#中国
TEXT:高橋 優
中国車との兄弟車と噂される日産N7! 中国で起死回生の1台となるか?

N7はeπ007のリバッジモデルである可能性が高い 日産の新型ミッドサイズEVセダンのN7について、中国の合弁先であるDongfengのリバッジモデルである可能性が報道されています。詳細なEV性能をはじめとして、日産の中国市場における最新動向を分析します。 11月中に開催されていた中国のGuangzhouオートショーにおいて世界初公開された日産N7は、全長4930mm、全幅1895mm、全高1487mm、ホイールベースが2915mmという中大型セダンセグメントに該当します。さらに、N7には高級シートを採用したり、中国の自動運転スタートアップMomentaと開発した高性能ADASの搭載が発表されています。これは中国市場におけるトレンドをキャッチアップしており、2025年初頭にも発売される見通しであることからも、N7に対する期待が高まっていました。 とくに日産は中国市場の販売割合がグローバル全体の25%程度を占めており、北米市場に次いで非常に重要なマーケットであることから、中国を捨てるわけにはいきません。直近の2024年Q3の中国国内の販売台数は13.6万台であり、前年同四半期で-16.7%と急速に販売台数が低下中です。さらに日産が現在ラインアップしているBEVのアリアは、10月でたったの19台しか売れておらず、EV販売という観点で根本的な問題を抱えてしまっています。いずれにしても、中国市場における販売台数とEV販売をテコ入れするという観点で、この新型EVセダンのN7は、2025年シーズンの日産にとって重要な一台となり得るのです。 そして、新たに判明したN7の最新情報として、複数の現地メディアがN7には兄弟車が存在すると指摘しています。これは、合弁先のDongfengがすでにラインアップしているEVセダン、eπ007のリバッジモデルなのではないかという点です。 このeπ007は全長4880mm、全幅1895mm、ホイールベースが2915mmと車両サイズがN7と酷似しています。さらに、車内中央に配置された15.6インチのタッチスクリーンもN7に搭載されているセンターディスプレイとまったくく同じサイズです。 その上、中国EVに必須となっている、サッシュレスドア、および格納式ドアハンドルのデザインもeπ007とまったく同じデザインです。 いずれにしてもこれらの観点から、日産の新型EVセダンであるN7は、日産が独自に開発したEVではなく、合弁先であるDongfengのEVセダン、eπ007のリバッジモデルなのではないか。つまり、マツダEZ-6とDeepal SL03との関係性と同じように、中国製EVのガワだけを変えたモデルである可能性が濃厚ということになるのです。 今回注目されているeπ007のスペックを概観しましょう。まずはBEVとともに中国市場で急速に人気が高まっているレンジエクステンダーEVもラインアップしているという点が重要です。EREVの場合28.4kWhバッテリーを搭載することでEV航続距離200kmを確保。45リットルのタンク容量を活用すると最大航続距離は1200kmを実現しています。BEVの場合、最大70.26kWhバッテリーを搭載することで620kmの航続距離を確保。Cd値が0.209と優れていることもあり電費性能も比較的優秀です。 また、AWDグレードの場合、デュアルモーターシステムによって最高出力400kW、最大トルクも640Nmを発揮。0-100km/h加速も3.9秒と俊敏です。 さらに最小回転半径は5.6m、20ものスピーカーシステムを搭載。1.8平方メートルという巨大なガラスルーフ、高張力鋼とアルミニウム合金の配合割合も71.5%と、衝突安全性を意識したボディの堅牢性を確保しています。 そして肝心な値段設定について、BEVとEREVともに日本円で280万円を実現しており、N7もコスト競争力の高い一台として期待することが可能でしょう。

