December 18, 2023

アマゾンも臨戦態勢、中国発産直越境EC対策で衣料品の手数料下げ

Dsc0907112月12日の日経新聞によれば、アマゾンは、中国系EC、特にSHEINに対抗するために米国で衣料品の手数料を大幅に下げる戦略を打ち出したとのこと。

アマゾン、米で衣料手数料下げ 中国系ECに対抗

2024年1月から、15ドル未満の衣料品の手数料を17%から5%へ、15ドル~20ドルの商品は10%へと削減するようです。

これは、中国の中小縫製工場を利用し、低価格で大量の新製品を出すSHEINのような企業への対策として注目です。

SHEINは、安価で多様な商品を提供し、11月に米国でのIPOを申請した模様。これに対し、アマゾンは衣料品で米EC市場の約4割を占めているものの、SHEINの成長に脅威を感じていることがわかります。また、今後、EC機能の強化を図るTikTokとの国内競争も激化することでしょう。

コロナ禍を機に世界で急成長を果たしたShein(シーイン)、それを追うTemu(ティーム―)、景気が回復しない国内市場から越境での海外向けに商品を販売したい中国製造業は、今後、ますます増えることでしょう。

これはアメリカだけに起こっている話ではありませんね。

日本の小売市場においても、このような海外で起こり始めている動向の中には

今後の大きな変化の予兆として、重要な示唆があるため見逃してはいけません。

特にオンラインの場合は、オフラインと違って、気づかないうちにそうなっていた、

ということにもなりかねませんからね。

対岸の火事と思わずに、自分ごととして、動向に注目したいものです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

「図解 アパレルゲームチェンジャー

 ~流通業界の常識を変革する10のビジネスモデル」(日経BP社)

第2章ではSHEIN(シーイン)のビジネスモデルを

従来のグローバルアパレルチェーンの成長の方程式と比べることで

浮き彫りにしてみました。

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図解 アパレルゲームチェンジャー

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December 04, 2023

SHEIN(シーイン)が米国で上場申請 米国アパレルブランド売上ランキングから見る、アメリカアパレルの興亡と新興勢力の台頭

20180816_11542211月27日にSHEIN(シーイン)が米国で上場申請をしたという報道がありました(ロイターなど)。

同社の上場に関しては米国議会の議員から様々な圧力をかけられていましたが、踏みきる条件が整ったということでしょうか?

早くて来年、10兆円を越える時価総額の大型上場になる見込みです。

この報道があった日のZARAのインディテックスの株価時価総額は約19兆円、ファストリは約12兆円でした。

シーインの売上高は、2022年度 3兆円くらいというメディア報道があるので
売上が公開された時は世界第2位の売上規模、あるいは、ZARAインディテックスとトップ争いということになっているかも知れません。

同社にはいろいろな指摘や憶測が飛び交っていますが、同社が上場してベールを脱いだ時、どんなビジネスモデルなのか?

これまでのチェーンストア型の大手の手法とは全く異なる姿が明らかになるのが楽しみです。

同社のビジネスの最大マーケットは世界最大のマーケット、アメリカです。

アメリカのアパレルチェーンが米国内または北米でいくらくらい売上げているのか
最新決算期の情報から目ぼしいところをブランド単位で拾ってみましたので紹介したいと思います。

オールドネイビー     1兆792億円

ビクトリアズシークレット  7,504億円

ルルレモン         7,376億円

H&M            4,583億円

アメリカンイーグル     4,255億円

GAP            3,402億円

バナナリパブリック    2,221億円

ホリスター       約2,000億円

アバクロ        約1,700億円

ユニクロ         1,639億円

海外メディアによればSHEINのアメリカでの年商は5000億円超ということなので

現段階では、ルルレモンとH&Mの間くらいでしょうか?

