おしゃまとは、子供について「ませている」ことを表す言葉である。
後述するように、語源をたどって古い日本語での使われ方を確認すると、かつては広く女性を指してネガティブな意味で使われていた言葉である。
しかし現在ではもっぱら子供、特に女の子について「ませている」「大人ぶっている」「小生意気である」と評する言葉として用いられており、加えて言えば「可愛らしく/ほほえましく」思う気持ちとともに、ポジティブなニュアンスで用いられることが多い。「おしゃまさん」などと、「さん」をつけて使われることも。
逆にネガティブな感情を込めて使われることはほとんどない。例えば眉根を寄せて「あのガキはおしゃまでけしからん」といった使い方はあまりされない。同じ「ませた子供」を指す言葉である「マセガキ」は割とネガティブな言葉であるのとは対照的かもしれない。
語源は、割とややこしい。
まず、「言う」という意味の敬語「おっしゃいます」という言葉がある。この「おっしゃいます」は口語的に、「おしゃます」と略して発音/表記されることがある。
この「おっしゃいます(おしゃます)」という言葉が歌詞に入った、通称『猫じゃ猫じゃ』または『おっちょこちょい節』と呼ばれる端唄が江戸時代に流行した(明治時代にもリバイバルで流行したらしい)。この端唄の歌い出しの歌詞は「猫じゃ猫じゃとおっしゃいます(おしゃます)が、猫が下駄はいて杖ついて、絞りの浴衣で来るものか、おっちょこちょいのちょい」というもので、「浮気現場を見とがめれらそうになり、『あれは猫だよ』とごまかそうとしたが『下駄はいて杖ついて浴衣着た猫なんているか!』とツッコまれる」というユーモラスなものだった。この端唄の影響で「猫」と「おしゃます」という言葉が結びついて、「おしゃます」は猫を指す隠語/別称としても使われるようになった。猫肉を使った鍋料理を指す「おしゃます鍋」という言葉があったりする。
また、芸者を指す隠語として「猫」があった。楽器「三味線」は猫の皮を使って作られるのであるが、芸者は三味線を弾く仕事であったために芸者を「猫」と呼ぶことがあったらしい。そのうえで、上記のように「猫」を「おしゃます」と呼ぶようになると、芸者のことも「おしゃます」、そしてそれを略した「おしゃま」という言葉で呼ぶようになった。
さらに、芸者のように「慎みがない」「品行がよくない」「人をはばからない」「生意気な」「出過ぎた」「おしゃべりな」女性を指す言葉(東京の方言だったという話も)として「おしゃま」が使われるようになったようだ(余談だが、こういった「水商売の女性は慎みがない、品行がよくない」というイメージから出た言葉としては、他に「蓮っ葉」というものもある)。
このように広く女性全般に対して、かつ割とネガティブな意味も込めて使われるようになった「おしゃま」だが、さらに時代が下るにつれて「女の子」に限定して、かつ「かわいらしい」というポジティブなニュアンスを込めた言葉に変質し、現代に至る。
この、対象が子供へと限定された変化や、ポジティブな言葉への変質については、理由や過程を調べてみたがよくわからなかった。案外、「『おしゃま』という言葉が、なんとなく幼児語っぽい、かわいらしい響きだから」とか、「『おしゃれ』『おちゃめ』といった、ポジティブな意味の言葉との響きが似通っていたから」……などといった単純な理由かもしれない。
しかし、やたらと段階を踏んだややこしい語源である。ことわざの「風が吹けば桶屋が儲かる」のようだ。ちなみに、この「風が吹けば桶屋が儲かる」にも猫が関係していたりする。
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最終更新:2025/01/09(木) 22:00
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