TAG: #中国 #新型車
TEXT:桃田健史
メルセデス・ベンツとBYDが中国で合弁事業を解消! 「EVはまだまだこれから」という時期に袂を分かつ理由とは

BYDが騰勢(Denza)を完全子会社化 ドイツのメルセデス・ベンツは中国BYDとの合弁事業を見直す。両社は、BYDの高級ブランド「騰勢(Denza)」を手がける、深圳騰勢新能源汽車を共同で運営してきたが、ここからメルセデス・ベンツが完全に手を引く。 時計の針を戻せば、いまから13年前の2011年、メルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)が中国の新興勢力であるBYDとEVなどを共同開発するというニュースに、世界の自動車業界関係者は大いに驚いた。当時、BYDはまだ「知る人ぞ知る」といった存在であり、いまのようにグローバルでのEVリーダー的な役目を担うと想像した人はいなかったはずだ。 筆者は、2000年代に入ってから、いわゆるBRICsと呼ばれる新興国での取材活動が増え、そのなかで中国市場についても各方面での現地取材を行うようになっていた。 深圳に本拠を持つBYDについて記事として取り上げることも多かったのだが、まさかメルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)がBYDとの事業提携を行うとは予想していなかった。メルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)としては、アメリカでテスラと「スマート」を活用したEV共同開発を行う事例もあった。 つまり、メルセデス・ベンツにとっては、市場拡大が未知数のEVに関して、当時の世界最大自動車市場であったアメリカと、近年中にアメリカに代わって世界最大自動車市場の座につくことが予想された中国において、それぞれの国で将来有望なベンチャーEV企業の「お手並み拝見」といったスタンスだったのかもしれない。 それが2010年代から2020年代にかけて、中国はEV黎明期から一気に世界最大のEV市場へと躍進し、いまやBYDが日本を含むグローバル市場でも注目される存在となっている。 技術面から見れば、メルセデス・ベンツとしては、BYDとのファーストステージを解消する時期だと判断したものであろうし、BYDにとってはメルセデス・ベンツとの協業で十分な知見を得たということであろう。 法律上の観点から見れば、中国政府は2022年に乗用車向けの国内・販売についての外資規制を撤廃したことが、今回の2社の提携解消の背景にあると思われる。 外資が中国市場に参入する際、出資比率は最大で50%とされていた。EVに限れば、この規制は2018年に撤廃されている。メルセデス・ベンツは直近で、出資比率を10%まで下げていたが、これをBYDが買い取る形で、深圳騰勢新能源汽車は100%BYD傘下となったのだ。 メルセデス・ベンツとBYDによる合弁事業の解消は、中国自動車市場が大きな転換期に入ったことを象徴する出来事に思える。

TAG: #中国 #合弁会社 #外資規制
TEXT:TET 編集部
ホンダの新世代EV「e:NP2」と「イエ」シリーズはここから生まれる! 中国合弁会社「広汽ホンダ」の新工場が広州市に誕生

高効率・スマート・低炭素な生産体制を目指して建設 ホンダの中国における四輪生産販売合弁会社である広汽本田汽車有限公司(以下、広汽ホンダ)が、2024年12月23日から、中国広東省広州市に新設した「開発区新エネルギー車工場」と呼ばれる新工場の稼働開始を発表した。 ホンダは、中国国内に四輪車の生産販売合弁会社をグループ内に2社保有している。ひとつは東風本田汽車有限公司(以下、東風ホンダ)であり、もうひとつが今回新工場が稼働した広汽ホンダである。 前者の東風ホンダは、湖北省武漢市で2004年4月に第1工場を稼働させたのを皮切りに、2019年に第3工場の稼働を開始。それぞれ年間24万台の生産能力を誇る。そして直近の2024年9月からは、全世界のホンダの生産工場でも初の試みとなる、電気自動車(EV)専用の生産工場「新エネルギー車工場」を年間12万台の生産能力で稼働させている。 後者の広汽ホンダは、広東省広州市に拠点を構え、第1工場である黄埔工場を1999年3月に稼働させて以降、増城工場と呼ばれる第2・第3工場を2015年までに順次稼働を開始させている。3つの工場はそれぞれ年間24万台の生産能力を備えている。 その広汽ホンダの新工場「開発区新エネルギー工場」は、約34.9億元(日本円にして約750億円)もの金額が投じられ、高効率・スマート・低炭素な生産体制を目指して建設された。プレス・溶接工程においては、部品搬送の自動化により物流要員のゼロ化を実現し、AIによる溶接強度検査をホンダとして初採用。組立工程では、工程全体の約30%を自動化することで、高効率な生産ラインを実現しているとされている。 環境面では、工場敷地内に合計22メガワットの太陽光発電システムを設置し、再生可能エネルギーを活用することで、中国政府によるCO2排出に関する基準に対し、年間約1.3万tのCO2排出低減を見込んでいるという。 また、新開発した低VOC(揮発性有機化合物)塗料の採用や、工場排水に含まれる有害物質を100%処理できる設備の導入により、環境負荷の低減を図っている。工場からのVOC排出量は大気汚染への影響を最小限とするため、広東省の基準限度に対してさらに70%以上の削減を目指すとしている。 ホンダは「2050年にホンダが関わるすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現」というグローバル目標に向けて動いている。 中国においては、2022年に販売を開始したEV「e:N(イーエヌ)」シリーズに加え、2024年度に販売開始を予定している新世代EVシリーズ「烨(yè:イエ)」もあわせて、2027年までに10機種のホンダブランドのEV投入を予定している。 それらにより、ホンダは2035年までに中国でのEV販売比率を100%にまで押し上げる計画だ。 新工場「開発区新エネルギー車工場」は、その計画の要となる「e:NP2」と「イエ」シリーズの生産が予定され、年産12万台の生産能力を備える。まさにホンダが掲げる目標達成の道筋においては、重要なピースであるといえるだろう。