ZARAの国別売上は非公開ですが、
IR資料から推測するに、世界シェア16%のスペイン本国の次に大きいマーケットということなので
おそらく、上記のGAPの次くらいになるのではないかと思われます。

この米国あるいは北米のアパレルチェーンの売上ランキングの数字を眺めて
みなさんはどんなことを感じましたでしょうか?

筆者は

さすが世界最大のアパレルマーケット、
メジャープレヤーの売上規模の大きさと

かつて世界一だったGAPブランドが
そこまで売上を落としていたのか、ということと

そしてユニクロの米国市場の伸び代でしょうか。

日本はもちろん、中国ももはや

「伸びしろ」は越境ビジネスです。

世界最大であり、成長を続けるアメリカマーケットでの各社動向は
グローバルビジネスに影響をもたらすことを意識して
注目しておきましょう。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

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November 20, 2023

伊藤忠商事が中国からの越境EC(BtoB)企業に出資。チェーンストア向けの販路の拡大を目論む。

20230523_102940日経新聞によれば、総合商社大手の伊藤忠商事が、中国製品の越境ECを手掛けるスニフ社(杭州)と合弁会社を設立し(出資比率 スニフ51%伊藤忠49%)、日本未発売商品を中心に中国製品を日本の小売チェーンのバイヤーが買付けすることを支援をするようです(越境ECという形で BtoB輸出入を支援)。

小売業のバイヤーは少量から仕入れることが可能で、発注から店舗への到着まで最短2日程度で納品出来るそうで、出資先は、早期に年50億円規模の事業規模に育てる目標。まずは、伊藤忠が提携関係にあるドンキホーテ向けに取引を始めるようです。

スニフと言えば、中国のECサイト、アリババで国内取引される多数の商品の中から、品質が良く、価格が安いメーカーを選りすぐり、「THE直送便」の名でアマゾンや楽天などで販売する事業者に向けに越境BtoBビジネスを支援して急成長している会社。

杭州のアリババ本社の敷地内に本社があるほど、アリババと親しい関係があることで知られていたベンチャー企業です(社長さんは中国人ですが、日本に留学し、日本の商社でも働いていた日本通の起業家のようです)。

毎年、経産省が調査報告している「電子商取引に関する市場調査報告書」の2022年度版、越境ECに関する情報によれば、あくまでも、BtoC(消費者向け)ですが、

日本から中国に対して 2兆2569億円もの越境ECが行われているのに対して
中国から日本向けのそれは 392億円しかない ことが記されています。

要は、中国人は日本製あるいは日本企業クオリティを信頼して積極的に越境EC購入をしているのに対し、日本人は中国から個人で直接EC購入することには品質や商慣習的に抵抗があるということでしょう。

これまで、中国からの製品輸入と言えば

・商談ベースのBtoB(企業間)OEM生産から始まり

・製品市場(いちば)やタオバオのような卸向けのマーケットプレイスから事業者(卸売りまたはEC販売をする企業・個人事業主)既製品を買付ける(BtoB)ビジネスが広がり

今や、

・SHEIN(シーイン)やTEMU(ティームー)がCtoC(一般消費者向け)の市場を開拓中です。

上記に対して、伊藤忠とスニフの取り組みは

・日本でまだ知名度のない中国メーカーの製品の中から安心できるメーカーや製品を選び
小売チェーンのバイヤーが手軽に買うことができるECのBtoBプラットフォームづくりを始める

と整理すればよいでしょうか。

中国市場は不景気の真っただ中、これまで巨大市場である国内を向いてビジネスをしていたメーカーも海外
に目を向けざるを得ない時

中国国内の内地向け在庫も景気が悪く、積み上がっていることでしょう。

仕入れるバイヤー側も、BtoBと言ってもコスト重視のバルク(大量)発注ではなく、
必要な時に必要な分だけ仕入れる、そのために出張はしなくても済む、ECを経由してBtoB向けにも
小ロット輸入(とは言えチェーンストア向け)が増えるであろうことに
目をつけた伊藤忠とスニフの取り組みはこれからの中国からの輸入ビジネスの新しい幕開けと言えるかも知れません。

