現在年齢が30歳以上で普通免許を取得した方へ質問。ある時期の更新から、自分の免許の種別が変わっているのにお気付きだろうか? 時期にもよるが、普通免許を取得したのに項目は中型、免許の条件等の部分が「中型車は中型(8t)に限る」となっている人がいるはずだ。じつはこれ、2007年(6月)の免許制度改正で中型免許(一種、二種、AT限定免許含む)が新設され、前制度で運転可能だった車両に合わせて、車両総重量8トンまでのクルマを運転できる既得権を保持するために設けられた措置だ。
昔から普通免許で8トントラックを運転していた方は当然いただろうが、世間のマイカードライバーで、運転したことのある人はそんなにいないかも。では、2007年以前の旧・普通免許で乗れる「8トントラックってどんなもの?」というのが今回のテーマだ。
■日野自動車 10トン=プロフィア 4トン=レンジャー 2トン=デュトロ
■いすゞ自動車 10トン=ギガ 4トン=フォワード 2トン=エルフ
■三菱ふそう 10トン=スーパーグレート 4トン=ファイター 2トン=キャンター
■UDトラックス(旧・日産ディーゼル) 10トン=クオン 4トン=コンドル(いすゞフォワードのOEM車種) 2トン=カゼット(三菱ふそうキャンターのOEM車種)
上記のように、国内各社は4トン車=中型トラック、2トン車=小型トラックの車種を揃えているが、これに各車ボディサイズ、現行免許制度(旧・普通免許、新・普通免許、中型免許、準中型免許)が絡んでくるとかなり複雑になるので、今回詳細の紹介は割愛させていただく。ただし、大まかに言えば、4トンは2トントラックよりボディサイズがひとまわり大きい。だが不思議なのは、4トン車でも2トン+αしか荷物を積めない物があり、逆に2トンでも4トン近く積めるトラックもあること。
街なかを走るトラックの最大積載量ステッカーで確認してほしいが、例えばいすゞフォワード(4トン車)が最大積載量2900kg(2.9トン)だったりする一方、2トン車のエルフなのに最大積載量4000kg(4トン)の仕様があったりする。なぜか?
そもそもサイズが大きい4トン車は、車両重量自体が重い。それを旧・普通免許(車両総重量8トン限定)に対応して、最大積載量を確保しなければいけないから、当然積む量に制約が生まれる。例えばいすゞフォワードの場合(他社の4トン車でも同様)、平ボディ(荷台があおりで囲まれるオープンな車両)なら最大積載重量は多めに確保できる一方(3.5トンくらい)、荷室が箱型に架装された物は箱の重さがあるため、最大積載重量はそんなに取れない(例えば2.5〜3トンくらい)。
一方2トン車の場合、いすゞエルフを例に取ると、普通乗用車とほぼ変わらないサイズの標準ショートボディから、全長6m以上で全幅2.2m近いワイドキャブロングまであるが、4トン車より車両重量自体は軽いため、最大積載量が多めに取りやすい。そこで免許が中型8トン限定に対応したエルフに、3〜4トン積みの車両があったりするのだ。つまり2トンそこそこしか積めない4トン車、4トン積めてしまう2トン車という逆転現象が生まれたりする。そのため、通称で言われる4トン車、2トン車トラックの表現は、車両の車格を表すものと考えていいのだ。
では、前述した4/2トン車の寸法(サイズ)はそれぞれどれくらいか。運送会社で使われることの多い、荷台を箱型に架装された車両を例に取って紹介する。
■4トン車(箱型の場合)=全長・8.6m前後/全幅・2.3〜2.5m未満/全高・3.6m前後
■2トン車(同)=全長・4.7m前後(ショート)・6m前後(ロング&ワイドロング)/全幅・1.7〜1.9m前後(ショート&ロング)・2.2m前後(ワイドロング)/全高・3.1m前後
以上は、あくまで箱型荷室を架装した車両のサイズだが、特に2トン車は長さ、幅、高さともにバリエーションが豊富。高さ以外は普通乗用車とほぼ変わらないサイズで小回りの効くものから、ワイドロングのように幅、長さともかなり大きいものもある。ちなみに全長が6m、幅が2mを超えるサイズになると、標準的な駐車場の区画からはみ出すサイズだ。そのため、ちょっとコンビニに寄りたくても、ひんしゅくを買うのでためらうことになる。4トン車も同様だが、都内では休憩を取る場合にじつに困るサイズなのだ。
さて、大変長い前置きをしたが、本当はここからが本題。旧・普通免許で乗れるのに手強い車両総重量8トン限定トラックの話。だが、ややこしいので通称の4トン車で以下は記述する。
4トン車のサイズは前述したが、全長は大体普通車の倍。全幅は標準、ワイドボディかによって異なるが、運送会社ではなるべくかさばるものを多く積めるようにワイドボディを使う場合が多い(見た感じワイド6:標準4、ないし7:3ほどの割合ではないか)。ワイドの全幅は車検証表記で2490㎜。そしてこの幅、大型の10トントラックとほぼ同サイズ。違うのは長さ(3m強長い)と高さ(0.1〜0.2mほど高い)くらいだ。
で、これを乗用車やレンタカーでよくある標準2トントラックしか運転したことがない人が乗ると、まず幅が気になってオドオドする。助手席側が随分遠いところにあると感じ、この幅で通り抜けられるのかがつねに気になる。そして、長さも当然気になるものの、こちらは幅以上に想像が働かない。教習所では「内輪差(前輪と後輪の軌道差)に気をつけましょう」とよく教えられるが、リヤオーバーハング(後輪から後端までの長さ)のことは、教えてくれない。例えば左折の場合、リヤオーバーハングが長い車両では後部右端が外側にはみ出すのだが(車体の長さ、曲がる道の曲率にもよるが…)、その量は大体0.5〜1mほど。そのため、右左折の際は内輪差のほか、外側後端の振り出し量も気にしつつ曲がることになる。(図・参照)
そして、全高3.6mほどの箱型車で気をつけるべきなのが、道端の標識や樹木など障害物との接触だ。標識や補助標識の端が曲がっていたり擦れていたりする例の多くは、箱型のトラックが接触した跡だろう。さらに、樹木の葉のはみ出しも要注意。葉の茂みの中に太い枝が隠れていてヒットしたら、箱は凹む。自営業者を除くトラックドライバーは、会社からトラックを借りて運行しているから、車両を損傷させてそのままというわけにはいかない。月の収入の何%かは修理費として差し引かれるから、死活問題にもなる。
では旧・普通免許を生かして4トントラックでドライバーの仕事をするにはどうするか? これはもう先輩ドライバーに取り扱いの注意点をなるべく聞き出しておくしかない。だけど、実際運転するのは自分。運転センスの優れた人を除けば、ベテランのように実践できるわけはないから、経験して感覚を磨いていくしかない。後は、前述した注意ポイントでゆっくり動かすことだ。
ちなみに、間もなくトラックトライバー歴2年の自分はどうだったかというと…。現在4トンワイドの箱型での稼働が多いが、荷室の箱を擦過しことは複数回(特に自分運転席側から遠い左側が多い)、左側ミラーの周囲との接触、左側サイドバンパーの接触、リヤバンパー損傷と言ったところ。この業界に入る前、準備のためにと大型免許を教習所で取得し、大きなトラックの動き方や基本操作を教えてもらってこの有様だから、旧・普通免許からの4トン車デビュー、どうぞご注意ください。
〈文=坂 和浩〉
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