TAG: #ホンダ #中国 #生産
TEXT:石橋 寛
寒中EV航続距離レースでぶっちぎりの優勝! テスラを破った中国の高級EV「HiPhi Z」ってなにもの?

中国の新興EVメーカーから登場した「HiPhi Z」 寒くなるとEVはバッテリーの性能が低下して、航続距離や充電時間などが通常時よりも悪化する。 EVユーザーならば先刻ご承知かと思いますが、これをきちんとテストしている「極寒のEV航続距離レース」があるのはご存じでしょうか。1月とか2月、もっとも気温が下がり、積雪まであるというノルウェーの地で行われるテストで、各国メーカーのEVが競い合っているのです。 ご想像のとおりというべきか、2020年から3年はテスラが圧勝。ですが、2024年の冬はテスラ・モデル3が23台中22位という惨敗に終わっただけでなく、中国の高級EV「HiPhi Z」がトップに躍り出るという予想外の結果となったのです。 HiPhi Zは、中国の新興EVメーカーHuman Horizons(華人運通)が2022年に発売した4ドアセダン。GT-Rにどことなく似た顔つきや、4066個のLEDで構成される世界初のラップアラウンド・スターリングISDライトカーテン、120kWhという数値を誇る高性能かつ大容量なバッテリーパックを搭載し、航続距離705km、0-100km/h加速は3.8秒というスペックを引っさげての登場でした。 これが、ノルウェー自動車協会が主催する「El Prix」すなわち、毎年夏と冬に行われるEV航続距離レースに参戦。今回は気温がマイナス10°以下の環境で航続距離を競い合ったということです。ちなみに、El Prixは実際に走り切った航続距離のほか、WLTP基準の航続距離と、氷点下で実際に走行できる航続距離との差も明らかにしています。

