まず現在の作業方法で言えば、完成音声を作る際に音を種類別に分けて収録したバラ素材も同時に収録されます。 一般的には、 ・ダイアログステム(いわゆる台詞。撮影現場での同時収録音声やアフレコなど） ・ミュージックステム(音楽) ・FXステム(音響効果により後付けされた効果音など) という分類です。 吹替用のセリフ抜き音声素材(以下ME、Music&Effect)は、名前の通りミュージックステムとFXステムを混ぜれば良いのではと思いがちです。(アニメーション作品や、実写でも古い特撮などのオールアフレコ作品ならその通りです) しかし実写作品の場合、現場収録時の足音・衣擦れ・環境音などがそのまま使われていることがあり、特にセリフと同時に鳴ってしまった音はたとえ収録素材まで遡ったとしてもダイアログステムから切り離すことが不可能です。こうした理由で失われてしまう物音をなんとか補填したり後付けし直したりして、吹替用MEは作成されます。 ME素材作成がいつ頃から始まった物なのかまでは正直よくわかりませんが、作業がステム作成と同時期に行われていればあとはそのME素材の保管状況次第となります。 そうではないものを現代で新たに吹き替えようとなると、デジタル処理で完成音からセリフだけ消すと言うのはまだまだ現実的ではありませんので、あとは当時のステム素材が残っているかどうかになりますでしょうか。 添付リンク先にありますように古い作品になればなるほど高音質音声素材(リンク先で言う磁気テープやシネテープ）が残っているかは運次第のようです。経年劣化、廃棄・紛失、会社倒産、色々なことが考えられますね。 完成音声でさえそれなので、海外展開を考えていない頃のステム素材はよほど管理がしっかりなされているか、逆にとりあえず何でも放り込んでおける巨大倉庫などがないと厳しいというのが実情ではないでしょうか。 https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/higuchi/1255893.html https://togetter.com/li/1444087