融通手形とは、原因関係となる商品売買契約がないまま振り出される手形の総称である。金融手形とも呼ばれる。略称は融手(ゆうて)。
そして、さらに以下の3つの意味に分けられる。
本記事では、1.と2.について解説する。
※本記事において、銀行とは、預貯金取扱金融機関すべてを指す。
※また、本記事において、貸金業者とは、「ノンバンク」という通称で呼ばれる存在で、貸金業法に基づいた制度に登録して金銭貸付を生業とする業者のことを指す。
信用力が低下して銀行からの融資を受けづらくなった企業Aが、資金力のある企業Bに懇願して、手形を振り出してもらい、手形を受け取る。このときの手形のことを、融通手形の中でも特に好意手形という。
資金力のある企業Bが、貧乏な企業Aを助けるという好意を持ち、その好意に基づいて振り出す手形である。
企業Aは、銀行・貸金業者に対し、企業Bからもらった企業B振り出しの手形を手形割引してもらい、すぐに使える銀行預金に換金して、資金繰りの足しにする。
好意手形の原因関係は、存在しない。貧乏企業Aに対して金満企業Bが抱えている債務というのが全く存在しないので、「原因関係が存在しない」と言ってよい。
手形の期日が来たら、手形割引を行った業者が手形を銀行に呈示するので、金満企業Bの当座預金口座から手形割引業者の口座へ振り込みが行われる。
貧乏企業Aは、金満企業Bに対して、手形の期日が来るまでに、手形の金額を支払う道義的な債務を負っている。
ただ、現実には、資金繰りに困った貧乏企業なので、そういう道義的な債務を履行できずに踏み倒すことが多い。
銀行・貸金業者は、好意手形に関わる企業に対して厳しい眼差しを向け、強く警戒する。
好意手形を受け取って手形割引を依頼してくる貧乏企業に対しては、当然のごとく、「好意手形に頼っているほど資金繰りに窮している企業」とみなして、倒産一歩手前という扱いをする。
貧乏企業の懇願に根負けして好意手形を振り出す金満企業に対しても、銀行・貸金業者は警戒を強めることになる。なぜなら、一度好意手形を振り出すと、なんども貧乏企業に食いつかれ、二度三度と繰り返し好意手形を振り出すことが多いからである。「貧乏企業の懇願に弱く、経営者の心が弱い企業」と扱われる。
信用力が低下して銀行からの融資を受けづらくなった企業Cと企業Dが共謀し、相互に手形を振り出して相手に渡す。つまり、企業Cは企業D振り出しの手形を所有し、企業Dは企業C振り出しの手形を所有する。そして、企業Cと企業Dは、銀行・貸金業者に対して手形割引を申し込み、所有する手形をすぐに使える銀行預金に換金し、資金繰りの足しにする。
このときの手形のことを、融通手形の中でも特に馴合手形、書合手形、騎乗手形、交換手形という。
馴合手形の原因関係は、存在しない。
手形の期日が来たら、手形割引を行った業者が手形を銀行に呈示するので、企業Cや企業Dの当座預金口座から手形割引業者の口座へ振り込みが行われる。
企業Cと企業Dは、どちらも資金繰りが苦しいことが多い。そもそも資金繰りが順調なら、馴合手形に手を出すはずがない。
企業Cの当座預金口座が底を付き、振り出した手形を支払いできなくなったら、手形割引業者はどうするかというと、企業Cが振り出した手形を割引依頼した企業Dに手形の支払いを要求する。手形割引というのは、割引依頼者が手形割引業者に対して裏書譲渡するという形式で行われる。裏書譲渡を受けた手形割引業者は、振出人からの手形支払いを受けられなかったとき、裏書譲渡した企業Dに対する遡求を行う権利がある。
企業Dにとっては、自分が振り出した手形に加えて、企業Cが振り出した手形の支払いをする義務も抱え込むことになる。馴合手形に手を出すような貧乏企業が、手形の債務を2重に抱えることになるので、手形不渡りまっしぐらということになる。
企業Cの手形不渡りが、そのまま企業Dの手形不渡りを引き起こす。こういう現象を連鎖倒産という。
好意手形や馴合手形というのは、銀行・貸金業者にとって、まさしく「排除すべき不正な存在」である。
銀行・貸金業者は、割引を依頼された手形が好意手形や馴合手形であることを見抜いた場合、手形割引を行わない。特に、銀行は「好意手形や馴合手形をしっかり見抜け」と銀行員に教育している。
銀行員が上司から叩き込まれる「好意手形・馴合手形の見抜き方」は、おおよそ次の通りである。
融通手形の対義語は、商業手形という。
商業手形とは、商品売買契約を原因関係として振り出される手形のことで、真正手形、商品手形、実手形などという別称がある。
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最終更新:2024/12/23(月) 06:00
最終更新:2024/12/23(月) 05:00
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