TAG: #HiPhi #中国
TEXT:高橋 優
ドイツ御三家もポルシェも中国では厳しい戦い! もはやプレミアムセグメントでさえ中国のEVメーカーが席巻

ドイツ御三家にプレッシャーをかけるファーウェイ 中国市場におけるEVシフトの急加速によって、じつは日本メーカー以上に打撃を被ってしまっているドイツ御三家について、その苦しい販売動向を詳細に分析します。 今回注目するのが高級車セグメントです。とくに、その高級車セグメントでこれまで圧倒的なシェアを築いていたのが、アウディ、BMW、そしてメルセデス・ベンツというドイツ御三家です。中国人の間では、このドイツブランドという価値は絶対的であり、よってこれまで中国メーカーは、安いガソリン車を作り続けることで販売シェアを伸ばそうとしていたわけです。 ところが、ドイツ御三家が支配していたプレミアムセグメントに地殻変動が起こっています。まず、中国EVメーカーとしてNIOとLi Autoが2014年に設立。NIOは、バッテリー交換というコンセプトを打ち上げて、2024年5月から9月まで、5カ月間連続で月間2万台超を発売することに成功。 Li Autoは、当初はレンジエクステンダーEVのパイオニア的な存在として、とくにプレミアムセグメントを購入検討する富裕層の場合、EVが欲しいが急速充電に対する不安を抱える層が多かったこともあって需要とマッチ。 さらに、富裕層のファミリー層に特化した、高性能シートやエンタメ機能という快適性を追求することによって、これまで中国車が立ち入ることができなかったプレミアムセグメントで急速にシェアを拡大中です。直近の9月は5万台超という史上最高の販売台数を更新しました。 さらにその上、中国の既存メーカーも独自のプレミアムEV専門ブランドを次々と立ち上げています。BYDはDenza。GeelyはZeekr。SAICはIMモーター。BAICはArcfox。ChanganはAvatr。DongfengもVoyahなどを立ち上げています。 さらに、第三勢力として注目を集めているのが、シャオミとファーウェイというテック企業の存在です。 まずシャオミは2024年4月からSU7の納車をスタート。このSU7はプレミアムEVセダンの王者「テスラ・モデル3」を凌ぐEV性能を実現することによって、現在急速に販売シェアを拡大中です。 その上、現在ドイツ御三家に対してもっともプレッシャーをかけてきているのがファーウェイです。ファーウェイはマーケティング戦略をはじめ、ファーウェイストアで車両を販売するまでを包括的に担当するHarmony Intelligent Mobility Alliance、通称HIMAを設立。すでにSeresと立ち上げたAITO、Cheryと立ち上げたLuxeed、BAICと立ち上げたStelato、そしてJACと立ち上げるMaextroという独自ブランドをそれぞれ設立し、販売規模を拡大中です。 現在、月間4万台級の販売規模を実現しており、Li Autoとともに、中国のプレミアムEVセグメントで2強体制を構築しています。 そして、これらの存在によって、ドイツ御三家の販売台数に大きな影響が出始めています。とくに直近の2024年Q3でトップの販売台数を達成したのがテスラの存在であり、前年同期比で30.3%ものプラス成長を実現しています。また、NIOも前年同期比で10.1%ものプラス成長を実現。さらにファーウェイも11.3万台以上を売り上げて、前年同期比で8倍もの急成長を実現しています。そして、Li Autoも前年同期比で45.4%もの急成長を達成し、ドイツ御三家を上まわる販売規模すら実現しています。 その一方で、Li Autoに販売台数で抜かれたドイツ御三家の販売台数は減少傾向です。アウディは前年同期比で18.1%ものマイナス成長。メルセデス・ベンツも前年同期比で12.2%ものマイナス成長。そしてBMWはQ3単体で12.7万台と、ドイツ御三家としてはもっとも販売台数が少なく、ファーウェイの販売台数とも接近。しかも前年同期比30%ものマイナス成長です。

