株式併合とは、企業の財務に関する言葉の1つである。反対の概念は株式分割である。
株式併合とは、発行済み株式を同じ種類ごとに分け、複数の同種類株式を1つに併合し、発行済み株式総数を減らすことをいう。
併合比率3:1の株式分割なら、300株保有の株主は100株保有の株主になり、企業が保有する自己株式600株が200株になる。
株式併合は、同じ種類の株式のすべてを併合するものである。単一の株式を発行する会社ならすべての株式を併合する。種類株式発行会社(複数の種類の株式を発行する会社)なら会社が「Aという種類の株式を併合し、Bという種類の株式を併合しない」と決定することができる(会社法第180条第2項第3号)。
単一の株式を発行する会社で株式併合するのなら、持ち株比率に応じてすべての株主に対して無償で株式を剥奪し、企業が保有する自己株式についても無償で株式を減らす。
種類株式発行会社で「Aという種類の株式を併合し、それ以外の種類の株式を併合しない」と定めて株式併合するのなら、Aという種類の株式を持つすべての株主に対してA株保有比率に応じて無償で「Aという種類の株式」を剥奪し、企業が保有する自己株式の中にAという種類の株式があるのなら無償で「Aという種類の株式」を減らす。
株式併合が行われると発行済み株式の総数が減るので、株式の濃厚化が生じ、EPS(1株あたり税引後当期純利益)が併合比率のぶんだけ大きくなり、ほとんどの場合において株価も併合比率のぶんだけ上昇する。併合比率3:1の株式併合なら発行済み株式の総数が1/3倍になるのでEPSが3倍になり、ほとんどの場合において株価も3倍になる。
併合比率1:Aの株式併合が行われたとき、既存株主は1/A倍の数の株式を保有することになるが株価がA倍になるので「その株式を保有することで得られる資産金額」が変化しない。
株式併合をすると発行済み株式の総数が減り、1株あたりの株価が上がり、少額で株式を購入できなくなる。すると小規模な個人投資家が株式を購入できなくなり、株式の流動性が低くなって売買が抑制される。株価が大きく値動きして株価が不安定になっていたのなら、そういう状況が抑制される。
ちなみに、株価が高すぎて小規模な個人投資家が手を出しにくい株式のことを値嵩株(値がさ株)といい、株価が普通の金額である株式を中位株といい、株価が安い株式を低位株という。「株式併合は低位株を中位株に変化させるため、あるいは中位株を値嵩株に変化させるために行われる」と表現できる。
株式併合をすると発行済み株式の総数が減り、1株あたりの株価が上がり、少額で株式を購入できなくなる。すると小規模な個人投資家が株式を購入できなくなり、企業が資金を調達しにくくなる。
株式併合において、併合比率が少数倍であっても整数倍であっても、単元未満株を保有する株主が増えやすい。単元未満株には株主総会における議決権が付かない。
単元未満株を抱えた株主は会社に対して単元未満株の買い取りを請求できるし、単元未満株でも配当を受けることができるので単元未満株を抱えたままにすることもある。しかし、いずれにせよ議決権比率の低下を防ぐことができず、他の株主との格差が広がってしまう。
100株が1単元の企業があり、100株と1議決権を保有するAと、1,300株と13議決権を保有するBと、15,000株と150議決権を保有するCのみが株主であるとする。議決権比率はAが0.61%でBが7.93%でCが91.46%である。
その企業において10:1の株式併合をすると、Aが1株と0議決権を保有して議決権比率0%になり、Bが130株と1議決権を保有して議決権比率6.25%になり、Cが1,500株と15議決権を保有して議決権比率93.75%になる。Aが議決権を喪失し、少数株主が排除され、スクイーズアウト(Squeeze Out)と呼ばれる現象が起こる。
株式併合において、併合比率が少数倍であっても整数倍であっても、端数が発生しやすい。
1株1議決権の企業において11株保有株主と44株保有株主と66株保有株主と100株保有株主がいるとする。その企業で10:1の株式併合をすると、次の表のような処置が施される。
株式併合前 | 10:1の株式併合後 | |
株主A | 11株保有、議決権比率4.98% | 1株保有し、「1株を競売にかけて得られた代金」の0.1/1.1倍を得て、議決権比率4.55%になる |
株主B | 44株保有、議決権比率19.91% | 4株保有し、「1株を競売にかけて得られた代金」の0.4/1.1倍を得て、議決権比率18.18%になる |
株主C | 66株保有、議決権比率29.86% | 6株保有し、「1株を競売にかけて得られた代金」の0.6/1.1倍を得て、議決権比率27.27%になる |
株主D | 100株保有、議決権比率45.25% | 10株保有して、議決権比率45.45%になる |
株主E | 1株保有して、議決権比率4.55%になる(競売で1株を購入した) |
11株を保有する株主は「1.1株を保有する株主」にならず、端数を切り捨てられて1株を保有する株主になる。一方で100株を保有する株主は10株を保有する株主になる。
株主Aの端数は0.1株で株主Bの端数は0.4で株主Cの端数は0.6である。端数が出た株主の端数の合計は1.1株である。この1.1株の端数を切り捨てて1株として、その1株を競売にかけ、代金を得る。得られた代金を端数の比率によって株主Aと株主Bと株主Cに分配する(会社法第235条)。場合によっては、競売で株式1つを獲得した株主Eが出現することになる。
株式併合をすると、端数の合計となる株式を競売にかけるなどの面倒な事務的処理が発生しやすい。また、端数が発生する株主の議決権比率が下がってしまう。
株式併合をするには、株主総会の特別決議が必要である(会社法第180条第2項、第309条第2項第4号)。
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最終更新:2025/01/11(土) 01:00
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