自己紹介が苦手、提案が一発で通らない… 必要なのは「伝え方の練習」ではなく、「伝える前の準備」だった
公開日:2024/7/29
コミュニケーションの悩みは尽きない。だからか、“コミュニケーションの達人”による書籍も多く見かけるが、いざマネしようとも内容のハードルが高く、自分を改善できずに無力感を味わう筆者のような人間もいる。
何か、自分に寄り添ってくれる本はないものか……。自称「内向的」な著者が「できるだけ話さないですませたい」とした願いに応える『「伝える前」が9割 言いたいことが最短で伝わる!「紙1枚」下書き術』(浅田すぐる/KADOKAWA)は、「できるだけ話したくない、でも伝わってほしい」という思いを抱える人たちを後押しする。
大学卒業後に就職した大手自動車メーカー・トヨタでの経験をきっかけに、著者が導き出したビジネスにおける「コミュニケーションの極意」とは。その一部を、紹介していこう。
徹底して「ムダ」を省く“トヨタ流”のコミュニケーション文化
コミュニケーションにおいて、ひとつ考慮すべきなのは「最も短時間で、効率的で、相手の時間を奪わないですむ伝え方」だ。口頭で伝えるだけではなく、内容に沿ったモノを見せながら伝えた方が、こちらの意図を相手へ効率よく届けられるのは想像にたやすい。
その一例として著者は、トヨタ時代に学んだ「紙一枚」の資料を取り上げている。
徹底して「ムダ」を省くトヨタでは、ダラダラとした会議など、余計なコミュニケーションを避けるためにまず「資料」で意思疎通する文化が根付いていたという。実際、著者は新人時代に手ぶらで上司とのミーティングに臨んだ際「お前、仕事する気あるのか?」と一喝されたほどだ。
そして、「紙一枚」に収めるべき内容も簡潔で特徴的だ。
フォーマットとして、すべての内容は資料内にある「枠=フレーム」に収まるよう書き込み、枠の上部には「テーマ」を記載する。テーマは「What」「Why」「How」のいずれかだ。
例えば、企画書であれば枠内で立案にあたっての「背景」「概要」「予算・発注先等」「スケジュール」を分かりやすく「紙1枚」にまとめる。「伝える前が9割」を徹底する“トヨタ流”のコミュニケーションは、おおいに参考になる。
プレゼン前の「スキマ時間」でも実践できる著者独自の思考整理術
トヨタでの経験を生かして、著者はさらに「誰でも短時間」で「思考整理」ができる「1枚」フレームワーク(R)を編み出した。
使うのは「最低でもA5サイズ以上」の用紙で、視覚的な理解を深めるために「緑・青・赤3色」のカラーペンを準備する。
手順としては、最初に「緑色のペン」で「上下、左右の真ん中」に線を引き、さらに「タテ線」と「ヨコ線」を2本ずつ引く。すると、16個の枠ができるので「左上」のフレームに「日付」と「テーマ」を書き、残りの枠にはテーマに沿ったキーワードを「思いつくままに埋めて」いく。
目的は今ある「情報を整理する」ことで、すべての枠を埋めなくとも「半分以上」記入できていればよい。
さらに、キーワードを書き切ったあとは、関連のありそうな項目を「矢印」でつないでいくと、相手へ伝えるために必要な情報を「端的」に整理できるようになる。
本書では、紙面のQRコードを介して、この「1枚」フレームワークのデータをダウンロードすることも可能。「5分程度のスキマ時間」でも実践できるので、プレゼンの直前などに試してみるのもよい。
一通り読むと、帯にある「伝え方の練習をいくらしてもムダだった!」の意味がよく分かる。「自己紹介やプレゼンが苦手…」「提案が一発で通らない」と嘆くなら、ぜひとも手に取ってもらいたい良書だ。
文=カネコシュウヘイ