TAG: #ドイツ #中国 #販売
TEXT:高橋 優
BEV大国の中国はもはや「中国メーカー」だらけに! テスラ以外の輸入メーカーは惨敗という現実

BYDが圧倒的な存在感を放つ 中国市場における9月のEV販売動向の詳細が判明し、新車販売の2台に1台以上がすでにBEVかPHEVに置き換わり、BYDをはじめとする中国勢がさらに爆発的に販売台数を増加。そのBYDなどのプレッシャーにさらされている日本メーカーの危機的な状況について考察します。 まず、中国市場におけるBEVとPHEVを合わせた新エネルギー車の販売台数は112.3万台と、前年同月の74.4万台という販売台数と比較しても50.9%もの販売台数の増加を記録。そして、新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率は53.2%と、史上最高水準の電動化率を達成しています。 四半期別の動向も、Q3の新エネルギー車比率は52.74%と、史上初めて四半期でも50%の大台を突破。2023年Q3の電動化率が36.84%だったことからも、ここにきて電動化のスピードが加速していることがわかります。 また、バッテリーEVに絞った販売シェア率は、9月単体で30.54%と、こちらも史上最高水準の販売シェア率を達成。2023年Q3が24.73%だったことからも、バッテリーEVシフトが加速している状況です。 このグラフは、世界の主要マーケットにおけるバッテリーEVの販売シェア率の変遷を比較したものです。水色で示されている中国市場が欧米などを大きくリードしている状況であり、9月に1.75%だった日本と比較しても、その差は歴然です。 次に、9月に中国国内でどのようなEVが人気であったのか、そして2024年末にかけて、どのEVに注目するべきなのかを詳細に確認しましょう。 このグラフは、内燃機関車も含めたすべての販売ランキングトップ30を示したものです。ピンクが新エネルギー車、緑が内燃機関車を示します。トップはテスラ・モデルYで、BYDシーガル、BYD Song Plus、BYD Qin L、そしてBYD Qin Plusと続いていますが、ポイントは、トップ10のうち、なんと内燃機関車は日産シルフィとフォルクスワーゲン・ラヴィダしかランクインできず、トップ20に広げてみても、たったの6車種しかランクインすることができていないという点です。 つまり、すでに人気車種のマジョリティが、バッテリーEVかPHEVという新エネルギー車で占められているということを意味します。また、そのなかでも、トップ20のうちBYDが9車種もランクインしているという驚異的な支配構造も見て取れるでしょう。 次にこのグラフは、新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30を示したものです。黄色がバッテリーEV、水色がPHEVを示します。この通りBYDが13車種を席巻しながら、トップ20に限ると12車種、トップ10に限ると7車種、トップ5に限ると4車種を席巻。 同じくBYDの驚異的な支配構造が見て取れるでしょう。また、日本勢やドイツ勢などの海外メーカー勢はトップ30ではテスラ2車種のみであり、残りはすべて中国勢と、まるで販売規模では勝負になっていない様子も見て取れます。 また、このグラフはバッテリーEVに絞った販売ランキングトップ30を示したものです。この通り、黄色で示されたBYDがトップ20のうち8車種を席巻、トップ10に絞ると5車種を独占。2024年中旬から投入されている新型BEVが、さっそく上位にランクインしてきているという点も重要です。 具体的には、9月から納車がスタートしたばかりのXpengのMONA M03が第18位。4月に納車がスタートしたシャオミSU7も第14位。さらに、8月から発売がスタートしているGeely GalaxyのコンパクトSUV、E5も第13位にランクイン。 いずれにしても、新型EVの存在によって、ランキングトップ層の新陳代謝が行われている点も、この中国市場の競争の激しさが見て取れるわけです。

TAG: #中国 #新車 #販売
TEXT:高橋 優
中国でテスラ・モデルY包囲網が形成! この先日本上陸予定のZeekrの新型モデル7Xもまた脅威の中身だった

ZeekrからミッドサイズSUVがデビュー 日本参入が判明した中国Zeekrが、新型電動SUVであるZeekr 7Xの正式発売をスタート。テスラ・モデルYよりも40万円も安価な値段設定を実現しました。日本導入の可能性についても解説します。 まず、中国のプレミアムEV専門ブランドZeekrは、すでにZeekr 001、Zeekr 009、Zeekr X、001のハイパフォーマンスグレードであるZeekr 001 FR、Zeekr 007を矢継ぎ早に投入しながら、001と009のモデルチェンジも実施するなど、とにかく尋常ではないスピード感で規模を拡大中です。実際に販売台数という点でも、月間で2万台以上の販売規模を実現しており、これは中国国内のレクサスの販売規模を上まわっているレベルです。 そして、Zeekrは欧州や東南アジア、オセアニア、南米にも進出しています。さらに、Zeekrの副総裁が日本経済新聞に対するインタビュー内で、2025年中に日本市場に進出する方針を表明しています。 中国のプレミアムEVブランドが満を持して日本進出を表明! 「Zeekr」とはいかなるブランドでどんな車種をもつのか? そして、そのような背景において、Zeekrが新たに発表してきたのが、最新EVであるZeekr 7Xの存在です。Zeekr 7XはZeekr 007のSUVバージョンとして、全長4825mm、全幅1930mm、ホイールベースが2925mmというミッドサイズSUVセグメントに該当します。このサイズ感はテスラ・モデルYやポルシェ・マカンなどのサイズ感と同様であり、日本市場においても非常に扱いやすいサイズ感です。 まず初めにEV性能について、全部で3種類のグレードを展開しながら、Zeekr独自内製のGoldenバッテリーの第二世代、およびCATL製のQilinバッテリーを採用し、最長航続距離は780kmを実現。さらにQilinバッテリーの場合、15分間の充電時間で航続距離546km分を回復可能という充電性能を実現しています。 そのうえ、第二世代のGoldenバッテリーの場合、SOC80%までの充電時間は10.5分と世界最速を実現し、5分間の充電で241km分の航続距離を回復可能です。Zeekrはこの充電スピードを「充電5分で高速道路を2時間走行できる」というキャッチフレーズでアピールしています。 さらに、収納スペースもトランク部分だけで616リットルを確保しながら、7Xはリヤシートを前後に電動調整することが可能であり、前側にずらせば765リットルにまで拡大。ボンネット下のトランクも最大62リットルを確保しています。