これから、在庫を抱えた中国メーカーのはけ口として、このようなプラットフォーム経由でBtoB型で海外市場に出回ることは

昨今のSHEINやTEMUの急拡大を見れば、想像に難くありません。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

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November 13, 2023

中国発越境EC企業に学ぶ、新しいビジネス(商売)の作り方

20231113_16522411月13日の日経新聞に

中国発EC、米で急伸 という見出しで

中国を拠点にする越境EC 企業である
SHEIN(シーイン)と TEMU(ティーム―)のアメリカでのシェア拡大に関する記事が掲載されていました。

記事によれば、
アメリカでの今年10月の両社のアプリ月間利用者数は1億1000万人と前年比4倍
(これはあくまでもアプリ利用の数です)

その数はアメリカにおいて、Eコマース最大手アマゾンの利用者の9割に迫り、日本でのデータにおいてもアマゾンの6割に迫るとのこと。

SHEIN はアメリカでのビジネススタートから約10年が経過していますが、
直近の1年間でも倍になるという伸び、

TEMUは昨年22年9月のサービス開始から急増し、アメリカでの
アプリのダウンロード数はSHEINを上回り、トップを争っているようです。

SHEINのインフルエンサーを活用したオンラインマーケティングと国内の小ロット短サイクル生産を組み合わせたビジネスモデルは

中国国内においては、あたりまえで、新規性はなく、

そのため、同社はレッドオーシャンな中国国内市場を捨て、海外にその活路を求めて、見事に成功しました。

それゆえ、SHEINの中国国内での知名度はなかったため、競合企業がその急成長に気づくのが遅く、

SHEINの独走を許してしまったという背景があります。

それを、中国大手企業傘下のTEMUらが猛追するという構造です。
 
そもそも、SHEINとTEMUは同じように語られますが、ビジネスモデルは違います。

アパレル、雑貨中心で、自ら商品企画を行っているSHEINに対し(ODMや国内外のブランド仕入もありますが・・・)

TEMUはアパレルもありますが、雑貨全般でメーカー在庫を消費者とダイレクトにつないで販売するプラットフォーマー的(アマゾンのような)な調達の違いがあります。

価格が激安な理由は

ローカルの中間業者やバイヤーを介さない
「産地直送」だから。

そして、免税措置という

各国の「政府が決めたルール」を上手く利用しています。

いわゆる「中抜き」、であって
既存の、流通経路を崩しているのは確かですが

果たして、これをダンピング(不当廉売)と言ってよいのだろうか?

と報道記事を読んで違和感を覚えることがよくあります。

実際、日本から広州に買い付けに行っている方が

「彼らは我々の市場での買い付け価格で日本の消費者に売っているから、

価格では到底敵わない」

と嘆いていらっしゃったのが印象的でした。

業界の中には

最近報道されないから、ブームも去って下火だろ

とか

原宿のショールーム店もガラガラだし、

と言う方もいるようですが

とんでもない、

報道されないのは、メディアにとってメリットがないからであって、

周りに利用者や話題は着実に増えているし

シーインは女性中心
ティームーは男女共に(男性も少なくありません)

