詩 『手のひらの宇宙(空)』

 

全てを奪われた男

頭と身体と心は健康だった

0の通帳に1と0をたくさん描き

世界1のお金持ちになった

 

世界の全ての図書館も彼のもの

図書館という自分の本棚から

毎週10冊の本を取り出し

海辺や森の中で読んで

また本棚に戻しに行くのが趣味だった

 

全ての企業の会長でもあった

たまに従業員のふりをして

自分の会社を確かめるために

潜入してアルバイトをする

 

海と山も彼のものだった

釣りをして山菜をとり

裸になり日光浴をして泳ぐ

 

人々は彼を狂人だといったが

正気な人間よりたくさん持っている

自然と人間を愛し

信頼できる家族と友人がいた

 

良き思い出と未来への希望

好奇心に溢れ

人生に対する憂いは無かった

 

好きな時に好きな場所に行き

眠りたい時に眠っていた

人生僅か100年

 

全て持っているのに

それを全て捨てて

小さなものを追い求める

 

満点の星星も

母なる土も太陽も

全てを与えてくれる

 

頭と身体と心を鍛えれば

全ては思いひとつだったのさ

人生全てを奪われても

宇宙の全てがここにある

 

どんな大きな怪獣も

飲み込むことなどできはしない

全ては思いひとつ

生まれた瞬間 

その手に全てはあったのさ

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