TAG: #SUV #Zeekr #中国
TEXT:高橋 優
ホンダが中国で厳しい販売台数の落ち込み! 新EVの「Lingxi L」で巻き返しなるか?

ホンダ「Lingxi L」の使命とは? ホンダが新型EVシリーズとしてLingxiシリーズを中国で立ち上げ、EVセダンのLingxi Lの正式発売をスタートしました。現在、中国市場におけるホンダの厳しい販売動向とともに、そのLingxi LのEV性能から見えるホンダのEVシフトの現状を考察します。 まず初めに、現時点におけるホンダの中国市場における販売動向を改めて確認しましょう。 このグラフは、中国市場における大衆ブランドの月間販売台数を示したものです。現在、大衆ブランドで大きなシェアを有しているのがトヨタ・ホンダ・日産という日本メーカー勢、およびフォルクスワーゲン、そして中国BYDです。黄色で示されているBYDが、この数年間で急速に販売台数を拡大しており、直近の8月単体の販売台数は36.4万台を実現し、前年同月比較で58.3%もの急成長を実現しています。 その一方で、販売台数を大きく落としているのが、残りの大衆ブランドです。とくに日本勢として、トヨタは13.5万台と前年同月比で13.2%ものマイナス成長。日産も4.2万台と前年同月比で24.7%ものマイナス成長。そして今回のホンダは、8月に5.7万台の販売台数を実現したものの、前年同月比で44.2%ものマイナス成長を記録しています。ほんの1年前と比較して半分近い販売台数の落ち込みを記録していると考えると、現在ホンダは危機的な状況にあるといえます。 そして、このホンダはすでにEV専用シリーズであるeNシリーズを立ち上げており、2022年にe:NS1とe:NP1というコンパクトSUVの発売をスタート。さらに2024年4月からは、eNシリーズ第二弾であるミッドサイズSUVの、e:NS2、およびe:NP2の発売もスタートさせました。 その上、eNシリーズとは別に、「Ye(イエ)」シリーズというEV専用シリーズも立ち上げて、2024年度中にも、S7というミッドサイズSUVの発売をスタートする予定です。しかもS7の兄弟車であるP7、さらにはGTと名付けられた、クーペタイプのEVを2025年中に投入する計画です。 したがって、2027年までに10車種ものEVを投入する方針を発表しており、2035年までの完全バッテリーEV100%に向けて、ラインアップを急ピッチで拡充しようとしています。 そのホンダの新型EVの販売動向を見てみましょう。日本メーカーで唯一販売台数を稼ぐことができているのは、トヨタの大衆セダンのbZ3のみであり、ホンダのeNシリーズは、第一弾も第二弾も現状、まったく販売台数を伸ばすことができていない状況です。 そして、そのような背景においてホンダが中国市場に追加で投入してきた新型EVというのが、Lingxi Lというミッドサイズセダンです。じつはホンダは、eNシリーズとイエシリーズと並行して、さらに追加のEV専門シリーズとしてLingxiシリーズを立ち上げていたという背景が存在します。そしてようやく第一弾であるLingxi Lの正式発売をスタートさせてきた格好です。 このLingxiシリーズは、とくに若者世代をターゲットに据えて、最新テクノロジーを盛り込むことを意識したシリーズという立ち位置です。まず、エクステリアデザインが極めて斬新です。一部では過剰であると指摘されているデザイン言語が、中国の若者にどれほど受け入れられるのかが気になるところでしょう。 さらに、インテリアデザインは、インストルメントクラスターとともに、12.3インチのセンターディスプレイと、助手席用のディスプレイ。さらに7インチのデジタルサイドミラーのディスプレイという配置は、日本国内で発売されていたHonda eのデザインと酷似しています。 確かに現在、中国市場における主流のデザイン言語というのは、大型のタッチスクリーンを複数搭載するような場合が多いものの、やはりそれ以上に重要なのは、そのディスプレイがどれほどレスポンシブに動作するのか、そしてディスプレイを通じて何ができるのかという点です。したがって、中国の若者がこのインテリアデザインに対してどれだけ受け入れられ、その操作性の高さをアピールすることができるのかが問われることになるでしょう。 他方で、個人的に注目しているのがEV性能です。とくに直近において、この大衆EVセダンで爆発的人気を獲得しているのが、XpengのMONA M03です。すでに発売開始48時間の段階で3万台以上の確定注文を獲得しており、いまだにその勢いは止まらない状況です。よって現在、中国市場における大衆セダンEVの新たなベンチマークとなっているXpeng MONA M03と比較して、今回のLingxi Lがどれほどの競争力を有しているのかを比較していきましょう。

