今月初めに舞い込んで来たこちらのクラウドファンディングのニュース。
・
2020年に向けてレトロゲーム資料博物館の実現を!(石井 豊) - クラウドファンディング(Readyfor) このプロジェクトに対して界隈の反応の多くは
「誰が何をしようとしてるのか」という疑問だったように思います。そこで弊サイトではプロジェクトを立ち上げた石井豊さんへインタビューを実施。真面目な質問から、あえて答えにくいだろう質問までさせてもらい、本音で語って頂きました。
さっそく行ってみよう!
◆石井さんについて◆石井さんは「ラジオストック」を経営されているということですが、それはどんな内容のビジネスなのでしょう。また、楽天市場を撤退された理由を教えて下さい。
廃品回収業者さんが集めてくれたレトロゲームを買取りに伺い、必要に応じて分解、清掃、整備後、販売というのを基本に20年間続けてきました。時代も変わり、個人売買が盛んになり、集まる量もこの20年で全盛期の20分の1ほどになり、劣化もさらに進み、それに対応する為に技術力を上げてきたつもりですが、さらに人を雇って売上を上げると、需要と供給のバランスが崩れる為、大きく出来る業種でもありません。
現在は貯めた在庫を切売りしてますが、一生続くわけでもないので縮小しつつ進んできた次第で、楽天市場撤退もその一つです。
石井さんの一番思い入れのあるゲーム機&ゲームソフトは何ですか?
小学四年生の頃、マイコンPC-6001を父親が買ってきてカセットテープ版のゲームで遊び、本を見ながらゲームを作ったりしてました。「オホーツクに消ゆ」もこれで解きましたが、後程やったファミコン版とのエンディングの音楽が全然違い、当時愕然としました。
ゲームセンターに通い、一通り主要ハードは遊びましたが、高校生の頃、頑張って働き10万円程貯めPCエンジンCDROM2をフルセット揃えたのは強く印象に残っています。衝撃のCD媒体ゲームソフト、当時最先端のアニメーションや喋るビジュアルシーンにゲーム新時代を感じたものです。
それにしてもとてつもない量のレトロゲームですね。崩れたり、潰れたりしないか心配です。石井さんはこの写真で何を伝えたかったのでしょう?
確かに写真で見ると、今にも崩れそうな感じもありますね。実際は、これまで数回、震度3~4位の地震に揺られたこともありましたが、崩れ落ちることはありませんでした。昨年新しい倉庫にすべて移動させたのですが、一番下の商品も問題ありませんでしたよ。この写真で支援者の皆さまにお伝えしたかったことは、修理や整備への想いです。この写真に写っている物は、ほぼすべて一度廃棄された物で修理や整備をする前段階の状態です。ここから一品一品、検査、修理や清掃、検品していき、商品化していました。
次の新オーナーを幸せにし、大切に扱われることを思って、皆で仕事をやってきましたし、仕事を通して、様々なレトロゲームの問題点や、修理技術を発見する事が出来ました。写真で技術を紹介するより、修理整備前の物を見ていただいた方が解りやすいかと思い、この写真を使いました。
なるほど。これは修理する前のものだったんですね。
◆クラウドファディングについて◆そもそもなぜクラウドファンディングなのでしょう。NPO法人ではできないのでしょうか。また、Readyforを選んだ理由を教えて下さい。
NPO法人は人や知識が集まる場所であり、物を蓄える場所ではないと考えてます。博物館が実際スタートし、軌道に乗れば運営等をNPO法人でやって行ければ理想と思っています。
クラウドファンディングは、インターネットを活用して、より多くの方々に知って頂くことが出来ると思いました。Readyforさんには2017年の初旬から相談させて頂きましたので、かれこれ1年半以上になります。その間、博物館の構想を練りながら、現状の事業仕分けや、展示会を行ったりと周知活動に取り組んできました。とても親身に相談に乗っていただいたことと、私たちの今の事業の現状やレトロゲームへの想いを一番よくわかって頂いてくれたので、Readyforさんにお願いさせて頂きました。
支援をしたくても5000円からはハードルが高いという声があります。またリターンに渋いという厳しい意見もありましたが、、、
5000円からのハードルは高いというお声、リターンに渋いという厳しいご意見はその通りだと思います。まず、5000円からのハードルにさせて頂いた理由はリターン数に伴う事務作業を出来るだけ抑えたいというのが内情です。(※)
