医療機器 21兆円への挑戦#2写真提供:富士フイルム

欧米企業が強い医療機器業界の中で、CTやMRIは、日本勢の得意分野の一つだ。この領域では、ここ10年ほどの間にM&A合戦が繰り広げられた結果、コピー機大手が市場をけん引するようになった。実は医療機器事業のシェアにおいては、複合機とは序列が一変する。特集『医療機器 21兆円への挑戦』の#2では、キヤノンや富士フイルム、リコーといった大手複合機メーカーの医療機器での「買収シナジー」を解明するとともに、各社の勝ち筋を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

東芝も日立も撤退した画像診断事業
現在はキヤノン、富士フイルムがけん引

 欧米企業が幅を利かせている医療機器業界の中でも、日本勢は診断機器を中心に複数の分野でプレゼンスを保持している(診断機器で活躍する国内企業については、本特集の#1『日立・東芝・パナは撤退、ソニーはオリンパスとタッグを組むも多難…医療機器業界「最新勢力図」を大公開!見えた日本勢の勝ち筋とは?』参照)。

 日系メーカーが強い分野の一つがCT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)といった画像診断事業だ。技術が生かせる領域であり、しかも国内は他国に比べて医療機関の数が多く設置台数を伸ばしやすかったため、日本勢に“地の利”があったとみられる。

 かつては東芝や日立製作所などエレクトロニクス大手がCTやMRIを担っていたが、現在は買収攻勢で事業を拡大したキヤノンや富士フイルムが市場をけん引している。

 キヤノンはCTの国内シェアでトップをひた走る。一方の富士フイルムは、CTやMRIの機器を手掛けるだけでなく、それらの装置で撮影した画像データを運用するシステムで世界トップシェアだ。富士フイルムは内視鏡やX線画像診断分野でも大手メーカーの地位を確立しており、豊富なラインアップが強みとなっている。

 この2社だけでなく、複合機大手メーカーのリコーも他社の事業を買収することで医療機器に参入している。カメラやコピー機の需要伸び悩みが懸念される中、既存事業とのシナジーが見込める上に、安定した収益源になる医療機器分野は、第2、第3の柱にはうってつけなのだ。

 しかし、これらの医療機器“兼業”メーカーは、本当に買収によるシナジーを生み出せているのだろうか。データの分析や関係者への取材を進めると、複合機で覇権争いを繰り広げる各社の明暗が分かれている実態が明らかになった。

 M&A攻勢が奏功している企業と、裏目に出たところはどこだろうか。

 次ページでは、キヤノンや富士フイルム、リコーといった大手複合機メーカーの医療機器での「買収シナジー」を解明するとともに、各社の勝ち筋を明らかにする。