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TEXT:高橋 優
電動化の失速どころかEV&PHEVがバカ売れ! テスラもドイツ御三家も押し出す中国メーカーの勢い

2024年6月の新エネルギー車の販売台数は85.6万台 中国市場における最直近の6月のEV販売動向の詳細が判明。中国の歴史上最高の電動化率を更新するという快挙を達成しました。 まず、中国市場におけるバッテリーEVとPHEVの合計を示した新エネルギー車の販売台数は85.6万台と、前年同月の66.5万台と比較しても29%もの販売増加を記録しました。そして、新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率は48.44%と、歴史上最高の電動化率を更新してきた格好です。2024年に突入して以降、新エネルギー車への需要が増大、そのペースがまったく衰えず、むしろ加速している様子すら見て取れます。 他方で、新エネルギー車のなかでもバッテリーEVとPHEVの販売割合という観点も注目です。 2021年6月時点での新エネルギー車全体に占めるバッテリーEVのシェア率は81.22%と、バッテリーEVが圧倒的なシェア率を示していたものの、直近の2024年6月単体では57.59%と、PHEVのシェア率が急速に増加している様子が見て取れます。よって、現在の中国国内で売れている新エネルギー車の販売割合は、バッテリーEVが6割、PHEVが4割というイメージとなります。 そして、バッテリーEVに絞った販売シェア率の変遷にも注目すると、6月単体のシェア率は27.9%を達成。四半期ベースでのシェア率も、Q2は27.81%と、過去四半期と比較しても圧倒的な伸びを実現しました。いずれにしても、確かにPHEVの販売シェア率が急増しているものの、同じくバッテリーEVも史上最高のシェア率を更新中であり、EVシフト減速とは無縁の世界線である様子が見て取れるでしょう。 次に、中国国内でどのような電気自動車が人気であったのかについて、車種別販売動向を確認しましょう。 初めに、6月に限った、内燃機関車も含めたすべての販売ランキングトップ30を確認しましょう。ピンクが新エネルギー車、緑が内燃機関車を示しています。トップに君臨したのがテスラ・モデルYです。その後にBYDの大衆セダンQin Plus、BYDシーガル、BYD Song Plus、そして日産シルフィと続いていきますが、トップ10のうち、なんと内燃機関車はシルフィを筆頭として、たったの3車種しかランクインすることができていません。トップ20に広げてみてもたったの6車種です。 つまり、すでに人気車種の圧倒的マジョリティが新エネルギー車で占められてしまっているということを意味します。 次にこのグラフは、新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30を示したものです。緑がバッテリーEV、水色がPHEVを示しています。BYDが14車種を席巻しながら、トップ20に限ると9車種、トップ10に限ると7車種と、BYDの王者の貫禄が見て取れます。 他方で、今回注目するべきは、第12位にランクインしたAito M7、および第14位にランクインしたAito M9の存在です。このAitoはファーウェイが支配権を有する自動車ブランドであり、着実にファーウェイが中国EV市場でプレゼンスを高めている様子が見て取れます。 そして、第11位、および第30位にそれぞれランクインしたBYDのQin L、Seal 06も見逃せません。5月末から正式発売がスタートしている第五世代のPHEVシステムを搭載した両車種は、瞬く間に販売台数を伸ばして、すでに中国の人気車種の一角を構成しています。

