大変な菓子好きな自分であっても、自ら購買を控えている菓子というのもいくつかある。その中の一つが
本高砂屋の
「エコルセ」。
というのも、ここらへんは各ご家庭により異なるところであろうが、幼少時我が家にやってくる贈答菓子の中でもひときわ高級感の高かったのがこのエコルセで、いただいた時のうれしさ感を加味した味を、自ら買っては味わえないと思っているからである。
ヨーロッパを感じさせる独特な木の模様が文字とからみあった、きれいなパッケージ。相変わらず、と思ったが、実際のところ1970年の発売当初、2001年度、2008年度でリニューアルされているのだという。

発売当初からマイナーリニューアルしていったもの。
当時の資料がなく誰のデザインか分からないそう。残念!

2001年度から2008年度のデザイン
パッケージリニューアルの成功は、過去のイメージを崩さず、同じようでいてちょっと新しくさせることにある。むろん、まったく変えてしまう、という方法もあるが、その場合は大々的な広告投入など付加的要素が必要だろう。贈答系のパッケージに関しては「いつもおいしいものをありがとうございます」という「いつも」感が大事だ。
エコルセの「いつも」感とは何か、本高砂屋さんに聞いてみた。
「仏語で樹の皮を意味するエコルスからの造語、エコルセのタイトルを持つ商品イメージにふさわしい、樹をモチーフとしたデザインを踏襲してきました」とのこと。加えて「2008年度のリニューアルに際しても、樹が柔らかな芝生の上に年月を経て大樹に育った様子をイメージしております」
リニューアルに合わせて成長していくなんて粋な配慮である。
このパッケージを2001年度から手がけているのは、綿貫宏介氏。本高砂屋のデザイン顧問であり、エコルセだけでなく本高砂屋のロゴ始め、主な商品はほとんど綿貫氏の手による。
そもそも氏が自宅茶室用の和菓子を本高砂屋に受注したことから縁が始まったというから、何がきっかけになるのか分からないものだが、単独でも読ませつつ絵柄にとけこむような文字作りは素晴らしい。綿貫氏は先頃発表された
日本タイポグラフィ協会第8回佐藤敬之輔賞を受賞されている。
自分で買ってはいかん!と言いつつ、記事執筆に際しエコルセ自主購入の禁じ手をやってしまった。薄い生地が重なった繊細なる美味は自分で買っても同じであった、とはいえ、やっぱりもらうありがたさも残しておきたい。皆さん、渡部への贈答にはエコルセを。
本高砂屋HP
http://www.hontaka.co.jp/