次に、リターンの設定の理由についてですが、金額から見て、リターンが渋いのは、今回、人手も資金もなく、あるのは展示品と修理技術等という中で、純粋に半年間の運営費をご支援頂きたいのが本音です。頂いた支援金を少しでも博物館の充実に使えるように努力して行きますので、ご理解頂けましたら幸いです。
※その後、1000円からの設定が追加されました!リターン品のデザインを担当されたチリ在住のホセさんって現地で任天堂サイトを運営していた人物ですよね。実はそのサイト見てましたよ(笑)
そうです。現地で任天堂サイトを運営していました、人気グラフィックデザイナーです。アメリカの有名ビデオゲーム店のキャラクターグラフィックを担当してたりと、世界で活躍しています。JARGAのキャラやステッカーを作ってもらったり、今回のリターンの品も彼がデザイン担当予定です。今回のデザインの打ち合わせの為、こちらにも来てくれています。非常に日本文化が大好きでかなり詳しいです。ホセさんもファミコンのネタ!!の大ファンですよ。
えっ、やだ、恥ずかしい、、、
※廃棄されていたゲームソフト(写真提供:石井さん)◆ゲーム文化保存について◆夫のコレクションを勝手に捨てる妻が我がサイトでも度々、話題になっていますが長年、廃品回収に関わって来た石井さんはどう見ていますか?
物には何の変哲の無い石ころ一つにでも、思い出が詰まっていたり、高価なブランドバックでも飽きてしまえば邪魔と捨てたりする人は大勢います。レトロゲームも同じで、興味を持たない人達には子供のおもちゃ、カラオケの再生機(実際有ったんです!)とかにしか思ってないでしょう。
今まであちこちの廃品現場を見ましたが、おばあちゃんが亡くなった瞬間、大事に受け継がれてきた由緒ある着物が、容赦なく嫁に捨てられたりと沢山見てきました。非常に残念でなりませんが、リサイクルできるものはリサイクルし、大事にしてくれる人の元へと繋げたいと思っています。
石井さんはNPO法人「JARGA」では、日本のゲーム文化の記録・保存活動をされているとのことですが、世界に比べて日本が遅れている理由とは?
日本では現在、レトロゲームを見ようにも中古販売店に行って見る事くらいでしか出来ません。世界では、すでに常設された博物館が、世界のゲーム情報を発信したり、来場者が実物に触れて遊べたりと遥か先を行っています。博物館のバックヤードにも膨大な資料が蓄積され、専門の修理技術者や研究者が博物館で働いています。日本では常設された博物館が無く、技術や情報を蓄えるシステムも無く、すでに立ち遅れています。
では、どうすればいいのでしょう。
業種にこだわらず、立場を超えて協力し、技術や情報を蓄えて行ける博物館を小さくても良いので早急にスタートさせるべきと思います。必ず日本の未来につながり、世界中の人々が訪れる魅力ある観光地、観光名所の一つになると確信しています。
◆博物館について◆ゲームについては「プレイしてこそゲームだ」という考え方があります。プレイアブル展示はお考えでしょうか?
はい、様々なハード、ソフトをプレイ出来るのが理想だと思っています。前回の展示会イベントでも触ってみたいという意見を多くの方から頂いていました。ハードを眺めてるだけでは寂しいので、プレイ出来る展示環境の実現も検討しなければならないと思っています。実現に向けては、実際にスタートしてから、利権者の皆さまとお話しして、解決や改善が必要なことを、一つ一つ解決、改善していかなくてはいけないと考えています。プレイアブル展示も重要な課題の一つだと考えています。
※米国ではゲーム保存に関してのみ著作権が免除になりました(参照)。日本も話が進むといいですね!また、博物館を運営するとなると国内外のレトロゲームファンに刺さる魅力的な企画が必要になってくると思いますが、、、
スタートすれば常設を始めスポット展示、イベントなど継続していかなくてはいけないと思っています。そのためには、ゲームに関わる様々な方々のご協力を頂くことも不可欠だと考えています。現在ゲームに携わっている方々や、過去にゲームに携わっていた方々に、今もご支援、ご協力をお願いして回っているところです。いくつかのアイディアはあるのですが、目標とする2020年オリンピックまで続けるには、まだまだ知恵を絞らなくてはいけません。
そもそも国内の博物館の多くが赤字という現状を知りながら、なぜ常設博物館という選択肢をえらぶのでしょうか。スーパーポテト、まんだらけがすでに外国人の観光スポットとなっているように、まずは店舗営業をしながら博物館を併設してもいいのでは?