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TEXT:高橋 優
日産が中国の工場を閉鎖! シルフィの販売台数減少がそのままダメージになる中国市場の厳しい現状

生産開始から4年足らずで閉鎖 日産が中国国内の車両生産工場のひとつを閉鎖する方針であることが判明しました。現在、日本メーカーに襲いかかる中国メーカーのプレッシャーについて、そのなかでも日産がとりわけ、なぜ中国市場で減速し始めているのかについて解説します。 これまで日産については、中国国内において160万台もの生産キャパシティを有しており、8つもの車両生産工場を稼働していました。ところが今回、上海の西側に位置するChangzhouの車両生産工場を閉鎖する方針が判明しました。このChangzhouの車両生産工場では、これまでコンパクトSUVセグメントで、欧州などでも発売されているキャシュカイの生産を行っており、年間生産能力も13万台規模と、中国市場の生産能力を支える工場のひとつだったわけです。 他方で、そのChangzhouの工場に関して重要なポイントというのが、2020年の11月に生産をスタートしてから、たったの4年弱しか経過していなかったという新工場という点です。よって、そのような新工場をこの短期間で閉鎖するということ自体が、日産の中国国内における混乱模様を示唆しているのではないかと感じます。 そして、中国市場における日産に関しては、この生産工場閉鎖の流れが、今後さらに加速していくのではないかと懸念します。 というのも、このグラフは、2019年以降の、日本勢などの主要大衆ブランド中国国内の年間販売台数の変遷を示したものです。このとおり、紫で示されている日産は、2019年シーズンで120万台近い販売台数を実現。ところが2023年シーズンでは70万台を割り込んでしまっている状況です。 また、日産が中国国内において抱えている問題点というのが大きくふたつ存在します。 第一に、日産ブランドにおける電気自動車の需要が壊滅的であるという点です。というのも、すでに日産は2022年10月からアリアの発売を中国国内でもスタートしました。 このグラフは、マーケット別のアリアの販売台数を示したものです。紫で示されている中国市場の販売台数を追ってみれば一目瞭然。ほとんどの月において、月間500台も売り捌くことができていない状況です。 中国国内では、現在アリアは20万元弱、日本円で440万円からの発売。ところがディーラーにおいて、さらに全グレード一律で5.5万元もの値引き措置を断行中であり、よって日本円で319万円から購入可能という、まさに破格の値段設定です。投げ売り同然の値段設定だったとしても、中国人には刺さっていないということを意味するわけです。 すでに日産については、中期経営戦略The Arcにおいて、日産ブランドから4車種、合弁ブランドであるVenuciaからも含めて8車種もの新エネルギー車を、2026年度までに中国国内に投入する方針を表明済みです。投げ売り状態のアリアでさえこのような販売状況であるにも関わらず、果たして、いくら新型EVを投入したところで、期待どおりの販売台数を実現できるのか。抜本的な販売戦略を実行せずに、新型EVをいくら投入したところで焼け石に水なのではないかと懸念せざるを得ないわけです。 また、日産の抱える第二の問題点というのが、中国国内における販売攻勢比率です。このグラフは、中国国内のモデル別月間販売台数の変遷を示したものです。 最直近の2024年5月単体では、今回閉鎖されたChangzhou工場で生産されていたキャッシュカイが1万台強程度を発売しているものの、黄色で示されたコンパクトセダンであるシルフィが、圧倒的な販売シェアを実現。なんと日産ブランド全体の販売台数のうち56%を占めているレベルです。

TAG: #中国 #常州工場

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