低価格やティーンズ・ヤング向けのアパレルチェーンに行って耳をすませば

「これ(同じような商品)、シーインだったらいくらだった」

という会話が聞こえて来ます。

オンラインという目に見えない拡大だからこそ
危機感を持たないのがおかしい

そんな話を先週も

カジュアルアパレルチェーンの経営者さんや
eコマースのプラットフォームを提供する企業の社長さんとも

世間話をさせて頂いたところでした。

彼らが「個人輸入」を販路にしていることについて、

中間業者の方は
政府が輸入規制するのを期待するのではなく、

むしろ、なぜ彼らが成長しているかを
是非考えたいところです。

ある意味

産地からの逆襲であり

リードタイムを短くして
在庫リスクを回避する
サプライチェーンのショートカット

という 

しがらみに囚われない

イノベーターというか、パイオニアというか
ゲームチェンジャー的な
商売人のアプローチを採っているのであって

「ずるい」と言うのではなく

「もし、あなたが今から新規ビジネスを始めるとしたら?」

どうするかを自問してみたいところです。

マーケティングは世界中のどこにいても
オンラインでリアルタイムにできる時代なら・・・

サプライチェーンは
材料がすべてが揃う、需要にあわせて
すぐにつくって配送できる

そんなところに拠点を置くことを
考えるべき時代であって

SHEINは

それに気づいて
地の利のある
広州を拠点にしたわけで

すでに広州だけでなく、
更なるグローバル化を標ぼうして

ブラジルやトルコにおいて
グローバルサプライチェーンの構築を着々と進めているのです。

同じことを考えて

韓国の調達ルートを見直したり

問屋街を背景にしたり

生地問屋街に拠点を置くことを考えている方々もいらっしゃいます。

アパレルに限定しなければ
もっと幅広い発想ができるのではないでしょうか?

流通は目に見えないところで
大きく変わっています。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

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September 19, 2023

【このセミナーは終了しました】「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナーby WWDJAPAN

Wwd929コロナ禍を経て
世界のファッション流通マーケットの強豪たちは
いったいどんな風に変わり、どこへ向かっているのか?

毎年このブログでもリリースしている
世界アパレル専門店企業売上高ランキングをベースに

各社の動向やこれから10年の勝ち残りのカギを探ります。

2022年版ランキング公開から半年が経過してますので、その後の動向も付け加えてご説明させて頂きます。

グローバル時代、世界の動向は少なからずローカルマーケットに影響を及ぼします。

世界の流れを読み、国内ビジネスにどう取り入れるか、そんな視点を得て頂ければ幸いです。

9月29日(金) 13:30~15:00 オンライン

WWDJAPAN主催 有料セミナー

「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー

講師:「ユニクロ対ZARA」著者 ディマンドワークス 齊藤孝浩

お申込みはこちらから 
https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)

 高収益企業の決算書を図解すると見えて来る、従来の業界の常識とは真逆のアプローチとは?