スーパーポテトさんや、まんだらけさんが外国人観光スポットになっている中で、そういう事業の可能性も選択肢にあると思います。私達がやっているNPO法人JARGAでの活動とレトロゲーム販売ラジオストックの2つが実店舗ではありませんが、併設してやってきました。収益を生まない活動は、どうしても時間、経済的にも余裕があるときにしか集中することは出来ません。この数年続けてきましたが、併設では非常に難しく、今回のチャレンジとなりました。
実店舗を続けるというのだけでも現在は非常に難しい時代です。街のゲーム屋さんは全盛期に比べ、ほとんど無くなってしまいました。資金力も人手もない中で、今出来る事を考えた結果、純粋なレトロゲームの博物館に挑戦しようという結論に至りました。
なるほど。いろいろ考えた結果なのですね。
※倉庫を見に来た他店のスタッフさん(写真提供:石井さん)◆NPO法人について◆NPO法人「JARGA」については、その活動内容の周知がレトロゲーム界隈ですら十分とは言えない現状が見受けられますが、、、
周知活動について、この1年間では、去年の9月の展示会を初めに、ラジオ出演3件、毎日新聞に掲載、立命館大学での講演会、地元フリーペーパー「Pontab」や動画サイトでの紹介が数件、取り上げて頂きました。しかし、ネットも含めて、積極的なメディア活動には手が回っておらず、受身の活動だったと思います。私としては、呼ばれたら極力喜んで赴く方針です。
ですが現状は、現場での仕事も山のように抱えており、多くの皆様に届く程の情報発信が出来ていないのはJARGAの活動として不十分でした。もしよろしければ、どなたか情報発信を手伝ってくれる方が欲しいとはいつも切望しています。今後は、情報発信の充実に向けて行きたいと思います。
海外のレトロゲーム関連団体とは積極的に交流されているようですが、国内の各種団体、レトロゲームショップ、コレクター界隈とは交流しないのですか?
スーパーポテトさん、ゲーム探偵団さんとは20年来のお付き合いをさせて頂いています。地元大阪、関西寄りになりがちですが、これまで知り合えた関連団体さんや愛好家さんとは相互交流を進めてきたつもりです。ですが、さらに様々な人達との協力が必須と考えています。私自身、人と話すのは好きな方ですし、一人で出来るものでもありませんので、喜んで出来るところから着実に文化保存活動への理解、交流の輪を広げて行きたいと思っています。
近年、国内ではレトロゲーム関連イベントが盛んに行われています。そのような場所へプロジェクトとして出展するお考えはありますか?
はい、理念や目的が合うイベントには、資料博物館プロジェクトとして、是非参加して行きたいと考えています。そのためには、まず、博物館としての土台作りをしっかりしないといけないと思っています。博物館設立に集中できるように、この9月末で大きく業務体制を変えました。
年内はクラウドファンドの成功に向けて対応に時間を多く取られると思います。ぜひ成功させて、国内のレトロ関連イベントへ資料博物館プロジェクトとして参加してイベントを盛り上げる活動ができたらと思っています。
これは期待ですね。石井さん、お忙しい中、インタビューに応えてくださってありがとうございました!
この記事が、皆さんの「誰が何をしようとしているのか」という疑問を晴らすお手伝いになれば幸いです。
・
2020年に向けてレトロゲーム資料博物館の実現を!(石井 豊(ラジオストック店主、JARGA日本レトロゲーム協会理事長) 2018/10/12 公開) - クラウドファンディング Readyfor (レディーフォー)
- 関連記事
-