部屋の中の象とは、「明らかな問題なので多くの人が気づいているが、誰も口には出したがらないこと」を指す言葉である。
英語の慣用句「elephant in the room」(エレファント・イン・ザ・ルーム)の直訳。「elephant in the living room」(エレファント・イン・ザ・リビング・ルーム)、つまり「居間の中の象」とも。
部屋の中に象のような大きな動物が居れば誰だって気づく。そういった「誰だって気づくような状態」なのに、なぜか誰も「部屋に象が居るぞ!」と指摘しない、話題にしたがらない。その結果「部屋の中に象が居るという異常事態がそのまま継続している」と言った状況を表す。
「そのことについて騒ぐと攻撃されかねない問題」「対策を取るにはとても労力がかかるので、今は放置しておきたい問題」「指摘すると『気づいたお前が対策しろ』と求められてしまう問題」「誰かを傷つけるかもしれないセンシティブな話題」などが「象」の代表だろうか。
この言葉をタイトルにしている作品は複数あるが、有名なものとしては1984年に出版された『An Elephant in the Living Room: The Children's Book』という英語の児童書がある。これは「アルコール依存症の家族の元で暮らすことは、象が居る居間で暮らすことと似ている」として、「みんなが話さずに避けるだけの問題について、ちゃんと話しあう」ことを論じた作品である。
ロシアの寓話作家「イヴァン・アンドレーヴィチ・クルィロフ」による1814年の寓話に「博物館に行って、針の先よりも小さなものまで含む様々な展示物を細かく見てきたと語るが、象に気づかなかった男」というストーリーのものがあるようだ[1]。起源については、このロシアの寓話が巡り巡ってこの英語の慣用句になったのではないか、という推定がなされることがある。
ただ、この寓話では象は「大きすぎて、細かいものを見ようとする人はかえって気づきにくかった」ものとして描写されており、現代の慣用句の「部屋の中の象」が指すことが多い「誰でも気づくような大きな問題」とは方向性がかなり異なっている。本当にこの寓話が起源なのか、もし本当であったとしたら現在の意味になるまでにどのような変遷があったのか、については不明瞭である。
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最終更新:2025/01/07(火) 16:00
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