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July 10, 2023

中国産地で思い出される日銭商売である小売業の原点

20230523_1058195月にSHEIN(シーイン)の生産背景である中国広州のアパレル産地視察で考えさせられたことが
いまだに頭から離れないでおります。

シーズン単位で事前に見込み生産をすることが
あたりまえになってしまっているアパレル業界において

広州で盛んに行われている
5日間で100枚をつくって納める小ロット生産は

生産者は素材の用意さえがあれば、すぐに作ることができ

商品を納品されたEコマースの販売者はすぐに売り始めることができます。

従って、Eコマース事業者は
消費者からの現金回収も速くできるわけで

速く、回収できた現金を
サプライチェーンに回すことができれば

関係各社は資金繰りの心配も少なくなり

従業員にも、仕入先にも
早く支払うことができるようになるわけです。

SHEIN(シーイン)ら、IT業界から来た産直越境EC企業らは

最速で週ごとに納品商品の代金をサプライヤーに支払うことを知りました。

そんな誰もがわかる

サプライチェーンが潤う単純なロジックに対して

一方、近年、主流になっている大量生産はというと・・・

確かにロットを大きくすることで、原価は安くなるかも知れませんが・・・

素材の用意から

  ↓

製品をつくり始め

  ↓

完成品を売り始めて

  ↓

代金が回収できるまで

販売期間と比べて、
果てしない時間がかかるわけで

生産中はサプライチェーン各所に

原材料や仕掛在庫を含む
在庫=キャッシュを寝かせてしまうことになる

そんなことが 実際、生産現場各所で起こっているわけです。

そうすると、現金化に時間がかかるため

仕入先には支払い期日を先延ばししてみたり

資金が足りなくなる場合は銀行借り入れによって資金を繋いだりしているのが現実。

関係者みんなが頑張っても・・・

販売現場では過剰に抱えた在庫を値下げ販売する悪循環。

これって、いったい、何のために、
誰のために仕事をしてるんでしょうね。

以前、バングラデシュで生産する
商社の方に伺った話を思い出します。

バングラデシュの大手の工場主は売上高をたくさん得たいために

何十万枚、時には何百万枚の受注を要望すると言います。

ところが、そんな大ロットだと

素材の調達にも時間がかかり、納品するまで時間がかかるため

納品が完了するまで

従業員に給料が払えない
原料代金も払えない

という状況に陥りがちとのことでした。

コストは安くなるけど

サプライチェーン各所にキャッシュを寝かし

販売にあたっては値下げ在庫処分のリスクをはらむ大量生産

一方、

コストは多少高く、当初値入は少なくても

関係者がキャッシュで潤い値下げリスクも小さい、小ロット多頻度生産

はたして、一体どちらがいいのでしょうかね?

安く仕入れても
多くの売れ残り在庫を抱えた
現場をたくさん見て来ました。

一方、あぁ、もう少しつくればよかったね

と言いながら

次のコレクションを
前倒し販売していた時もありました。

双方を思い出せば

どちらが上手く行っていたかは明らかです。

これって
実際、冷静に原価計算をしてみれば
原価が安いことよりも
値下げが少ない方が儲かることがわかるはずなのに、

組織が大きくなればなるほど
仕入れ担当者のひとりの判断で出来ることではなく

会社のルールを変える必要があることなので
トップやリーダーの覚悟がいることだとしみじみ感じます。

かつて、アパレル専門店の経営者さんたちは
起業して間もないころ

1カ月分の在庫を仕入れて店頭に並べ、

売った代金で来月売る商品を仕入れに行く
そんなことを繰り返していたころがあったと思います。

そのころは、
在庫日数、30日!在庫回転率は10回転以上!

でまわっていたのではなかったでしょうか?

そんな経営者さんも、最近は見込み仕入や見込み生産が増え
在庫回転率が落ち、支払いをいかに先延ばしするかを考えている
なんて話もよく耳にします。

まさか中国の広州で、忘れかけていた

小売業の日銭稼ぎ商売の原点を思い出される
ことになるとは思いませんでした。

今一度、キャッシュフローを重視した小売ビジネスの原点を
思い直す時、と感じる今日この頃です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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June 12, 2023

SHEIN(シーイン)を支える生産背景、中国広州アパレル産地レポートがWWDJAPANに掲載されました。

Shein-hqWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

6月12日発売の連載 第50話目に、ウルトラファストファッションSHEIN(シーイン)の本拠地である中国広東省広州のアパレルサプライチェーンの現地視察レポートをまとめさせて頂きました。(筆者が5月下旬に実際に視察したもの)

世界の工場である中国の、アパレル一大産地である広州は生地、付属品の現物在庫を抱える巨大な市場があり、製品を5日でつくる背景を支えています。

そんな産地で取材をした中で、最も印象的だったのは、

SHEIN(シーイン)のようなIT業界から来たゲームチェンジャーたちが中心になって、
速く納めてくれるサプライヤーには、すぐに払う、

一方、バイヤー側は速く払うために、速く売ってキャッシュに換える、
既存の業界とは対極にあるキャッシュフロー経営が進んでいました。

安く作るために、大量受注、大量生産をしてしまっては、リードタイムも長くなり
サプライチェーン上の各所に溜まる在庫にキャッシュを寝かすことになりますが、

小ロットなら、多少コストが高くでも、
むしろ、速く換金でき、

サプライチェーン全体のキャッシュフローが豊かになるというメリットを
あらためて産地で考えさせられた次第でした。

世界のメディアでは、SHEIN(シーイン)のネガティブな面が大きく報道されますが、

実際、産地に行ってみると、メディアでは報道されない、

日銭商売である小売業として、我々も見習うべき

目から鱗の「商売の原点」をたくさん耳にすることも出来ます。

SHEIN(シーイン)は、

他にも業界のどんな常識を覆すことで、急成長したのか?

