怪しげなドリンク

先日のエントリを書いていて、ちょっと前に義父のブログで読んだ話を思い出した。知人からのメールで、義父のところにある書類の画像が送られてきたそうである。それには「脳卒中で絶対に倒れない方法」として、梅やふきの葉等を材料とした飲み物の作り方が書かれていたということだ。そして、そのちょうど1週間ほど前に、義母が口コミで聞いてきたので忘れないうちに、と作った同じ飲み物を飲んだことも書かれていた。しかし、その内容は誠に荒唐無稽なものであった。

「一生に一度飲むだごけで脳卒中で絶対に倒れない法」
貴重な資料です。紹介いたしますのでぜひためしてください。
国分市の養護老人ホーム慶昌園で体験しているということで、国分市及び隼人方面で大変評判になっているそうです。今までに数千人の人が試され、そのことごとくの人々が健在であるという実験済みだそうです。

脳卒中で絶対倒れない飲み物の作り方(略)

厳重注意: 製法は必ず番号順にいれること。
     できるだけ1品入れるごとに良く掻き混ぜること。

この飲み物は一生に一度飲むだけでよいのです。 
何度飲まれてもよいのですが、是非早急にお試し下さい。
☆ この資料は福岡市の小学校校長会で配布されたものです。
  あまりお金のかからない脳卒中予防薬です。
  職場及びご近所の方々にお教えください。

「一生に一度飲むだけ」「絶対に倒れない」とか怪しさプンプんじゃないか? しかも「数千人の人が試され、そのことごとくの人々が健在であるという実験済み」とあるけれども、誰がどのように調査したのか全く不明である。「脳卒中で絶対に倒れない」ことを証明しようと思ったら、少なくとも数年に渡る追跡調査が必要なはずで、それを数千人対象に行ったとすれば結構な規模の調査なはずなのに、である。また、ちゃんとした調査が行われたのであれば、箔付けのためにも大学名なり病院名なりを出す方がよほど効果的だと思うが、それがないというのも不思議である。
しかし恐ろしいことに、検索してみるとこれと類似の文書が大量に出回っているようなのだ。一番古いものでは昭和59年の日付が記されたものもあるとのことで、ブログ等でも「20年ほど前に聞いた」という人もいた。また、実際に試してみた、周囲の人に勧めている等の記述も少なからずあった。
もちろん義父母や義父にメールを送った知人、ネットで見つけた実際に試した人たちは「効けば儲け物」「毒にはならない」「飲んでおくに越したことはない」「何事も経験」など何かしらの留保をつけているのだが、トンデモ療法とかインチキ商法とはえてしてそういうところにつけ込んでくるものである。しかしこの文書の不気味なところは、これが出回ることによって誰が得をするのかが分からない点である。
この文書の元ネタが何か、ざっと調べてはみたのだが、結局分からずじまいであった。しかし、文書の中で名前が出てきている老人ホーム慶祥園(多くの文書では「慶昌園」となっているが)のホームページには、「だいぶ前から「一生に一度飲むだけで脳卒中にならない飲物」として、慶祥園で実践しているという飲物がインターネット情報でも流されている様です。30年程前に入園していた方が、ある会合でその作り方を聞いてきて1回作った事があるだけで、現在は全くやっておりませんし、その効果が実証されているという事も全くありません」と記されている。これにより、鹿児島で大変評判になっているとか、数千人が試したとかいう記述も非常に根拠が怪しいものになるのであるし、そうなると多くの文書に書かれている「福岡市の小学校校長会で配布された」というのも眉唾なのだが、便所掃除に傾倒している先生が少なからずいるらしい状況を聞くと「ありえないことではないかも…」という気になってしまう。ああ、こうしてデマは広がっていくのだな。自重、自重。


ところで、文書によっては「血圧は薬で簡単に下げることはできますが、脳卒中で倒れない方法は現代医学をもってしても、その予防法はないそうです。(中略)しかし、予防の医薬品はないにしてもご安心ください。医薬とは言えませんが「脳卒中では絶対倒れない飲物」があります」という明らかにおかしな文言があるのだが…と書いていてふと気づいた。確かに文書には「脳卒中を予防する」とは書いていない。しかもこの文言をよく読むと、「脳卒中では絶対倒れない飲み物」とある。それはつまり「脳卒中になる前に、それ以外の理由で倒れる」という意味なのではないか…。
逃げてー!! 超々々逃げてー!!!