っている。そういう(室井のような)大人になりたい。あんたのような大人にはなりたくない」ときっぱりというのだ。

さらに「やくざの本当の姿だって知っている。時々、情けねえ、情けねぇと一人で泣くんだ。あんたも、時々情けねぇ、と泣くんだろ」というのだ。これには、図星だったのか、ぐうの音も出なかったような容疑者。このあたりのシーンがいい。

後日、室井が貴仁をまじまじと見て「大人になったな」というと「いえ、まだ1年しかたっていません」と返す貴仁だった。

そんな中、室井の家の一部が火で燃え上がる。いったい誰が?犯人はおおよその見当はつくのだが…。

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<主な登場人物>
■室井慎次:柳葉敏郎

東北大学法学部を卒業後、昭和61年に警察庁に入庁。27年前、湾岸署の青島刑事と“ある約束”を交わし、警察の組織改革のために奮闘した。現在は、警察を辞めて故郷・秋田県に帰り、"事件の被害者家族・加害者家族を支援したい"という想いで、2人の少年と暮らしている。
■日向杏:福本莉子

室井慎次の前に突如現れた少女。その正体は、映画「踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間」で湾岸署を恐怖に陥れた史上最悪の猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だった。
■森貴仁:齋藤潤

室井と一緒に穏やかに暮らしている高校生。海外のSF小説を好む。里親である室井に対して「室井さん」と呼ぶ。
■柳町凜久(りく):前山くうが/前山こうが(双子)

室井と貴仁と共に穏やかに暮らしている低学年の小学生。学校にはあまり行きたくないという。理由はみなスマホでゲームばかりしているから。
■桜章太郎:松下洸平

警視庁・刑事部捜査一課所属。まっすぐで熱い人物。捜査に協力してもらおうと室井に詰め寄る。

■乃木真守:矢本悠馬
集落の地域課・若手警官。東京からきた室井に興奮気味に接する。お調子者。

■新城賢太郎:筧利夫
秋田県警・本部長。室井の盟友で、秋田で起きた事件をきっかけに室井と再会する。

■沖田仁美:真矢ミキ

警察庁・官房審議官。女性初の管理官で、新城や室井とともに警察庁組織改革審議委員にも任命された。
■緒方薫:甲本雅裕
湾岸署玄関の立ち番から強行犯係メンバーとなり、青島たちと事件解決に奔走した。

■森下孝治:遠山俊也

室井と同じく秋田県出身。テレビシリーズでは、室井ときりたんぽ鍋をつっつくことを約束していた。湾岸署玄関の立ち番から、刑事課強行犯係、盗犯係を経験した。
■坂村正之:升毅

警視庁・長官補佐。
■明石幸男:赤ペン瀧川

勝どき署の地下資料室の一角に設置された「捜査資料管理センター」の技術専門官。過去の捜査資料のデータ入力が主な仕事。
■石津百男:小沢仁志

室井の故郷・秋田県にある石津牧場の主。東京からきた室井に敵対的な態度を取る。
■石津紀子:飯島直子

百男の妻。
■松本敬子:稲森いずみ

児童相談所・総務班長。
■市毛きぬ:いしだあゆみ

市毛商店の店主。
■奈良育美:生駒里奈

新人弁護士。
■大川紗耶香:丹生明里(日向坂46)

森貴仁のクラスメイト。卒業後、仙台に行って看護師を目指す。
■森麻絵:佐々木希
森貴仁の母親。仕事は水商売?。

■シンペイ:飼い犬(柴犬)

室井が飼っている犬。男の名前だが雌犬か。杏が「シンぺイって、女の子なのに可哀そう」というセリフがある。

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(小ネタ、いろいろ)

劇中、東北弁で「カマダ」と言ってみて下さいというのがあるが「かめだ」「かんまだ」などと発音するのは「砂の器」と掛けているのか、オマージュか(笑)。

ある人物が”話っこ”(東北弁では、最後に「こ」をつけることがある)があるといってたとえ話をするが「柿を食べて蛇になって川へ逃げたという話だ。わかったな」と室井に言うが、室井のことを表していたようだ。

秋田弁の方言と言えば、室井が「かだっぱりこいで」と言っていたが「意地っ張りめ」といった意味のようだ。

死体の横に「西洋ナシ」があったが「洋ナシ」という言葉が昔と今と何度も登場。「犯人が世間から洋ナシ(=用がなし)」ということだが、当時から滑ってました?と聞くのは捜査一課所属の桜章太郎(松下洸平)。この章太郎は、なんとか室井を捜査の中に引き込もうとするのだ。

室井は、里子たちに、週3回カレーライスを作っていた。杏がやってきて、オムレツを作ると凜久(りく)などに大人気。室井は同じカレーと言っても、種類を3種類に分けて作っていたと踏ん張るが、凜久はカレーはあまり好みではなかったようだ(笑)。杏がシチューを作るというと、食べたことのない凜久は、興味津々。

商店の店主である老婦人・市毛きぬ(いしだあゆみ)に「東京ではヤクザでもやっていたの」と聞かれた室井は「同じような組織でした」と応えると「捕まえるほうだったんだね」といったやり取りも。ヤクザの組織も警察も大した違いがない組織の世界のようだ。

刑事課強行犯係、盗犯係などを経験した森下孝治(遠山俊也)は刑務所の刑務官になっていたが、室井は森下に「まだきりたんぽをいっしょに食ってねえな」というあたりが室井の約束にこだわる性格を感じさせる。また、東京で室井の同僚だった管理官・新城賢太郎(筧利夫)は秋田で本部長になっていた。

「室井さんはなぜ秋田にやってきたの」と貴仁から聞かれた室井は「人づきあいが苦手だからな」とお茶を濁していた。また「負け犬だから逃げてきた」とも。

「約束」を自身が果たせなかったことから、貴仁に対して「約束なんかしちゃあだめだよ」と諭す。貴仁も「友達に本を貸しても、戻ってきたためしがない」という。

・・・

静かな山村で殺人事件などが起こることになったのは、「第一発見者」にもなった室井がやってきたからだと、村民たちは室井を追い出そうとする。

村民と室井の対立も一触即発の状態。それにしても10人くらいで猟銃で狩りに出かけるが、室井が猟銃を構えるシーンがキマッている。

17年の刑期を終えたある人物が出所して出てくるところで終わり、第2部が気になるところ。この人物は室井が預かっている子供・凜久(りく)の父親でもあった!(ということは…)。

第二部の後篇を見ないわけにはいかない。

 

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