今後もアンテナを立てて、リサーチを続けたいと思います。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

シーインのウルトラファストサプライチェーンの秘密を中国・広州で探る

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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May 22, 2023

世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

Lulu-santa-monica

世界的なパンデミックを経て、躍進し、最高益を更新する企業と苦戦が続く企業の明暗が分かれた2022年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例の売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2023年1月末の €=141.3円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=130.5円、英国£=161.3円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2023.1期) 4兆6,019億円 +15.1% 7,799億円 16.9% 5,815 ZARA
2位 H&M (瑞;2022.11期) 2兆8,033億円 -4.0% 898億円 3.2% 4,465 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2022.8期) 2兆3,011億円 -0.5% 2,973億円 12.9% 3,562 UNIQLO
4位 GAP (米;2023.1期) 2兆0,374億円 -4.7% -90億円 -0.4% 3,352 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2022.9期) 1兆2,412億円 -1.2% 1,219億円 9.8% 408 Primark
6位 ルルレモン (加;2023.1期) 1兆0,581億円 +103.8% 1,732億円 16.4% 655 Lulu Lemon
7位 NEXT (英;2023.1期) 8,731億円 +24.2% 1,519億円 17.4% 466 NEXT
8位 ヴィクトリアズシークレット (米;2023.1期) 8,277億円 -15.5% 738億円 8.9% 837 Victoria’s Secret
9位 アメリカンイーグル (米;2023.1期) 6,510億円 +15.5% 322億円 4.9% 1,175 AEO、Aerie
10位 しまむら (米;2023.2期) 6,161億円 +18.0% 533億円 8.7% 2,213 しまむら

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の2-3位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

13年連続 トップを走る、ZARAのインディテックスは売上、利益とも過去最高益を更新。ロシア500店舗以上を閉店、中国苦戦するも、欧州とアメリカの躍進での達成。店舗とオンラインの融合は完成し、スクラップアンドビルドは完了に近づき、過去最大の設備投資をして、次のステージに進みます。

第2位のH&Mはパンデミックからの回復で増収も減益。原価高騰を価格に転嫁しなかったこと、ロシア休業の処理、また、構造改革に費用をかけたことが要因です。アメリカの伸びは大きく、ドイツを抜いて、売上シェア最大国になりました。

第3位のファーストリテイリングは日本が回復、中国がロックダウンで苦戦するも、欧米が黒字化、増収増益で中国のマイナス分をカバー。これで中国が復活すれば、更なる躍進は楽しみです。

第4位のGAPは減収減益、営業赤字。同期中にCEOが交代するほどの混乱ぶり。店舗のスクラップアンドビルド、欧州、メキシコ、中国事業をパートナー企業に移管など、リストラが進んでいます。原価高騰による粗利率低下、Yeezyコレクションの53百万ドルの処分も営業赤字を拡大した要因です。

第5位のプライマークは各国でコロナから回復中、オンラインでは、店舗在庫確認に加え、クリックアンドコレクトの対応の実験を始めました。コロナ禍にインナーウエアや子供服が伸び、今後も期待ができそうです。ドイツの再構築、アメリカの拡大が今後の成長のカギ。

6位以下の一番のトピックは なんと言っても、第6位のルルレモンです。

店舗、EC合計で、昨年比3割増収で1兆円規模に到達。一方、微減益。これは原価高騰で粗利率が2%低下したのと、ミラーののれんの減損が大きく響いています。但し、ミラーを活用した、ルルレモンスタジオで有料サブスクを開始するのに注目です。26年までに売上を1兆6000億円規模と2021年の倍にするプランPower of Three x2 growth planをを進行中。

