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観察の樹×藤森泰司 Kino Stool 後編
 観察の樹×藤森泰司 Kino Stoolの記事、後編です。

 改めて、台湾の高齢者向け家具を日本から発信していく、という点に振り返ってみたい。


・助け合い+自立の社会に

 日本と台湾は近い国/地域ではあるが、先に書いた玄関まわりしかり、気候風土もろもろ、かなり事情が異なる。ボコボコの歩道、滑りそうな段差や階段、杖代わりにも使われるショッピングカートの作りも貧弱だったり、と、悪条件が目立つ。

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(台湾 メンテナンスが放置されてボコボコな歩道。撮影渡部千春)

 ところが「台湾には定年がないんだろうか?」と思うほど働く高齢者は多い。買い物や散歩、屋外のお喋りなど普段の生活でも近隣の人々が常に近くにいて、困った時には助けあうコミュニティの力が条件の悪さを補っている。

「台湾は儒教思想が色濃く残っており、ボランティア精神も高いので、条件の悪さをマンパワーで補っているように僕も思います。日本では失われてしまったかもしれない“向こう三軒両隣”が台湾にはあります。とても良い文化だと思います。
しかし、その反面「やってあげすぎること」が必ずしも良いとは限らないと思っています」と観察の樹の黒坂氏は言う。

 家族、近隣の人々のマンパワーはまだ健在だが、徐々に日本とあまり変わらない生活スタイルになって来ているように思える。

 例えば台北などはここ10年ほど急激に都市化が進み、中心部で見る高齢者の数は減った。住宅地は郊外に延びているが、タワーマンションや車社会を前提とし近隣に商店街も市場もなく、軒下で近所の人々と語らう場がない住宅街も目立つ。
 こうなると近隣の人々との助け合う機会も減ってくる。今後はこうした傾向が増えていくだろう、と黒坂氏は考える。そのためにも高齢者が自主的に使いやすい什器、家具、機器のデザインが求められている。

「高齢者が自分できるところは積極的にやってもらう。そのバランスが重要だと考えているので「尊厳と自立支援」を伝えていきたいと考えています」(黒坂氏)

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(靴屋兼靴修理店で働く男性。手仕事は一生の仕事 撮影渡部千春)

・機器ではない家具を

 年を経て行くにつれ安定を求める感覚はあるのだが、危険ともなりうるガタガタのカートや家具でも長年の使い慣れといった、記憶や経験、愛着と相まって共に暮らしているものだ。急にツルピカの「絶対安全衛生的」がやってきたからと言って、すぐに使えるとは限らない。
 これは世界的に言えることだが、日常使いの家具でも家庭用、公共用の什器、機器でも、「高齢者向け」となると途端に医療機器のような味気ないものになりがちだ。そこから脱して愛着の湧くようなデザインが施されることがあるが、「やさしい」という感覚が、高齢者向けと乳児・幼児向けが同じような「やさしさ」の色合いや形状で処理されてしまうこともある。

 突然のパステルカラー、突然のまるっこいプラスチック家具。
 これはさすがに勘弁して欲しい(気にしない人は気にしないようだが、私は遠慮させていただく)

 そんな中で、ある日家庭に入ってきた新しい家具や機器でも、違和感を持たずに接することができれば理想的だ。こうした家具と共に暮らす感覚を大事にした Kino Stool は1つの理想型を提示しているだろう。
 藤森氏が展示に寄せた文章で今回は締めたい。

Kino Stool に寄せて

高齢者向けの家具は、きちんと目的を持った機能性が必要です。
ただ、どうしてもその点に固執するあまり、
家具ではなく"機器"のようになってしまいがちです。
私たちは、ただ目的をこなす器械とは暮らしていけません。
日常生活を共に過ごす家具には、常に一緒に居たいものかどうか、
つまりはパートナーとしての"表情"が必要なのです。
その"表情"こそがデザインであり、使い手と道具との関係性を作り出すのです。
「Kino Stool / キノスツール」にはそうした思いが込められています。

藤森泰司


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・商品詳細

Kino Stool
素材:フレーム:アッシュ合板、アッシュ無垢材/座面:布張り
サイズ: 幅564×奥行370×高580(座面高407) mm

カラーバリエーション  *は受注生産 
ナチュラル NTD $12,800 (48,167円)
ダークブラウン NTD $13,800 (51,931円)
ブラック* NTD $14,800 (55,694円)
ホワイト* NTD $14,800 
ダークグレー * NTD $16,800 (55,694円)

台湾での参考価格。()内の日本円は発表日1月12日のレートで計算
日本での販売は4月目処。価格はなるべく台湾の価格と同じくらいにしたいとのこと。

シートの色:ブリック(レンガ色)、ネイビー、シトラス、ワイン、グレージュ
(展示に合わせて作られた受注ファブリックは、花布、屏東の少数民族の手織り布、の二種)
(花布は布団や農作業着などに使われている伝統的な柄の布。花布に関しては以前このブログで書いておりました。ご参照まで 
「台湾 傳統花布」  http://blog.excite.co.jp/dezagen/12450986/ )

問い合わせ先:観察の樹 http://www.kansatsunoki.com/contact/


by dezagen | 2018-01-26 19:24 | プロダクト・パッケージ
『これ、誰がデザインしたの? 続(2)』
渡部千春著、デザインの現場編集部編
美術出版社刊
04年以降の連載記事をまとめた2冊目の書籍。連載で紹介したアイテムのほか、名作ロゴやパッケージ、デザインケータイなどを紹介。
 
これ、誰が書いているの?
 
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