IIJインフラから見たインターネットの傾向 〜2024年(IIR vol.65 1章)

2024年12月20日 金曜日


【この記事を書いた人】
IIJ Engineers Blog編集部

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2024年12月に発行されたIIJの技術レポートIIR vol.65 の第1章では、年に1度の定期観測レポート「IIJインフラから見たインターネットの傾向 〜2024年」をお届けします。

インターネットサービスを提供するIIJは、国内でも有数規模のネットワーク・サーバインフラを運用しています。運用によって得られた情報の中から、この1年間のインターネットの動向について、BGP経路・DNSクエリ解析・IPv6・モバイルの各視点から変化の傾向を分析しました。今回はインターネットバックボーンのトレンドについても紹介しています。

ここではレポートの内容をいくつかのポイントに絞って簡単に紹介します。ご興味を持たれた方はぜひ本編も併せてお読みください。

本報告のポイント

  • Theme 01 BGP・経路数
    • BGP・経路数の増減を観察することで、インターネットに接続する組織がどの程度増えたか、インターネットがどの程度拡大しているかを類推することができます。今回の観測によるとIIJ網から他組織に広報しているIPv4フルルートの経路総数は約95万で、昨年の2倍以上増加しましたが、過去10年で2番目に少ない増加数でした。2018年をピークに減少傾向が継続しています。一方、IPv6フルルートの経路総数は昨年と同程度の伸びを維持し20万を超えました。/29の増加数が初めて4桁になるなど、IPv6の導入やIPv6ネットワークの拡大が順調に進んでいることが窺えます。

「IPv4 フルルート」経路の総数及び年間増加数の推移

  • Theme 02 DNSクエリ解析
    • DNSクエリの観測からはインターネットに接続された端末の挙動の一端を推測することができます。2024年10月9日の観測データによると、DNS問い合わせは時間帯によって変動し、ピークは夜21時50分頃で0.32query/sec、最小は朝4時25分頃で0.15query/sec程度でした。IPv6の利用が増加し、問い合わせの41%を占めました。
    • 問い合わせのレコードタイプに注目すると、全体の98%をAレコードとAAAAレコード、HTTPSレコードが占めています。2020年から観測しているHTTPSレコードの問い合わせに今回初めて減少傾向が見られました。クライアントの実装変更が影響していると考えられます。2022年から観測をはじめたSVCBレコードの問い合わせは順調に増加しており、クライアントが暗号化に対応したフルサービスリゾルバを検出するための新しいプロトコル提案の実装が進んでいることが示唆されています。

クライアントからのIPv4による問い合わせ

クライアントからのIPv6による問い合わせ

  • Theme 03 IPv6& モバイル
    • IIJバックボーンのIPv6トラフィック量、送信元AS、主なプロトコルを調査したところ、トラフィック量は期中微減、昨年比約14%強の増加、IPv6の利用率はほぼ横ばいの20.16%でした。IPv6トラフィック量を送信元ASで見る(6割以上を占めるIIJを除く)と、昨年2位だった米検索大手A社が全体の6%で1位となり、1位だった日本の大手コンテンツ事業者B社が全体の5%で2位になりました。利用プロトコルは、IPv4に比べてIPv6の方が比較的新しく構築されたサーバが多いとみられ、暗号化HTTPS系プロトコルが8割以上を占め、非暗号化HTTPは微量となっています。一方、IPv4では非暗号化HTTPがまだそれなりにある状態です。
    • IIJ個人向けモバイルサービスの端末OS別IPv6接続状況を調査したところ、Android系OS端末でIPv6有効化率が昨年より5ポイント上昇し60.6%と全体で2ポイント弱上昇していることが分かりました。また今年発売されたある新製品でIPv6有効率が97.6%と非常に高かったことから、新端末のAPN設定でIPv6がデフォルトで有効化されているように見受けられます。インターネットのIPv6への移行のためには、利用者が意識しなくてもIPv6を利用する環境が必要になります。そのため、今後も出荷状態でIPv6有効化された端末が増えていくことが望まれます。

UEメーカIPv6有効化状況(上位20社)

  • Theme 04 インターネットバックボーンのトレンド
    • トラフィック交換にかかる費用削減や通信品質向上を目的に近年、ISP事業者間で相互接続インタフェースを10Gから100Gに見直す動きが進んでいます。IIJのインターネットバックボーンインフラで使われている相互接続インタフェースの割合を調査したところ、直近1年間で10Gインタフェースの利用が55%から47%に減少し100Gが40%から48%に上昇していることが分かりました。IIJでは引き続き、10Gから100Gへの増強を推進しています。一方、400Gの利用はIXP事業者では比較的進んでいますが、それ以外の事業者での利用はまだ限定的です。
    • インターネットの経路情報の正当性を検証し、経路ハイジャックなどの不正を防ぐために必要なRPKIの状況を確認したところ、全IPv4経路におけるValid(ROA登録・経路検証済)の登録割合が50%を超えて半数以上の経路で正当性が担保され、Invalid(ROA登録状況に差異があり不正経路として扱われるもの)の割合が0.47%だったのに対して、IPv6ではInvalid経路が依然として4%以上あることが分かりました。IIJが生成・広告しているインターネット経路のROA登録状況を確認したところ、ユーザの経路をトランジットしている割合も含めると、全経路の52.8%がROVでValid判定されており、日本国内においてもROAの発行が進んできている状況が見て取れます。

IIJインターネットバックボーンにおける相互接続インタフェースの割合(2023年10月)

IIJインターネットバックボーンにおける相互接続インタフェースの割合(2024年10月)

本レポートの全文はこちらからご覧いただけます。

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