そして、第7位のNEXTは二桁増収、一桁増益。店舗好調で、ECは落ち着きましたが、ランキング内でトップクラスのEC化率と収益率。原価高騰を価格転嫁とプロパー消化向上でカバーするも、テクノロジーと物流に投資をすることで、利益率は若干低下した模様です。プラットフォームビジネス(内製化インフラを外販)の開示が始まりました。現状、全売上高の2.6%になりました。

そして、第10位の日本のしまむら。ファッションセンターしまむらの高収益にバースデイ、アベイルが利益貢献して、過去最高益を2年連続で更新。バースデイ業態としまむらでは、婦人服以外の伸びが今後は成長のカギとなります。

業績の明暗は、オンラインと店舗を行き来するニューノーマルへの完成度と需要にあわせたサプライチェーンマネジメント力の差です。

原価を安くするために、人件費の安い国に生産地を移転し、ファッションビジネスにとって致命的とも言える、リードタイムを販売期間よりも長くしてしまったところは今後も苦戦が強いられることでしょう。

昨年のランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上ランキング2021 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)13:30~15:00

WWDJAPAN主催 「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー 今回の記事の内容をライブで深堀り解説します。

お申込みはこちらから https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/
 

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April 10, 2023

過去最高益、独走ZARAのインディテックスはコロナ前後でどう変わったのか?

Wwd-vol48-inditexWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

4月10 日発売の連載第48話目は、23年1月期大幅増収増益で年商4兆6000億円規模になり、過去最高売上&利益を更新したZARAのインディテックスグループの最新決算を取り上げました。テーマはコロナ前後で同社はどう変わったのか?です。

500店舗以上の店舗を閉め、ロシアから撤退した同社は、それにもかかわらず、その他の地域、特にアメリカの伸びしろに支えられ、17%の増収、29%の営業増益。

スクラップアンドビルドによる店舗の大型化と面積あたりの売上高を増やし、過去からの脱皮は完了しつつあります。

今回の決算発表でよく使われていた言葉は 

"to the next level" 。

過去最高の設備投資も敢行しています。次のステージにはどんな手を打って来るのか?引き続き、先行く世界トップの動向からは目が離せませんね。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

ファッション業界のミカタ Vol48~過去最高益、独走ZARAのインディテックスはコロナ前後でどう変わったのか?

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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May 16, 2022

世界アパレル専門店売上高ランキング2021トップ10 

Zara-london_20220516125801世界がパンデミックからの回復が進む2021年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

22年の最新ランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

今回(2021年)、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2022年1月末の €=128.66円、スウェーデンクローナ=12.24円、US$=115.14円、英国£=154.72円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2022.1期) 3兆5,659億円 -2.0% 5,509億円 15.4% 6,477 ZARA
2位 H&M (瑞;2021.11期) 2兆4,341億円 -14.6% 1,867億円 7.7% 4,801 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2021.8期) 2兆1,329億円 -6.9% 2,490億円 11.7% 3,527 UNIQLO
4位 GAP (米;2022.1期) 1兆9,278億円 +1.9% 935億円 4.9% 3,399 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2021.9期) 8,653億円 -28.2% 642億円 7.4% 398 Primark
6位 ビクトリアズシークレット (米;2022.1期) 7,831億円 -9.7% 1,003億円 12.8% 899 Victoria’s Secret
7位 NEXT (英;2022.1期) 7,522億円 11.5% 1,393億円 18.5% 477 NEXT
8位 ルルレモン (加;2022.1期) 7,221億円 57.2% 1,538億円 21.3% 574 Lulu Lemon
9位 しまむら (日;2022.2期) 5,836億円 11.8% 494億円 8.5% 2,204 しまむら
10位 アメリカンイーグル (米;2022.1期) 5,783億円 16.3% 682億円 11.8% 1,133 AEO

