現在の元旦は、古代ローマのユリウス・カエサルによって紀元前45年に導入された、ユリウス暦の日付をベースとしています。 【ユリウス暦による元旦】 ローマ文化では伝統的に春の3月を年初としていました（ユリウス暦以前は太陰暦ですので、春分が何日といった発想ではなく、新月が朔日という仕組みです）。ですが、話はそうシンプルではなく、政治的にはユリウス暦への改暦以前、紀元前153年から1月を年始としていました。 （現代でも暦が1月スタートなのに年度が4月から始まるように、当時の運用も違っていました。これは冬至との関係云々といったものではなく、イスパニア反乱への執政官の任期を政治的に調整したことが発端のものでした） 共和制ローマの末期には、政治的な乱れなどから ローマの暦は季節と3ヶ月もズレ、社会混乱をきたしてゆきました。そんな中、カエサルは、エジプト遠征時に連れ帰った天文学者ソシゲネスの新暦案を採用し、エジプト式の太陽暦への改暦を行ないました。紀元前46年、問題のズレを修正する為に90日付与し、公式に暦上も1月を年始としました。 こうして始まった太陽暦での紀元前45年の1月1日は 冬至後の新月であり、この時、太陽運行と暦との基準として 3月25日を春分基準としました （実際には、当時の天文学的な春分は23日であったろうと言われています。また 補足しておくと、紀元前8年の8月の月名変更までは 2月が29日であった為、改暦当時と現在とでは、元旦から春分までの間で1日カレンダー構造が違います）。 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1311245508 【その後の中間的背景】 その後、欧州ではキリスト教が普及しますが、その初期においては、キリスト教の最重要祭儀である、復活祭の日取り設定が地域によって異なり、大きな問題になっていました。これに対し、325年のニケア公会議の中で、復活祭の日程統一が図られました。 詳細は割愛しますが、ローマ等の84年周期法と、アレキサンドリア等の19年周期法があり、この解決が図られました。ニケア公会議での決定は、簡単に言うと、ユダヤ暦上のイエスの復活日（受難の二日後）を ユリウス暦上で「春分後の満月の次の日曜」「春分は3月21日を基準日」とするというものでした。この3月21日基準というのは、観測上の正解な春分を指向したというより、（実際のところ、かなり精度の高いものでしたが）アレキサンドリア側で行われていた春分基準日にローマ側を統一しようとしたといって良いと思います。 （この段階では、暦は影響を受けていません。あくまでも、ユリウス暦における復活祭日程の算定原理が定められただけで、改暦はされていません。） 【グレゴリオ暦での改暦】 このニケア公会議の春分基準が暦に影響してくるのは、グレゴリオ暦においてです。1582年に行われたグレゴリオ暦への改暦は、ニケア公会議が定めた春分と実際との累積誤差を修正し、閏年調整の精度を高めようと、3月21日春分へ教皇グレゴリオ13世によって再調整されたものです。（ユリウス暦は、閏年調整が不十分な為、徐々に公転周期と暦とにズレが生じます。1582年、ユリウス暦上の10月4日の翌日が10月15日とされ、10日分修正されました） こうして、現在の暦は、3月21日春分基準として定められることになります。この3月21日は、上記のように４世紀のキリスト教宗教会議による基準ですが、あくまでもキリスト教以前に制定された暦において、４世紀当時のアレキサンドリアの教会で用いられた春分基準へ調整的に回帰したものですので、本質的には「カエサルによる改暦」と「後の2月の28日化」が現在の暦を決めたといえるように思います。