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の5位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

まず、回復が最も著しいのはアメリカ勢ですね。政府から消費者に手厚い給付金が何回も支給されたアメリカの小売業は総じて活況とのこと。

ギャップ、バナリパはリストラ中もオールドネイビーが絶好調のGAP、
前年にLブランズ社から分社化されたヴィクトリアズ・シークレットのカムバック、
エアリの評価が高いアメリカンイーグルの業績回復、黒字化が顕著です。

欧州市場がメインマーケットのため、まだ回復途上ではありますが、ZARAを展開するインディテックスも、中国で不買運動が起きて大きく売上を落としたH&Mも、アメリカ市場の業績がそれ以上に好調で、その好景気の波に乗ったと言っても過言ではありません。

関連エントリーー分社化が完了し、ヘルス&ビューティー企業となったLブランズ(エル・ブランズ)

次に、外出自粛、営業制限で加速したEコマース対応について。
店舗の売上回復と共に、EC売上比率が下がった企業が多いですが、引き続き各社のEC売上そのものは伸び続けています。

特に各国のEC倉庫在庫と店舗のバックヤード在庫の一元化が完了したインディテックス(EC化率は前期32.4%→当期25.5%)、

EC注文の翌日店舗無料受取りを可能にしているネクスト(EC化率は65.3%→63.8%)の伸びは大きいです。

コロナ禍が加速させた、オンラインとオフラインを行き来してお買い物をする消費者購買行動へのシフトに対応することは小売業にとって待ったなしであることは間違いありません。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックスの2022年1月期(FY2021)決算。最高益間近の回復力の源泉はオムニチャネル施策と・・・

関連エントリーーロンドンで進化するクリック&コレクトと通販受け取り拠点の多様化

その一方で、トップ10企業の中でも最低価格帯のプライマーク(第5位)は、引き続き、一切、Eコマースを行っていません。

但し、オンラインサイトの掲載商品比率を全体の70%まで上げ、サイトで見た商品の近隣店舗の在庫を表示することで、店舗でのお買い物前にオンラインでスタイリングや商品の下調べを楽しめる環境は整えています。

しまむらも引き続き売上は全社売上比1%にも満たない状況です。しかも、EC売上の9割は店舗で、送料無料で受け取られているという現実。

2社の動向から読み取れるのは、低価格品を扱う企業にとっては、送料のかかる宅配ECは適しづらいということでしょう。

このように、EC購買が進む時代においては、在庫と物流がカギを握ることになりますね。

この点に早くから投資をし続けているのは、ネクスト。

同社は自社商品以外のブランドも自社ECで販売したり、自社物流網に乗せて配送したりしています。更に、自社が構築したインフラを活用し、顧客向け宅配物流(フルフィルメント)や他社のECサイト運営代行まで手掛け、いわゆるプラットフォーマーとしての収入も高まって来ています。

また、物流の重要性に目をつけた、アメリカンイーグルは3PL(サードパーティロジスティックス)の物流企業を買収し、他社のEC販売商品も運び始めました。

各社の取り組みから、これからの流通はいかに物流に投資するかの時代であることも読み取れます。

最後になりましたが、

今回、ヨガやランニング用のアスレチックアパレルを販売する、いわゆるライフスタイル提案型のルルレモン社(カナダ)が世界トップ10規模になり、営業利益率21.3%!という10社中、最も高い営業利益率で成長を続けていることを指摘しておきたいです。(EC化率は前期52.0%→当期44.0%)

これまでバリューやコスパの競争であった世界の大手アパレルチェーンの一角に・・・

いよいよライフスタイル、高付加価値商品、コミュニティストアをテーマとしたチェーンが食い込んで来たのは

新しい時代の幕開けではないでしょうか?

ルルレモンのランクインを歓迎し、今後もそんな付加価値提供型の企業が成長企業として台頭してくることを期待したいと思います。

22年の最新ランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

 

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